朔月転生 第5話
こんなに苦しくなるなら…最初からアスランと出会わなければ良かったのかな
「愛してる」って言って抱きしめてくれたアスラン。
「忙しくなるから会えない」って言って他の女の子と歩いていたアスラン。
冷たい目で私を見たアスラン…
何が真実なのか分からない。
一体どれが本当のアスランなのか、分からない――――
【朔月転生 -サクヅキテンセイ- 第5話】
冷たい図書室の机を背に感じて、寒気がした。
いつもアスランと一緒に勉強してた…机…
アスラン…!!
「安心しろ、前より満足させてやるよ…」
この人は…誰…!?
こんな暗い瞳も笑い方も、知らない。
怖い
怖い…!!
「やめて…!やめて―――!!」
力いっぱい抵抗すると、“目の前の人”はポケットから何かを取り出した。
一瞬、私の中の時間が止まった。
「―――!!」
アスランの…ハンカチ…
間違いない
去年の誕生日…私がプレゼントした…
“フツー僕らの歳の男が持ってないでしょ!”
“そうなのか? でも俺は小さい頃からの習慣だし…”
アスランだ――――!!
「っ……ア、ス…っ」
あれから男友達全員に聞いてみた。
本当にハンカチを持ち歩いてる人なんて一人もいなかった…
アスランだけだった。
アスランは、消えてなんかない。
ここにいる…
戻ってきて、アスラン―――
…その性行為は、強く激しく打ち付けられて終わった。
その間私はハンカチで目を覆いながら、アスランの優しい笑顔だけを思い浮かべていた。
祈るように。