朔月転生 第6話
もし時間を元に戻せるのなら戻したい。
けれど、戻したところでやり直し方なんて分からないんだ。
俺は一体どうすれば良かったんだ…
記憶を失くして、まったく知らない人が“恋人”だと言われて…
泣いている彼女を抱きしめて「愛してる」と囁けばよかったのか。
何も覚えていないのに…?
結局、時間を戻せても俺はまた彼女を傷つける。
また同じことを繰り返すんだ――――
【朔月転生 -サクヅキテンセイ- 第6話】
『昨夜カガリが救急車で運ばれたって――――知らないの!?』
『昨夜って…』
『フラフラ下向いて歩いてたらしくて、バイクと接触したとか…』
『!!』
『アスラン君のマンションの近くだよ。だから私てっきり知ってると思って…』
彼女が…
カガリが昨日俺のマンションに来ていた――――
頭の中で一瞬にして組立てられた最悪のケース。
背筋が凍って、俺は弾かれたように駆け出した。
…初めて知る感情だった。
心臓が引きちぎられる。
闇に引きずり込まれる。
とにかく無我夢中で病院へ走って…
まるで自分が生きてる心地がしない。
それは、唯一無二の存在を失うかもしれないという“恐怖”だった。