序 〜繋がりとかそういうのいいんで!〜
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
奇跡的に定食屋で鈴音と斉藤が再会した日から数日後のことだった。非番の斉藤は京の町をあてもなく彷徨っていた。
歩きながら考えるのはあの日以来屯所に顔を出さない鈴音のこと。もちろん決して彼女が気になっているわけではない。わざわざ様子を見るためにあの定食屋を訪れるわけでもないし、顔も忘れてきてちょうどいい塩梅だ。
しばらくの間は『お前んとこの痴女元気か?』などと土方がしつこかったがそれももう落ち着いている。つーか、『お前んとこの痴女』って訳がわかんねー。痴女に俺のも他人のもないし、間違っても俺のになんかにしたいわけがない。
ただああも目立つ女がぱったりと現れなくなると気持ち悪いだけ、そう斉藤は言い聞かせる。
すると少し先の店から出てきた気の弱そうな男と先日と比べて着飾った鈴音、それからおそらく彼女の父親と思われる男の姿を見つける。
その姿を見て、初めて会話したあの日、『少しでもいい家に嫁がないといけない』と話していたのを思い出す。十八と話していたから行き遅れている方だし、縁談でも受けていたのだろう。
上品に微笑み何度も頷く彼女の様子を見ていて、あの痴女が上手に擬態するものだ、と少しだけ感心した斉藤。自分と接する時とは何もかも違う。暇にかこつけて三人の後をつけてみることにした彼は、仕事がどうだの、あそこの料理が上手いだのと世間話をしている様子を伺っていた。
しばらく歩いたところで大きな呉服屋の前で止まる三人。軽く挨拶をした男は再び元きた道を戻っていく。すれ違った男は到底斉藤とは似ても似つかない男だった。
それから真っ先に店へと足を運ぶ父親とそれに続く彼女を追うように呉服屋へ近づいた彼は感じるはずのない既視感を覚えながら口を開いた。
「痴女でも縁談してくれる相手いんのな。」
「さ、斉藤くん⁉︎どうしてここに⁉︎」
突然の出来事に鈴音は目を丸くする。と、同時にわざわざかけなくていい声をかけた自分自身に斉藤も驚いていた。
「……たまたま通りかかったらおもしれーもん見られそうだったからつけただけ。」
咄嗟に出た受け答えとしては悪くない。むしろ、そうだ、これが理由でつけていたのだ。自身の違和感ある行動に納得する理由を見つけられたことに安堵する斉藤。
「痴女の縁談って面白い……かしら?いや、自分で言ってて字面だけはちょっと面白いかもしれないわ。」
「だろ?けどしょっちゅう出待ちしてたのに、来なくなったどころか他所の男と縁談してたなんてな〜。お前の気持ちは所詮そんなもんなわけね。」
少しだけ調子の出てきた斉藤。彼女はといえばいつかのようにワナワナと震え始める。再び握られそうだった指は間一髪で引っ込めた。二度も同じ手は食わない。
「う、胡散臭くていい!私の気持ちなんてなんとも思ってないのに、そう言う捻くれたことをあえて言うの、斉藤くんって感じする〜!この感じ久しぶりすぎて嬉しいわ……」
そのままホロホロと涙を流し始める鈴音。ここ数回のやり取りでさすがに覚えたが、往来で女を泣かせるのは何かと印象が悪いと斉藤は少しばかり焦る。
「……俺が泣かせたみたいだから、マジでやめてくれない?」
彼の言葉にすぐさま顔を上げる鈴音。水分を含んでキラキラと光を放つ彼女の大きな瞳と視線を合わせた瞬間、少しだけおかしな気持ちが湧き上がる。それから正気か?と斉藤は自分に問うた。まぁ多少タイプであったにしても、相手はあの痴女だ。おそらく男は女の涙に弱い的なやつだろう、と無理やり自分を納得させる。
「これは悲しみの涙じゃないの、喜びの涙だから……!斉藤くんに出禁食らっちゃったから、良い機会だし縁談受けてたらまさか斉藤くんに会えるなんて……」
一方の彼女は涙を拭い、不要な言葉を続けた。『斉藤くんに出禁食らっちゃった』という聞き捨てならない言葉に「いつ俺が出禁にしたよ。」と斉藤が返せば、「この前二度と顔出すな!って!」と返ってくる。
言われてみればそんなやりとりをしたかもしれない。そうは思いつつも、おそらく今日のようにただ売り言葉に買い言葉になっただけで、出禁にしたという意識もなかった。そんな言葉を一々守って顔出さなかったのかよ。俺の言うことこそ聞かないんじゃなかったか。
「お前、俺の親衛隊ならそんくらい聞き流せよ。大体お前らみたいな気色悪い雌豚のために俺がわざわざ出禁なんか言い渡すわけねーだろ、頭湧いてんのか。」
「もう一月分の斉藤くんを摂取したと思う……今死んでも良いくらい……」
「……そりゃ良かったな。ほんっとお前と話すの疲れるわ。」
口ではそう言いつつ、また出待ちに来ていたら揶揄ってやろうと考えていただけに肩透かしを食らっていた彼としては多少満足感を覚えていた。
「ごめんなさい♡」
一方でどれだけ罵倒しても彼女にはのれんに腕押しという感じで、もう少し攻め方を変える必要がありそうだ。とそこまで考えて斉藤は自分で馬鹿らしくなる。この痴女のために脳内のリソースを使うのがそもそもの無駄だった。
歩きながら考えるのはあの日以来屯所に顔を出さない鈴音のこと。もちろん決して彼女が気になっているわけではない。わざわざ様子を見るためにあの定食屋を訪れるわけでもないし、顔も忘れてきてちょうどいい塩梅だ。
しばらくの間は『お前んとこの痴女元気か?』などと土方がしつこかったがそれももう落ち着いている。つーか、『お前んとこの痴女』って訳がわかんねー。痴女に俺のも他人のもないし、間違っても俺のになんかにしたいわけがない。
ただああも目立つ女がぱったりと現れなくなると気持ち悪いだけ、そう斉藤は言い聞かせる。
すると少し先の店から出てきた気の弱そうな男と先日と比べて着飾った鈴音、それからおそらく彼女の父親と思われる男の姿を見つける。
その姿を見て、初めて会話したあの日、『少しでもいい家に嫁がないといけない』と話していたのを思い出す。十八と話していたから行き遅れている方だし、縁談でも受けていたのだろう。
上品に微笑み何度も頷く彼女の様子を見ていて、あの痴女が上手に擬態するものだ、と少しだけ感心した斉藤。自分と接する時とは何もかも違う。暇にかこつけて三人の後をつけてみることにした彼は、仕事がどうだの、あそこの料理が上手いだのと世間話をしている様子を伺っていた。
しばらく歩いたところで大きな呉服屋の前で止まる三人。軽く挨拶をした男は再び元きた道を戻っていく。すれ違った男は到底斉藤とは似ても似つかない男だった。
それから真っ先に店へと足を運ぶ父親とそれに続く彼女を追うように呉服屋へ近づいた彼は感じるはずのない既視感を覚えながら口を開いた。
「痴女でも縁談してくれる相手いんのな。」
「さ、斉藤くん⁉︎どうしてここに⁉︎」
突然の出来事に鈴音は目を丸くする。と、同時にわざわざかけなくていい声をかけた自分自身に斉藤も驚いていた。
「……たまたま通りかかったらおもしれーもん見られそうだったからつけただけ。」
咄嗟に出た受け答えとしては悪くない。むしろ、そうだ、これが理由でつけていたのだ。自身の違和感ある行動に納得する理由を見つけられたことに安堵する斉藤。
「痴女の縁談って面白い……かしら?いや、自分で言ってて字面だけはちょっと面白いかもしれないわ。」
「だろ?けどしょっちゅう出待ちしてたのに、来なくなったどころか他所の男と縁談してたなんてな〜。お前の気持ちは所詮そんなもんなわけね。」
少しだけ調子の出てきた斉藤。彼女はといえばいつかのようにワナワナと震え始める。再び握られそうだった指は間一髪で引っ込めた。二度も同じ手は食わない。
「う、胡散臭くていい!私の気持ちなんてなんとも思ってないのに、そう言う捻くれたことをあえて言うの、斉藤くんって感じする〜!この感じ久しぶりすぎて嬉しいわ……」
そのままホロホロと涙を流し始める鈴音。ここ数回のやり取りでさすがに覚えたが、往来で女を泣かせるのは何かと印象が悪いと斉藤は少しばかり焦る。
「……俺が泣かせたみたいだから、マジでやめてくれない?」
彼の言葉にすぐさま顔を上げる鈴音。水分を含んでキラキラと光を放つ彼女の大きな瞳と視線を合わせた瞬間、少しだけおかしな気持ちが湧き上がる。それから正気か?と斉藤は自分に問うた。まぁ多少タイプであったにしても、相手はあの痴女だ。おそらく男は女の涙に弱い的なやつだろう、と無理やり自分を納得させる。
「これは悲しみの涙じゃないの、喜びの涙だから……!斉藤くんに出禁食らっちゃったから、良い機会だし縁談受けてたらまさか斉藤くんに会えるなんて……」
一方の彼女は涙を拭い、不要な言葉を続けた。『斉藤くんに出禁食らっちゃった』という聞き捨てならない言葉に「いつ俺が出禁にしたよ。」と斉藤が返せば、「この前二度と顔出すな!って!」と返ってくる。
言われてみればそんなやりとりをしたかもしれない。そうは思いつつも、おそらく今日のようにただ売り言葉に買い言葉になっただけで、出禁にしたという意識もなかった。そんな言葉を一々守って顔出さなかったのかよ。俺の言うことこそ聞かないんじゃなかったか。
「お前、俺の親衛隊ならそんくらい聞き流せよ。大体お前らみたいな気色悪い雌豚のために俺がわざわざ出禁なんか言い渡すわけねーだろ、頭湧いてんのか。」
「もう一月分の斉藤くんを摂取したと思う……今死んでも良いくらい……」
「……そりゃ良かったな。ほんっとお前と話すの疲れるわ。」
口ではそう言いつつ、また出待ちに来ていたら揶揄ってやろうと考えていただけに肩透かしを食らっていた彼としては多少満足感を覚えていた。
「ごめんなさい♡」
一方でどれだけ罵倒しても彼女にはのれんに腕押しという感じで、もう少し攻め方を変える必要がありそうだ。とそこまで考えて斉藤は自分で馬鹿らしくなる。この痴女のために脳内のリソースを使うのがそもそもの無駄だった。
