序 〜繋がりとかそういうのいいんで!〜
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「あー、さみぃ。」
新撰組屯所の門をくぐり、足早に室内へ入った斉藤は真っ直ぐに火鉢の前へ向かい座り込む。毎日寒いと言うのに良くやるこった、と門前で屯していた親衛隊のことを一瞬考えてやめた。勝手に出待ちしている連中を気にかけるなど馬鹿げている。
すると同じく火鉢の前にやってきた永倉は何か物言いたげに斉藤を見つめる。
「……なんだよ。」
「お前の親衛隊どうにかならんのか。」
永倉の言うとおり、京の寒さが本格化してから徐々に減っていった親衛隊たち。ただよっぽどマゾが多いのか、斉藤の親衛隊だけは相変わらず彼の出発と帰還を待ち続けていた。もちろん一部の熱狂的な斉藤以外の男の親衛隊もちらほらは見かける。
「お前がやめろ、と声をかければ多少は減るだろ。」
「減るかよ。アイツらは声かけるとダメなんだわ。無視無視。」
まぁその無視ですら喜んでいる連中がいるのは言うまでもないが、自分が何をしても喜ぶと踏んだ斉藤は、可能な限り最も労力のかからない方法に徹している。そう、無視に限る。
「こんな寒い中、毎日お前の帰りを待ってるんだから、相手してやるか追い返すかしてやったらどうだ。」
そう言った後に「なんでこんな奴に親衛隊がいるのかわからん……」などと不平を述べる永倉。
「何で俺がご親切にアイツらの相手してやらなきゃなんねぇんだよ。勝手なイメージを押し付けて汚ねえ奇声上げやがってよ。毎日暇かよって感じだぜ。あんなんじゃ家畜の方がよっぽど人様の役に立つな。」
斉藤の言葉を聞いた永倉は少しだけ、それは本当に少しだけ悔しそうに彼を睨んだ。そんな永倉の様子がおかしくて、もう少し揶揄ってやりたくなった彼はすっとぼけたような表情を作り口を開く。
「まぁ新八さんには無用の悩みか。」
「うるせぇな。お前何一つ悩んでねぇだろ。」
とはいえ斉藤の思惑は外れ、すぐさま痛いところを突かれた上に、一発頭を殴られてしまった。なんでアイツらのことで俺が悩まなきゃなんねぇんだよ。
まだブツブツと不平の言葉を続ける永倉を横目に、親衛隊という組織が案外薄っぺらい集まりだと言うことを把握していないのだと理解する。もちろん斉藤自身知りたくて把握したわけではなく、彼の性分的に目についたというだけだが。
いくら無視していてもあれだけの人間が数人集まっているのだから、嫌でも目の端には入る。だから大体の人の入れ替わりくらい観察眼に優れた斉藤ならば把握するのは容易かった。
親衛隊ができたのはここ一年半くらいのことで、初期から残っている女と言えば多くて四、五人くらいのはずだ。第一、年頃の女は嫁に行くし、今親衛隊を取りまとめているであろう女がいなくなれば忽ち解体するに決まっている。斉藤が手を下さずとも、近いうちに親衛隊は解体するというのが彼の予測であった。
いずれ解体するもの、なんなら自身に勝手なイメージを押し付けて、自己満足の奇声を上げ、なんなら好きなタイミングでいなくなるような連中に心を砕いてやる必要はない。
「俺にだって悩みの一つ二つくらいあんだよ。つか俺のことばっか言うけど、総司や他の親衛隊だって大概だろ。」
自分なんかより沖田の親衛隊の方が数いたはずだ。アイツの場合、愛想がいいから余計、とこれは内心でだけ付け足す。
「……総司はうまいこと言って家に帰らせてるだろ。物腰柔らかいし、評判もいい。」
「表向きはな。どうせアイツの本性見たら、ビビって腰抜かすぜ。俺は取り繕ってねえだけ。」
「お前は取り繕わなさすぎ。」
そういうところが結局あの豚どもを喜ばせてんだろーが。逆に愛想が良くなったら離れていくのだろうか、などと面倒なことを考える。一度親しげに話しかけてみてもいいかもしれない。何人か脱落者は出そうだ。それから、そもそも人の親衛隊の心配までするなんて永倉は相当暇らしいとも結論づけた。
それからふとほとんどない記憶を掘り起こした斉藤は、所謂古参の親衛隊の顔を思い浮かべる。
「けどあんたに言われるまで思いもしなかったけど、アイツら俺のこと良く知りもしねぇ癖にかっこいいだの、恋仲になりたいだの言ってんだから、何されてもいいってことだよなァ。」
思わず歪む口元に、永倉は寒気を覚えたように震える。
昔からいる糸目は何考えてるかわかんねぇし、いかにもドMな女はどこかお膳立てされているようで癪に障る。
「……怖えよ。オヤジさんにバレて面倒なことだけはするなよ。」
古参の女を一人ずつ思い浮かべてはない、ない、と消していくと、最後に残るのは一人の女。古参のくせに他の親衛隊に隠れるように立ち、その癖明るい髪色と特徴的な髪型が存在感を放っていた女。
「別におかしなことはしねぇよ?けど性欲だけは黙ってても溜まるし、こう寒いと人肌が恋しくなるよな〜。せっかくだから暇人の雌豚どもを有効活用させてもらおうかと思ってよ。」
俺の親衛隊を名乗りながら、人様を盾にするとはいい度胸してやがる。そんなことを考えた斉藤は明日の出待ちに向けてプランを練り始めた。
「ちょ、おま、それはほんとやめとけ。」
それはいよいよマズイ、と静止した永倉の言葉はもちろん彼に届くことはなかった。
新撰組屯所の門をくぐり、足早に室内へ入った斉藤は真っ直ぐに火鉢の前へ向かい座り込む。毎日寒いと言うのに良くやるこった、と門前で屯していた親衛隊のことを一瞬考えてやめた。勝手に出待ちしている連中を気にかけるなど馬鹿げている。
すると同じく火鉢の前にやってきた永倉は何か物言いたげに斉藤を見つめる。
「……なんだよ。」
「お前の親衛隊どうにかならんのか。」
永倉の言うとおり、京の寒さが本格化してから徐々に減っていった親衛隊たち。ただよっぽどマゾが多いのか、斉藤の親衛隊だけは相変わらず彼の出発と帰還を待ち続けていた。もちろん一部の熱狂的な斉藤以外の男の親衛隊もちらほらは見かける。
「お前がやめろ、と声をかければ多少は減るだろ。」
「減るかよ。アイツらは声かけるとダメなんだわ。無視無視。」
まぁその無視ですら喜んでいる連中がいるのは言うまでもないが、自分が何をしても喜ぶと踏んだ斉藤は、可能な限り最も労力のかからない方法に徹している。そう、無視に限る。
「こんな寒い中、毎日お前の帰りを待ってるんだから、相手してやるか追い返すかしてやったらどうだ。」
そう言った後に「なんでこんな奴に親衛隊がいるのかわからん……」などと不平を述べる永倉。
「何で俺がご親切にアイツらの相手してやらなきゃなんねぇんだよ。勝手なイメージを押し付けて汚ねえ奇声上げやがってよ。毎日暇かよって感じだぜ。あんなんじゃ家畜の方がよっぽど人様の役に立つな。」
斉藤の言葉を聞いた永倉は少しだけ、それは本当に少しだけ悔しそうに彼を睨んだ。そんな永倉の様子がおかしくて、もう少し揶揄ってやりたくなった彼はすっとぼけたような表情を作り口を開く。
「まぁ新八さんには無用の悩みか。」
「うるせぇな。お前何一つ悩んでねぇだろ。」
とはいえ斉藤の思惑は外れ、すぐさま痛いところを突かれた上に、一発頭を殴られてしまった。なんでアイツらのことで俺が悩まなきゃなんねぇんだよ。
まだブツブツと不平の言葉を続ける永倉を横目に、親衛隊という組織が案外薄っぺらい集まりだと言うことを把握していないのだと理解する。もちろん斉藤自身知りたくて把握したわけではなく、彼の性分的に目についたというだけだが。
いくら無視していてもあれだけの人間が数人集まっているのだから、嫌でも目の端には入る。だから大体の人の入れ替わりくらい観察眼に優れた斉藤ならば把握するのは容易かった。
親衛隊ができたのはここ一年半くらいのことで、初期から残っている女と言えば多くて四、五人くらいのはずだ。第一、年頃の女は嫁に行くし、今親衛隊を取りまとめているであろう女がいなくなれば忽ち解体するに決まっている。斉藤が手を下さずとも、近いうちに親衛隊は解体するというのが彼の予測であった。
いずれ解体するもの、なんなら自身に勝手なイメージを押し付けて、自己満足の奇声を上げ、なんなら好きなタイミングでいなくなるような連中に心を砕いてやる必要はない。
「俺にだって悩みの一つ二つくらいあんだよ。つか俺のことばっか言うけど、総司や他の親衛隊だって大概だろ。」
自分なんかより沖田の親衛隊の方が数いたはずだ。アイツの場合、愛想がいいから余計、とこれは内心でだけ付け足す。
「……総司はうまいこと言って家に帰らせてるだろ。物腰柔らかいし、評判もいい。」
「表向きはな。どうせアイツの本性見たら、ビビって腰抜かすぜ。俺は取り繕ってねえだけ。」
「お前は取り繕わなさすぎ。」
そういうところが結局あの豚どもを喜ばせてんだろーが。逆に愛想が良くなったら離れていくのだろうか、などと面倒なことを考える。一度親しげに話しかけてみてもいいかもしれない。何人か脱落者は出そうだ。それから、そもそも人の親衛隊の心配までするなんて永倉は相当暇らしいとも結論づけた。
それからふとほとんどない記憶を掘り起こした斉藤は、所謂古参の親衛隊の顔を思い浮かべる。
「けどあんたに言われるまで思いもしなかったけど、アイツら俺のこと良く知りもしねぇ癖にかっこいいだの、恋仲になりたいだの言ってんだから、何されてもいいってことだよなァ。」
思わず歪む口元に、永倉は寒気を覚えたように震える。
昔からいる糸目は何考えてるかわかんねぇし、いかにもドMな女はどこかお膳立てされているようで癪に障る。
「……怖えよ。オヤジさんにバレて面倒なことだけはするなよ。」
古参の女を一人ずつ思い浮かべてはない、ない、と消していくと、最後に残るのは一人の女。古参のくせに他の親衛隊に隠れるように立ち、その癖明るい髪色と特徴的な髪型が存在感を放っていた女。
「別におかしなことはしねぇよ?けど性欲だけは黙ってても溜まるし、こう寒いと人肌が恋しくなるよな〜。せっかくだから暇人の雌豚どもを有効活用させてもらおうかと思ってよ。」
俺の親衛隊を名乗りながら、人様を盾にするとはいい度胸してやがる。そんなことを考えた斉藤は明日の出待ちに向けてプランを練り始めた。
「ちょ、おま、それはほんとやめとけ。」
それはいよいよマズイ、と静止した永倉の言葉はもちろん彼に届くことはなかった。
