らぶいずべりー

「いちごがり?」
「念のため言っておくが一期一振のことじゃないからな、果物の苺の方だ」
 鶴丸国永が山姥切国広を誘ったのには理由がある。先日の八つ時、特別にショートケーキが出た時のこと。山姥切はそれはそれは大事そうにてっぺんに乗った苺を残していたのを見たのだ。周りのスポンジを注意深く倒さないように食べ、綺麗に苺の部分だけが残った。まるで蝋燭のように。そんなに好きなら好きなだけ食べさせてあげたいと思うのは好いた相手ならば当然だろう。ちなみに鶴丸は真っ先に苺を食べてしまったので山姥切にあげようにもあげられなかった。
 畑の総責任者の桑名江に相談したが苺はなかなか栽培が難しいらしい、さらに植え付けをするには時期が遅すぎた。残念に思ったが本丸産の苺は来シーズンのお楽しみにすることにして今年はイチゴ狩りに誘うことにしたのだ、が⋯⋯。
「なんで俺と?」
 当然の反応だ。これまで特に二振りで出かけたことなどない。
「皆苺は好きだろう? 桑名に相談したんだが苺は育てるのが難しいらしいんだ。だから実際にイチゴ畑を見に行ったら参考になるんじゃないかと思って、だな」
 もっともらしく聞こえるように早口で話した。どうか納得してくれ。
「なるほど。なら桑名江と小豆長光、大倶利伽羅も誘うか」
「! いやいやいや、このフルーツパークのイチゴ狩りは大人気でな!? 二振り分しか予約が取れなかったんだ」
「そうなのか⋯⋯なら」
「俺と山姥切は明日畑当番だろう!? だから代表で行くってことになってだな」
 最後はもう必死感が丸わかりのゴリ押しだったが鶴丸はなんとか山姥切の首を縦に振らせることに成功した。

 ***

「そら、あーん」
「なっ!?」
「ん? どうした? いらないのか?」
 確かに山姥切の両手は本丸への土産にと籠いっぱいに摘んだ苺でふさがっている上に土で汚れている。今すぐ苺を食べたければ口を開けるしかない。鶴丸の顔と苺とを交互に見て、覚悟を決めた山姥切が口を開ける。そこに鶴丸の手によって苺が差し入れられた。
「! 甘いっ」
「ふふ、なあ、驚きの甘さだろう」
 してやったりな鶴丸と味わうのに忙しい山姥切。練乳をかけてもいないのにこの甘さだ。さすが採れたての苺の王様!
「ほら、もう一粒」
 苺の美味しさには抗えないのか素直に口を開ける山姥切。鶴丸の視線はその唇に釘付けだ。山姥切の歯でかじられた苺からは果汁が滴り落ちて──。
「っ、……」
鶴丸は思わず口を近付けそうになって無理やり目を逸らした。
「どうしたんだ? 顔がえらく赤いが」
「気にするな、苺の色が移ったんだろうさ」
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