レンズ越しのきみ
長い廊下の角で抱えていた本を持ち直す。本とひとくちに言っても紙の束であるからして見た目より重量があるのだ。
審神者の執務室の壁沿いにいつの間にやらうず高く積まれていく本を本丸の北のはずれにある部屋へ片付けに行く。雪崩が起きて主がまた生き埋めにならないうちに片付けなければ。
その部屋が書庫になったのは単純に空き部屋だったから、が理由だったが本は陽の光に弱いらしく書庫にするにはおあつらえ向きなのだった。
行儀悪く足で引き戸を開けると無人だと思った書庫内に人影を認める。
「あ、すまない。誰もいないと思って」
「ん? 山姥切、か」
「鶴丸国永!?」
書庫の奥、ひとつしかない明かり取りの窓の下にポツンと置かれた踏み台に腰掛けていたのは鶴丸国永だった。山姥切のイメージでは本など読みそうにない刀の筆頭だった。そもそもじっとしていることが珍しい気がする刀だ。
鶴丸は読んでいた本を置いて手伝いを申し出てくれた。ありがたく手伝ってもらうことにして二振りで本を片付ける。
「主にも困ったものだなあ」
「ああ。この間も雪崩に巻き込まれてかばった長谷部にたんこぶが出来た」
「あれだ、通販とやらですぐに手に入るんだろう?」
「みたいだな。俺が行くたびに壁ができている」
主曰く「積読がないと安心出来ない!」だそうだがこちらはその量と高さに安心出来ない。本の虫であること以外は良い主だと思うのだが。
鶴丸の手伝いもあって山姥切が運んできた本は全て書棚へおさまった。
「鶴丸、助かった。礼を言う」
「お安い御用さ。せっかく来たんだし、きみも一冊読んでみるかい?」
「あ、いや俺は……」
「なかなか興味深い内容だぜ。『今日からあなたも穴掘り名人』……」
「また庭を掘る気か!? ……っ! ……」
山姥切が鶴丸の方を見て言葉を詰まらせた。書庫内は薄暗く、さらに布を被っている山姥切は声で鶴丸と認識出来たのでじっくり姿を見たりはしていなかったのだ。
鶴丸国永の顔には見慣れないものがあった。
「……あ、あんた目が悪かったのか!?」
「んー、これかい? ちょっとな。暗いところとか近くを見る時にはかけてるんだ」
──眼鏡をかけている刀剣男士がいないわけではない。この本丸にだって数振りいる。しかしその刀たちは顕現した時から眼鏡なのであって眼鏡もその刀の一部という認識だ。
チラチラと視線を送ってくる山姥切を見て鶴丸の口角が上がった。
「なんだい? 普段と違う俺を見て惚れ直したかい?」
「ちがうっ!」
きっと違わない態度で書庫から逃げ出した山姥切に鶴丸の目じりが下がる。
「次は山姥切がいる時に部屋でもかけてみるか」
審神者の執務室の壁沿いにいつの間にやらうず高く積まれていく本を本丸の北のはずれにある部屋へ片付けに行く。雪崩が起きて主がまた生き埋めにならないうちに片付けなければ。
その部屋が書庫になったのは単純に空き部屋だったから、が理由だったが本は陽の光に弱いらしく書庫にするにはおあつらえ向きなのだった。
行儀悪く足で引き戸を開けると無人だと思った書庫内に人影を認める。
「あ、すまない。誰もいないと思って」
「ん? 山姥切、か」
「鶴丸国永!?」
書庫の奥、ひとつしかない明かり取りの窓の下にポツンと置かれた踏み台に腰掛けていたのは鶴丸国永だった。山姥切のイメージでは本など読みそうにない刀の筆頭だった。そもそもじっとしていることが珍しい気がする刀だ。
鶴丸は読んでいた本を置いて手伝いを申し出てくれた。ありがたく手伝ってもらうことにして二振りで本を片付ける。
「主にも困ったものだなあ」
「ああ。この間も雪崩に巻き込まれてかばった長谷部にたんこぶが出来た」
「あれだ、通販とやらですぐに手に入るんだろう?」
「みたいだな。俺が行くたびに壁ができている」
主曰く「積読がないと安心出来ない!」だそうだがこちらはその量と高さに安心出来ない。本の虫であること以外は良い主だと思うのだが。
鶴丸の手伝いもあって山姥切が運んできた本は全て書棚へおさまった。
「鶴丸、助かった。礼を言う」
「お安い御用さ。せっかく来たんだし、きみも一冊読んでみるかい?」
「あ、いや俺は……」
「なかなか興味深い内容だぜ。『今日からあなたも穴掘り名人』……」
「また庭を掘る気か!? ……っ! ……」
山姥切が鶴丸の方を見て言葉を詰まらせた。書庫内は薄暗く、さらに布を被っている山姥切は声で鶴丸と認識出来たのでじっくり姿を見たりはしていなかったのだ。
鶴丸国永の顔には見慣れないものがあった。
「……あ、あんた目が悪かったのか!?」
「んー、これかい? ちょっとな。暗いところとか近くを見る時にはかけてるんだ」
──眼鏡をかけている刀剣男士がいないわけではない。この本丸にだって数振りいる。しかしその刀たちは顕現した時から眼鏡なのであって眼鏡もその刀の一部という認識だ。
チラチラと視線を送ってくる山姥切を見て鶴丸の口角が上がった。
「なんだい? 普段と違う俺を見て惚れ直したかい?」
「ちがうっ!」
きっと違わない態度で書庫から逃げ出した山姥切に鶴丸の目じりが下がる。
「次は山姥切がいる時に部屋でもかけてみるか」
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