連れ染むる

「綺麗とか、いうな」
 何度もそう告げるのに懲りずに口にする恋刀、鶴丸国永に嘆息しつつも山姥切国広はいつもの文句を返す。「本心だからつい口から出てしまう。許してくれ」とは本人談だが、言われた方はたまったもんじゃない。そもそも黙ってさえいれば超美麗な鶴丸に綺麗だとか言われてもどうしたって受け入れられはしないのだ。常ならここで「すまんすまん」と適当に鶴丸が謝るのをやれやれと受け流して終わるのだが今日はそうはならなかった。いつだって驚きを追い求める鶴丸はパターンを変えることにしたらしい。
「……じゃあ可愛い」
「かっ!? ざれごとを」
 じゃあってなんだ、じゃあって。
 怯んで二の句が告げない山姥切に追い打ちをかけるように鶴丸の口が開く。
「愛しい」
「……っ」
「触れたい、抱きしめたい、腕の中に囲いたい」
「あんたっ」
「なぁ、駄目か?」
「……だ、っめな、わけでは」
 アタフタと周りに人の気配がないか確認する山姥切に鶴丸の白い手が伸びる。
 ぎゅうっと痛くない程度に纏った襤褸の上から抱き締められて恋刀の匂いに包まれる。平安刀だからなのか!? 鶴丸は無駄に良い匂いがするのだ。近さを認識した途端に顔の表面温度が上がる。きっと真っ赤になっているに違いない。気付かれたくなくて顔を白い肩口に埋めるとまた匂いが濃くなる。やぶ蛇だ。
「ふっ」
「……何が可笑しい?」
「いや、赤く染って鶴みたいだなぁと思って」
「ばかにっ」
「してない。お揃い、だからな」
 チラと下から覗き込んだ鶴丸の顔は本人の言う通り薄紅を刺したように赤く染っていた。
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