続しょこらぷりーず
玄関で落ち合った俺と山姥切は連れ立って万屋へと出発した。
気のせいかどこもかしこも甘い香りに包まれている気がする。山姥切と隣り合って歩きながら俺はその匂いに酔いそうになった。
山姥切は口数が多い方ではないが一緒にいて沈黙が苦になることはなかった。それよりなによりどのようなちょこれーとを山姥切が好むのかについて考えるのに忙しかった。
「で、何を買うんだ? ……鶴丸?」
「ここは大きさで勝負するか……それとも……」
「おい!」
山姥切に急に腕を引かれて驚いて立ち止まる。
「お、おぉなんだ、山姥切」
「何を考えているのか知らんがそのまま行くと川に落ちるぞ?」
「うおわぁっ!?」
いつの間にやら道を外れて川の際まで来ていたらしい。危ないところだった。
「寒中水泳でもするというなら止めないが」
「いやいやいや、そんな驚きは遠慮しとくぜ」
全力で首を振る。氷点下になろうかという寒空に川に入るなんて御免こうむる。
「注意力散漫も良いところだな」
やれやれと山姥切が呆れている。出来れば好いた相手にはカッコイイ自分だけを見せたいのに。
──しかしそれも今更か。
ヒトの身に慣れぬ俺に手取り足取り本丸での暮らし方、ヒトの身の扱い方を教えてくれたのはほかでもない、山姥切なので。
気を取り直して前方に見えてきた万屋の暖簾をくぐった。いつもはパーティーグッズや雑貨ばかりを見て回るが今日はまっすぐに食料品コーナーへ足を向ける。山姥切もその後を着いてくる。
さてどうするか。
赤と桃と茶と、ばれんたいんを前面に押し出した店内の装飾に目がちかちかしそうだ。
昨今の流行を加味してか定番であろうはーとから友ちょこ、ありがとうちょこなど何でもありのラインナップである。
山姥切は特に興味がないようで、お総菜コーナーの鳥南蛮に目を奪われている。確かに旨そうだ。あれはあとで買おう。
しかしここまでちょこの種類が多いと選ぶのも一苦労だ。
やはり大きさで選ぶしかないか。
きっと食べ物なら喜んでくれる。その意味を深く考えてはくれないだろうが受け取ってはくれるはずだ。
透明な飾り棚の中を見ていると他とは違う色のちょこれーとが目についた。
白い……これもちょこれーとなのか。
その中でも鳥をかたどったものに惹かれた。鶴、ではない、こいつは確かシマエナガとかいう小鳥だ。白くてちょこんとした目と嘴が愛らしい。どことなく山姥切を思わせるような。単に色が白いからそう感じるのかもしれないが。
悪い印象は持たれないだろうと山姥切の目を盗んでそのちょこを買った。紺色の色紙で包装してもらい、黄色いりぼんもかけてもらってどこからどう見てもばれんたいんの贈り物だ。
満足した俺は山姥切のために鳥南蛮と鶏のから揚げと焼き鳥を買って店を出た。鳥ずくしになったのはたまたまだ。
「山姥切、これ山姥切に」
「? なんだ?」
本丸まで帰る途中に呼び止めてちょこを渡した。受け取りはしたものの怪訝な表情をしている。
「開けてみてくれ」
「? わかった」
リボンが解かれ、包装紙が剥がされて、中からちょこれーとが現れた。
「鳥?」
「どことなくきみみたいだろう?」
「そうか? どちらかといえばあんたっぽくないか?」
山姥切の俺の印象はこんな感じなのか。
「なんで俺に?」
「今日はばれんたいんだろう」
「⋯⋯ばれんたいん⋯⋯ああ、乱や加州が張り切っていたやつか。親しいやつに渡すんだろう? ⋯⋯俺が貰って良いのか?」
親しいやつに渡す⋯⋯なるほど山姥切の認識はそうなのか。確かにちょこを用意した刀は皆こぞって主に渡しに行っていた。
「俺は山姥切にだけだ」
「え?」
「その、きみともっと親しくなりたい」
「⋯⋯⋯⋯」
早く戻らないと夕飯に間に合わないと気付いて駆け足で本丸へ帰った。
正しく伝わっただろうか? 俯く顔が赤く染っていたように見えたのは気のせいだろうか? 確かめるのが楽しみなような怖いような。とにもかくにもばれんたいんちょこは渡せたのだ。山姥切は俺の気持ちを受け取った。
あとは返してもらうだけ。
気のせいかどこもかしこも甘い香りに包まれている気がする。山姥切と隣り合って歩きながら俺はその匂いに酔いそうになった。
山姥切は口数が多い方ではないが一緒にいて沈黙が苦になることはなかった。それよりなによりどのようなちょこれーとを山姥切が好むのかについて考えるのに忙しかった。
「で、何を買うんだ? ……鶴丸?」
「ここは大きさで勝負するか……それとも……」
「おい!」
山姥切に急に腕を引かれて驚いて立ち止まる。
「お、おぉなんだ、山姥切」
「何を考えているのか知らんがそのまま行くと川に落ちるぞ?」
「うおわぁっ!?」
いつの間にやら道を外れて川の際まで来ていたらしい。危ないところだった。
「寒中水泳でもするというなら止めないが」
「いやいやいや、そんな驚きは遠慮しとくぜ」
全力で首を振る。氷点下になろうかという寒空に川に入るなんて御免こうむる。
「注意力散漫も良いところだな」
やれやれと山姥切が呆れている。出来れば好いた相手にはカッコイイ自分だけを見せたいのに。
──しかしそれも今更か。
ヒトの身に慣れぬ俺に手取り足取り本丸での暮らし方、ヒトの身の扱い方を教えてくれたのはほかでもない、山姥切なので。
気を取り直して前方に見えてきた万屋の暖簾をくぐった。いつもはパーティーグッズや雑貨ばかりを見て回るが今日はまっすぐに食料品コーナーへ足を向ける。山姥切もその後を着いてくる。
さてどうするか。
赤と桃と茶と、ばれんたいんを前面に押し出した店内の装飾に目がちかちかしそうだ。
昨今の流行を加味してか定番であろうはーとから友ちょこ、ありがとうちょこなど何でもありのラインナップである。
山姥切は特に興味がないようで、お総菜コーナーの鳥南蛮に目を奪われている。確かに旨そうだ。あれはあとで買おう。
しかしここまでちょこの種類が多いと選ぶのも一苦労だ。
やはり大きさで選ぶしかないか。
きっと食べ物なら喜んでくれる。その意味を深く考えてはくれないだろうが受け取ってはくれるはずだ。
透明な飾り棚の中を見ていると他とは違う色のちょこれーとが目についた。
白い……これもちょこれーとなのか。
その中でも鳥をかたどったものに惹かれた。鶴、ではない、こいつは確かシマエナガとかいう小鳥だ。白くてちょこんとした目と嘴が愛らしい。どことなく山姥切を思わせるような。単に色が白いからそう感じるのかもしれないが。
悪い印象は持たれないだろうと山姥切の目を盗んでそのちょこを買った。紺色の色紙で包装してもらい、黄色いりぼんもかけてもらってどこからどう見てもばれんたいんの贈り物だ。
満足した俺は山姥切のために鳥南蛮と鶏のから揚げと焼き鳥を買って店を出た。鳥ずくしになったのはたまたまだ。
「山姥切、これ山姥切に」
「? なんだ?」
本丸まで帰る途中に呼び止めてちょこを渡した。受け取りはしたものの怪訝な表情をしている。
「開けてみてくれ」
「? わかった」
リボンが解かれ、包装紙が剥がされて、中からちょこれーとが現れた。
「鳥?」
「どことなくきみみたいだろう?」
「そうか? どちらかといえばあんたっぽくないか?」
山姥切の俺の印象はこんな感じなのか。
「なんで俺に?」
「今日はばれんたいんだろう」
「⋯⋯ばれんたいん⋯⋯ああ、乱や加州が張り切っていたやつか。親しいやつに渡すんだろう? ⋯⋯俺が貰って良いのか?」
親しいやつに渡す⋯⋯なるほど山姥切の認識はそうなのか。確かにちょこを用意した刀は皆こぞって主に渡しに行っていた。
「俺は山姥切にだけだ」
「え?」
「その、きみともっと親しくなりたい」
「⋯⋯⋯⋯」
早く戻らないと夕飯に間に合わないと気付いて駆け足で本丸へ帰った。
正しく伝わっただろうか? 俯く顔が赤く染っていたように見えたのは気のせいだろうか? 確かめるのが楽しみなような怖いような。とにもかくにもばれんたいんちょこは渡せたのだ。山姥切は俺の気持ちを受け取った。
あとは返してもらうだけ。
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