いつかのその先へ

  • 024

    ……045と一緒なら、なんでもいい

  • 045の目が少しだけ見開かれた。

  • 045

    何それ

  • 024

    だって分からないから

  • 045

    もっとあるでしょ

  • 024

    ない

  • 045

    食べたいものとか

  • 024

    045が選んだのでいい

  • 045

    行きたいところ

  • 024

    045が行くところ

  • 045

    もう!

  • 呆れたように笑ってから。

  • 045は、少しだけ寂しそうな顔をした。

  • 045

    じゃあ、一緒に海を見よう

  • 024は045を見る。

  • 024

    昔見た海?

  • 045

    うん

  • 024

    青いの?

  • 045

    青いやつ

  • 024

    ……赤いのも見たい

  • 045

    夕焼け?

  • 024

    多分

  • 045

    じゃあ両方

  • 045が小指を差し出した。

  • 幼い頃から何度もした仕草だった。

  • 024も小指を伸ばす。

  • 絡める。

  • 045

    いつかね

  • 045が言った。

  • 045

    いつか、ここを出よう

  • その言葉を。

  • 十八歳になった024は、もう子どもの頃のように無邪気には信じられなかった。

  • ここから出ていった子どもを、一人も知らない。

  • いなくなった番号はあっても。

  • 帰ってきた番号はない。

  • それでも。

  • 024

    ………うん

  • 024は答えた。

  • 信じたかった。

  • 十八年。

  • 白い壁の中だけで生きてきた。

  • 自分の名前すら知らない。

  • 世界がどれほど広いのかも知らない。

  • 海の色さえ、本当には知らない。

  • それでも024の中には、ずっと消えずに残っているものがあった。

  • 024

    外へ出たい

  • それがいつ生まれた願いなのかは分からない。

  • もしかすると。

  • 045が外の世界を教えてくれた、あの日からだったのかもしれない。

  • 消灯を知らせる音が鳴った。

  • 二人は慌てて手を離す。

  • 照明が落ちる。

  • 暗闇の中。

  • 024は目を閉じた。

  • 十八歳になった。

  • けれど明日もきっと。

  • 同じ時間に扉が開く。

  • 同じ番号で呼ばれる。

  • 同じ廊下を歩き。

  • 同じ検査台へ横になる。

  • 何年も。

  • 何年も。

  • こうしてきたように。

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