─ 初めての告白
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自室の扉を閉めた瞬間。
主人公は、その場に立ち尽くした。
「…………」
静かだった。
聞こえるのは、自分の呼吸だけ。
ベッドまで歩いて。
腰を下ろす。
それからしばらく、何もできなかった。
──《一線、越えた》
ラビの言葉が、何度も頭の中で繰り返される。
意味が分からないわけではない。
だからこそ。
どう受け止めればいいのか、分からなかった。
自分は覚えていない。
ラビに何を言ったのか。
どう触れたのか。
何を求めたのか。
何一つ。
ただ。
ひとつだけ。
どうしても頭から離れない言葉があった。
『……オレ、お前のことが好きだったから』
「…………」
主人公は膝の上で、ぎゅっと手を握った。
ラビが。
私を。
好きだった。
「……だった、って」
小さく呟く。
過去形だった。
そのことに気づいた瞬間。
胸の奥が、ちくりと痛んだ。
──どうして。
こんなときに。
そんなところが気になるんだろう。
もっと考えなければならないことがあるはずなのに。
あの夜。
自分はラビを求めた。
けれど、それは薬の作用だった。
ラビはそう言った。
自分が悪いのだと。
何度でも止められたのに、止めなかったのだと。
嫌われてもいい。
もう近づくなと言われたら、そうする、と。
「…………」
主人公は俯く。
嫌い?
その言葉を、自分の中で繰り返してみる。
ラビを。
嫌いになった?
「……違う」
答えは、驚くほど早く出た。
嫌いじゃない。
怖いのかと聞かれても。
違う。
少なくとも。
今、廊下で向き合ったラビを怖いとは思わなかった。
それどころか。
数か月ぶりに姿を見つけた瞬間。
嬉しかった。
会いたかった。
ずっと。
帰ってきてほしかった。
それは、あの夜の記憶がなくても変わらない。
「……私」
そこまで考えて。
主人公は息を止めた。
胸の奥にあったものが。
ゆっくりと形を持ち始める。
任務から帰ってきたラビを見つけると、嬉しかった。
「おかえり」と言うのが好きだった。
隣を歩くのが好きだった。
くだらない話をするのも。
笑った顔を見るのも。
名前を呼ばれるのも。
ラビが誰かと楽しそうにしていると、少しだけ胸がざわついたこともあった。
けれど。
それが何なのか。
考えたことがなかった。
いや。
考えないようにしていたのかもしれない。
「…………」
主人公は、自分の胸元を押さえた。
鼓動が速い。
──《薬のせいだった》
ラビは言った。
けれど。
薬を浴びるより前から。
私は。
「……ラビが、好きだった……?」
声に出した途端。
胸の奥が大きく鳴った。
その瞬間。
ほんの一瞬だけ。
何かが脳裏をよぎった。
暗い部屋。
熱い身体。
すぐ近くにある赤い髪。
『──ラビ』
自分の声。
「……っ」
主人公は咄嗟に口元を押さえた。
消えた。
思い出そうとしても。
もう、何も見えない。
ただ。
胸の奥に残った感覚だけが。
ひどく苦しかった。
───
その頃。
廊下にはまだ、ラビがいた。
主人公が去った場所から、一歩も動けないまま。
壁に背を預ける。
「…………はぁ」
深く息を吐き。
片手で顔を覆った。
言った。
全部。
ずっと言えなかったことを。
あの夜のことも。
自分が止めなかったことも。
主人公を好きだったことも。
それなのに。
一つだけ。
言えなかったことがある。
『……好き』
あの夜。
朦朧とした主人公が、自分に向かって零した言葉。
数か月間。
何度も思い出した。
何度も期待して。
そのたびに、自分で否定した。
──薬のせいさ。
あれは主人公の言葉じゃない。
そう思わなければならなかった。
「……ほんっと、最低さな」
乾いた笑いが漏れる。
こんな状況になっても。
心のどこかで。
あの『好き』が。
本当だったらいいのにと。
まだ思っている。
ラビは目を閉じた。
もう、自分からは近づかない。
主人公が答えを出すまで。
たとえその答えが。
二度と自分の隣には戻らないというものだったとしても。
待つしかない。
──そう決めた。
主人公は、その場に立ち尽くした。
「…………」
静かだった。
聞こえるのは、自分の呼吸だけ。
ベッドまで歩いて。
腰を下ろす。
それからしばらく、何もできなかった。
──《一線、越えた》
ラビの言葉が、何度も頭の中で繰り返される。
意味が分からないわけではない。
だからこそ。
どう受け止めればいいのか、分からなかった。
自分は覚えていない。
ラビに何を言ったのか。
どう触れたのか。
何を求めたのか。
何一つ。
ただ。
ひとつだけ。
どうしても頭から離れない言葉があった。
『……オレ、お前のことが好きだったから』
「…………」
主人公は膝の上で、ぎゅっと手を握った。
ラビが。
私を。
好きだった。
「……だった、って」
小さく呟く。
過去形だった。
そのことに気づいた瞬間。
胸の奥が、ちくりと痛んだ。
──どうして。
こんなときに。
そんなところが気になるんだろう。
もっと考えなければならないことがあるはずなのに。
あの夜。
自分はラビを求めた。
けれど、それは薬の作用だった。
ラビはそう言った。
自分が悪いのだと。
何度でも止められたのに、止めなかったのだと。
嫌われてもいい。
もう近づくなと言われたら、そうする、と。
「…………」
主人公は俯く。
嫌い?
その言葉を、自分の中で繰り返してみる。
ラビを。
嫌いになった?
「……違う」
答えは、驚くほど早く出た。
嫌いじゃない。
怖いのかと聞かれても。
違う。
少なくとも。
今、廊下で向き合ったラビを怖いとは思わなかった。
それどころか。
数か月ぶりに姿を見つけた瞬間。
嬉しかった。
会いたかった。
ずっと。
帰ってきてほしかった。
それは、あの夜の記憶がなくても変わらない。
「……私」
そこまで考えて。
主人公は息を止めた。
胸の奥にあったものが。
ゆっくりと形を持ち始める。
任務から帰ってきたラビを見つけると、嬉しかった。
「おかえり」と言うのが好きだった。
隣を歩くのが好きだった。
くだらない話をするのも。
笑った顔を見るのも。
名前を呼ばれるのも。
ラビが誰かと楽しそうにしていると、少しだけ胸がざわついたこともあった。
けれど。
それが何なのか。
考えたことがなかった。
いや。
考えないようにしていたのかもしれない。
「…………」
主人公は、自分の胸元を押さえた。
鼓動が速い。
──《薬のせいだった》
ラビは言った。
けれど。
薬を浴びるより前から。
私は。
「……ラビが、好きだった……?」
声に出した途端。
胸の奥が大きく鳴った。
その瞬間。
ほんの一瞬だけ。
何かが脳裏をよぎった。
暗い部屋。
熱い身体。
すぐ近くにある赤い髪。
『──ラビ』
自分の声。
「……っ」
主人公は咄嗟に口元を押さえた。
消えた。
思い出そうとしても。
もう、何も見えない。
ただ。
胸の奥に残った感覚だけが。
ひどく苦しかった。
───
その頃。
廊下にはまだ、ラビがいた。
主人公が去った場所から、一歩も動けないまま。
壁に背を預ける。
「…………はぁ」
深く息を吐き。
片手で顔を覆った。
言った。
全部。
ずっと言えなかったことを。
あの夜のことも。
自分が止めなかったことも。
主人公を好きだったことも。
それなのに。
一つだけ。
言えなかったことがある。
『……好き』
あの夜。
朦朧とした主人公が、自分に向かって零した言葉。
数か月間。
何度も思い出した。
何度も期待して。
そのたびに、自分で否定した。
──薬のせいさ。
あれは主人公の言葉じゃない。
そう思わなければならなかった。
「……ほんっと、最低さな」
乾いた笑いが漏れる。
こんな状況になっても。
心のどこかで。
あの『好き』が。
本当だったらいいのにと。
まだ思っている。
ラビは目を閉じた。
もう、自分からは近づかない。
主人公が答えを出すまで。
たとえその答えが。
二度と自分の隣には戻らないというものだったとしても。
待つしかない。
──そう決めた。
