─ 初めての告白
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『ちょっといい?』
主人公が医療班の部屋へ呼ばれた。
「どうしたんですか?」
いつもと変わらない様子で尋ねる主人公に、医療班の女性は少し言いにくそうな表情を浮かべた。
『実は、昨日あなたにかかった科学班の試作品のことで、話しておきたいことがあるの』
「昨日の……?」
『ええ。今日、成分が判明したの』
主人公の胸がざわつく。
昨夜のことは、妙に記憶が曖昧だった。
科学班で何かの液体を浴びた。
身体が熱くなった。
部屋に戻ろうとして──。
そこから先が、ところどころ抜け落ちている。
「どんな薬だったんですか?」
医療班の女性は、言葉を選ぶようにして説明した。
『あの液体には遅効性だけど、かなり強い催淫作用があったの』
「……え?」
主人公の表情が固まる。
『正常な判断が難しくなるほど強い衝動を引き起こす可能性がある。それだけじゃないわ』
女性は机の上の分析結果に視線を落とした。
『作用している間の記憶が、部分的に欠落することもあるみたい』
「……記憶が?」
『ええ』
主人公は何も言えなかった。
昨夜の記憶を辿る。
熱かった身体。
ぼんやりした意識。
ふらつきながら歩いた廊下。
誰かを見つけた。
赤い髪。
振り返った顔。
「……ラビ」
ぽつりと、その名前がこぼれた。
その瞬間。
断片的な光景が脳裏をよぎる。
ラビの部屋。
彼の服を掴んだ自分の手。
ひどく困ったようなラビの顔。
そこから先は──何もない。
主人公の顔から血の気が引いた。
「私……何かしたんですか?」
『それは、私たちには分からないわ』
「……」
『科学班が確認しているのは、あなたが試薬を浴びたところまで。その後どこにいたのか、誰と一緒だったのかまでは分かっていないの』
「でも……」
主人公は自分の手を見る。
覚えている。
ラビの服を掴んだ。
そこまでは。
確かに覚えている。
『薬の作用を考えれば、普段のあなたならしないような行動を取っていた可能性はある』
胸が締め付けられた。
「……ラビは?」
思わず尋ねていた。
医療班の女性が少し驚いた顔をする。
『ラビ?』
「今日……見てないから」
『ああ……今朝、緊急任務に出たはずよ』
「……今朝?」
『ええ。急な任務だったみたい』
主人公は黙り込んだ。
ラビはいない。
聞きたくても、聞けない。
昨夜、自分が何をしたのか。
ラビと何があったのか。
それを知っているかもしれない本人は、もう本部にはいなかった。
「……そう、ですか」
医療班を出たあとも、主人公の足取りは重かった。
廊下を歩きながら、何度も昨夜の記憶を辿る。
けれど。
思い出せるのは、ラビのところへ行ったことだけ。
その先には、まるで黒く塗り潰されたような空白がある。
──私、ラビに何をしたの?
答えてくれる相手はいない。
ラビが本部へ戻ってくるまで。
主人公はその疑問を抱えたまま、待つしかなかった。
主人公が医療班の部屋へ呼ばれた。
「どうしたんですか?」
いつもと変わらない様子で尋ねる主人公に、医療班の女性は少し言いにくそうな表情を浮かべた。
『実は、昨日あなたにかかった科学班の試作品のことで、話しておきたいことがあるの』
「昨日の……?」
『ええ。今日、成分が判明したの』
主人公の胸がざわつく。
昨夜のことは、妙に記憶が曖昧だった。
科学班で何かの液体を浴びた。
身体が熱くなった。
部屋に戻ろうとして──。
そこから先が、ところどころ抜け落ちている。
「どんな薬だったんですか?」
医療班の女性は、言葉を選ぶようにして説明した。
『あの液体には遅効性だけど、かなり強い催淫作用があったの』
「……え?」
主人公の表情が固まる。
『正常な判断が難しくなるほど強い衝動を引き起こす可能性がある。それだけじゃないわ』
女性は机の上の分析結果に視線を落とした。
『作用している間の記憶が、部分的に欠落することもあるみたい』
「……記憶が?」
『ええ』
主人公は何も言えなかった。
昨夜の記憶を辿る。
熱かった身体。
ぼんやりした意識。
ふらつきながら歩いた廊下。
誰かを見つけた。
赤い髪。
振り返った顔。
「……ラビ」
ぽつりと、その名前がこぼれた。
その瞬間。
断片的な光景が脳裏をよぎる。
ラビの部屋。
彼の服を掴んだ自分の手。
ひどく困ったようなラビの顔。
そこから先は──何もない。
主人公の顔から血の気が引いた。
「私……何かしたんですか?」
『それは、私たちには分からないわ』
「……」
『科学班が確認しているのは、あなたが試薬を浴びたところまで。その後どこにいたのか、誰と一緒だったのかまでは分かっていないの』
「でも……」
主人公は自分の手を見る。
覚えている。
ラビの服を掴んだ。
そこまでは。
確かに覚えている。
『薬の作用を考えれば、普段のあなたならしないような行動を取っていた可能性はある』
胸が締め付けられた。
「……ラビは?」
思わず尋ねていた。
医療班の女性が少し驚いた顔をする。
『ラビ?』
「今日……見てないから」
『ああ……今朝、緊急任務に出たはずよ』
「……今朝?」
『ええ。急な任務だったみたい』
主人公は黙り込んだ。
ラビはいない。
聞きたくても、聞けない。
昨夜、自分が何をしたのか。
ラビと何があったのか。
それを知っているかもしれない本人は、もう本部にはいなかった。
「……そう、ですか」
医療班を出たあとも、主人公の足取りは重かった。
廊下を歩きながら、何度も昨夜の記憶を辿る。
けれど。
思い出せるのは、ラビのところへ行ったことだけ。
その先には、まるで黒く塗り潰されたような空白がある。
──私、ラビに何をしたの?
答えてくれる相手はいない。
ラビが本部へ戻ってくるまで。
主人公はその疑問を抱えたまま、待つしかなかった。
