─ 初めての告白
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どれくらい、そうしていたのだろう。
荒れていた呼吸が、少しずつ静かになっていく。
部屋にはまだ二人分の熱が残っていた。
『……主人公?』
ラビが名前を呼んでも、返事はない。
腕の中を見る。
主人公はラビの胸元に頬を寄せたまま、目を閉じていた。
さっきまで熱に浮かされたように潤んでいた頬も、少しずつ元の色へ戻り始めている。
『……寝たんさ?』
もう一度呼ぶ。
『主人公』
「……ん……」
小さく身じろぎしただけだった。
そして安心するように、ラビの胸へさらに身体を寄せる。
その仕草に。
ラビの胸が、ずきりと痛んだ。
『…………』
抱きしめていた腕から、ゆっくり力が抜ける。
──何やってんだ、俺。
急速に冷えていく頭の中で、その言葉だけが何度も繰り返された。
薬のせいだと分かっていた。
いつもの主人公じゃないことだって。
あんなふうに縋ってきたのも。
自分を求めたのも。
正常な判断ができない状態だったからだ。
分かっていた。
最初から。
それなのに。
《ラビ……》
耳の奥に、何度も自分を呼んだ声が残っている。
嬉しかった。
それが何よりも最低だった。
ずっと好きだった女が、自分を求めてくれた。
たとえそれが薬のせいでも。
一瞬でも。
主人公が自分だけを見て、自分の名前を呼んで、自分を必要としてくれたことが──
嬉しかった。
『……っ』
ラビは片手で顔を覆った。
『最低さ……』
声が震えた。
途中で止められた。
何度だって。
最初に抱きつかれたとき。
部屋へ連れてきたとき。
唇を重ねたとき。
何度でも引き返せた。
それなのに。
──止めなかった。
好きだったから。
その言葉を理由にしてしまった。
『……ごめん』
眠っている主人公へ、小さく呟く。
返事はない。
当然だった。
彼女は眠っている。
そして、この夜のことを覚えているかどうかすら分からない。
その事実が、胸をさらに締め付ける。
もし覚えていたら。
もし自分を責めたら。
もし、明日から自分の顔を見るだけで嫌になったら。
考えるほど、息が苦しくなる。
けれど何より辛かったのは──
自分自身が、この状況を完全に拒みきれなかったことだった。
彼女が好きだった。
ずっと。
だからこそ、自分の中にあった感情が、今はひどく醜く思えた。
『……オレは、ブックマンだろ』
誰に言うでもなく呟く。
感情を切り離して、世界を記録する。
誰か一人を特別にしてはいけない。
まして、その相手が自分を信頼しているなら。
『……守る側だったはずなのに』
ラビは拳を握る。
『ごめん、主人公……』
ラビはそっと身体を離そうとした。
その瞬間。
きゅっ。
シャツを掴まれた。
『……!』
眠ったままの主人公だった。
「……ラビ……」
夢の中から漏れたような声。
ラビの身体が固まる。
「……いかないで……」
胸の奥を、何かで抉られた気がした。
『…………ずるいさ』
掠れた声で呟く。
そんなことを言われたら。
離れられない。
ラビはしばらく迷った末、主人公の隣へ横になった。
けれど、もう抱きしめることはできなかった。
ただ、乱れた金色の髪をそっと指で整える。
丸みを帯びた短い髪。
その奥から、長い後ろ髪がシーツへ流れている。
いつもと同じ主人公だった。
だから余計に苦しかった。
『……明日、ちゃんと話すさ』
眠る主人公に言い聞かせる。
『全部話して……謝る』
許してもらえなくてもいい。
嫌われても。
殴られても。
もう二度と自分の名前を呼んでもらえなくなったとしても。
それでも。
自分がしたことを、なかったことにはできない。
『だから……』
ラビは目を伏せた。
『起きたら、話そうな』
荒れていた呼吸が、少しずつ静かになっていく。
部屋にはまだ二人分の熱が残っていた。
『……主人公?』
ラビが名前を呼んでも、返事はない。
腕の中を見る。
主人公はラビの胸元に頬を寄せたまま、目を閉じていた。
さっきまで熱に浮かされたように潤んでいた頬も、少しずつ元の色へ戻り始めている。
『……寝たんさ?』
もう一度呼ぶ。
『主人公』
「……ん……」
小さく身じろぎしただけだった。
そして安心するように、ラビの胸へさらに身体を寄せる。
その仕草に。
ラビの胸が、ずきりと痛んだ。
『…………』
抱きしめていた腕から、ゆっくり力が抜ける。
──何やってんだ、俺。
急速に冷えていく頭の中で、その言葉だけが何度も繰り返された。
薬のせいだと分かっていた。
いつもの主人公じゃないことだって。
あんなふうに縋ってきたのも。
自分を求めたのも。
正常な判断ができない状態だったからだ。
分かっていた。
最初から。
それなのに。
《ラビ……》
耳の奥に、何度も自分を呼んだ声が残っている。
嬉しかった。
それが何よりも最低だった。
ずっと好きだった女が、自分を求めてくれた。
たとえそれが薬のせいでも。
一瞬でも。
主人公が自分だけを見て、自分の名前を呼んで、自分を必要としてくれたことが──
嬉しかった。
『……っ』
ラビは片手で顔を覆った。
『最低さ……』
声が震えた。
途中で止められた。
何度だって。
最初に抱きつかれたとき。
部屋へ連れてきたとき。
唇を重ねたとき。
何度でも引き返せた。
それなのに。
──止めなかった。
好きだったから。
その言葉を理由にしてしまった。
『……ごめん』
眠っている主人公へ、小さく呟く。
返事はない。
当然だった。
彼女は眠っている。
そして、この夜のことを覚えているかどうかすら分からない。
その事実が、胸をさらに締め付ける。
もし覚えていたら。
もし自分を責めたら。
もし、明日から自分の顔を見るだけで嫌になったら。
考えるほど、息が苦しくなる。
けれど何より辛かったのは──
自分自身が、この状況を完全に拒みきれなかったことだった。
彼女が好きだった。
ずっと。
だからこそ、自分の中にあった感情が、今はひどく醜く思えた。
『……オレは、ブックマンだろ』
誰に言うでもなく呟く。
感情を切り離して、世界を記録する。
誰か一人を特別にしてはいけない。
まして、その相手が自分を信頼しているなら。
『……守る側だったはずなのに』
ラビは拳を握る。
『ごめん、主人公……』
ラビはそっと身体を離そうとした。
その瞬間。
きゅっ。
シャツを掴まれた。
『……!』
眠ったままの主人公だった。
「……ラビ……」
夢の中から漏れたような声。
ラビの身体が固まる。
「……いかないで……」
胸の奥を、何かで抉られた気がした。
『…………ずるいさ』
掠れた声で呟く。
そんなことを言われたら。
離れられない。
ラビはしばらく迷った末、主人公の隣へ横になった。
けれど、もう抱きしめることはできなかった。
ただ、乱れた金色の髪をそっと指で整える。
丸みを帯びた短い髪。
その奥から、長い後ろ髪がシーツへ流れている。
いつもと同じ主人公だった。
だから余計に苦しかった。
『……明日、ちゃんと話すさ』
眠る主人公に言い聞かせる。
『全部話して……謝る』
許してもらえなくてもいい。
嫌われても。
殴られても。
もう二度と自分の名前を呼んでもらえなくなったとしても。
それでも。
自分がしたことを、なかったことにはできない。
『だから……』
ラビは目を伏せた。
『起きたら、話そうな』
