─ 初めての告白
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『…………っ』
小柄な身体を抱き寄せる。
主人公は待っていたようにラビの胸へ身体を預けた。
近い。
あまりにも近い。
服越しでも互いの体温が分かる。
それ以上に、主人公の鼓動が伝わってきた。
自分と同じくらい速い。
『……主人公』
「ん……」
『ここじゃダメさ』
ラビは周囲を気にしながら、主人公の身体を支え直した。
『とりあえず、俺の部屋行こう……』
「……うん」
返事は素直だった。
けれど歩き出した主人公の足元がふらつく。
『っと……!』
倒れそうになった身体を、ラビが咄嗟に抱き留める。
『危ないさ』
「ごめん……」
『歩ける?』
「……たぶん」
一歩。
二歩。
やっぱり危なっかしい。
ラビは小さく息を吐くと、主人公の身体を抱き上げた。
「わっ……!」
『これじゃいつ部屋に着くか分かんねーさ』
「ラビ……」
主人公は驚いたように目を丸くしたあと、抵抗することなくラビの首へ腕を回した。
そして胸元へ頬を寄せる。
『…………』
「……ラビの音、すごい」
『え?』
「心臓」
『……誰のせいだと思ってるんさ』
困ったように笑ってみせる。
けれど。
本当は笑えるような余裕なんてなかった。
ラビの自室へ着く。
扉を閉めた途端、外の気配が遠くなった。
二人きり。
その事実が急に重くなる。
ラビは主人公をベッドへ降ろした。
すると主人公は、そのまま倒れ込むように布団へ顔を埋めた。
「ん……」
『主人公?』
「……ラビの匂いする」
『…………!』
ラビの顔が一気に熱くなる。
『そりゃ俺のベッドなんだから、するに決まってるさ……』
主人公は聞いているのかいないのか。
枕を抱き寄せると、そのまま頬を擦り寄せる。
「落ち着く……」
『……っ』
それは反則だ。
ラビは顔を背けた。
『主人公、俺はこっちさ』
「ん……?」
主人公が顔を上げる。
ぼんやりと潤んだ緑の瞳がラビを捉えた。
その瞬間。
主人公は枕を手放した。
代わりにラビへ手を伸ばす。
「……こっち来て」
『…………』
動けなかった。
「ラビ?」
『主人公』
「なに?」
ラビはベッドの端へ腰掛ける。
けれど、わざと少しだけ距離を空けた。
『……今、自分が何してるか分かってる?』
主人公が瞬きをする。
「分かってるよ」
『本当に?』
「……うん」
『なら』
ラビはそこで言葉を切った。
昼間のことが、また頭をよぎる。
科学班で浴びたという、正体の分からない試作品。
そして今の主人公。
どう考えても無関係とは思えない。
『……これ、昼間の薬のせいなんじゃねーの?』
「…………」
『身体が変になって……誰かに触ってほしくなってるだけなんじゃねーの?』
言葉にしてしまうと、胸が痛んだ。
もしそうなら。
今、自分に向けられているものは──。
『だったら俺じゃなくたって──』
「やだ」
即答だった。
『…………え』
主人公は迷わなかった。
「ラビじゃなきゃ、やだ」
胸が跳ねた。
嬉しい。
そう思ってしまった。
そして、その直後。
そんな自分が嫌になった。
『……そういうこと、今言うのずりーさ』
「どうして?」
『どうしてって……』
ラビは視線を逸らす。
言えるわけがない。
ずっと好きだったから。
そんなことを言われたら、期待してしまうから。
薬のせいだと分かっているのに。
「……ラビ」
服の裾を掴まれた。
「こっち向いて」
『…………』
「お願い」
結局。
ラビは振り返ってしまった。
目が合う。
主人公は少しだけ身体を起こした。
そして、ラビの頬へ手を伸ばす。
指先が触れる。
「……熱い」
『主人公の方が熱いさ』
「そう……?」
『そうさ』
その手を取る。
本当なら、そのまま下ろさせるつもりだった。
なのに。
離せない。
ラビの手の中に、主人公の手がある。
それだけで胸が苦しくなる。
「ラビも……触って」
『…………』
「私ばっかり、ずるい」
『主人公……』
ラビは迷った末、主人公の頬へ手を添えた。
それだけ。
それ以上はしない。
そう決めた。
主人公が嬉しそうに目を細める。
「……あったかい」
その顔を見た瞬間。
胸の奥に押し込めていた感情が、また一つ揺らいだ。
主人公の親指が、ラビの頬をゆっくり撫でる。
それから眼帯の端へ触れそうになって──止まった。
「……触っていい?」
『…………』
ラビは驚いて主人公を見る。
「そこじゃなくて……」
主人公の指が少し下がる。
頬。
そして唇の近く。
「……ここ」
『主人公』
「キス、したい」
ラビの喉が鳴った。
『ダメ』
ようやく出た言葉だった。
「……どうして?」
『どうしても』
「嫌?」
『違う』
「じゃあ、なんで?」
『違うから困ってるんさ……!』
思わず強い声が出た。
主人公が目を丸くする。
「……ごめん」
『いや……』
ラビは頭を抱える。
『謝るのは俺の方さ』
深く息を吐いた。
『主人公が嫌だから止めてるんじゃねーよ』
「…………」
『むしろ逆だから……止めなきゃダメなんさ』
主人公はしばらく黙っていた。
やがて。
「……分かんない」
小さく呟いた。
「今、頭ぼーっとして……身体も変で……」
『うん』
「でも……」
主人公の手が再びラビの服を掴む。
「ラビにいてほしいって思うのは分かる」
『…………っ』
「だから……行かないで」
その一言で。
ラビの理性が、また少し削られた。
『……行かねーよ』
「ほんと?」
『こんな状態の主人公置いて、どこ行くんさ』
安心したように、主人公が笑う。
そしてラビの胸へ額を預けた。
ラビも恐る恐る背中へ腕を回す。
抱きしめるだけ。
それだけなら。
そう思っていた。
「……ラビ」
『ん?』
「顔、見たい」
主人公が顔を上げる。
近い。
吐息が触れるほど。
視線が絡む。
主人公の瞳が一度だけ、ラビの目から唇へ落ちた。
ラビにも分かった。
次に何が起こるのか。
逃げようと思えば逃げられた。
顔を背ければよかった。
けれど──
できなかった。
「……ん」
唇が触れた。
ほんの一瞬。
主人公の方から触れただけだった。
すぐに離れる。
『…………』
「…………」
二人とも動かなかった。
「ラビ……?」
その声で。
今度はラビから顔を近づけた。
もう一度。
軽く唇を重ねる。
離れる。
また重なる。
確かめるような短いキスを何度も繰り返した。
そのたびに。
もっと欲しいという気持ちが膨らんでいく。
『……クレア』
額を合わせる。
『これ以上は……』
言葉とは裏腹に、ラビの腕は主人公を抱きしめていた。
「……うん」
主人公も分かっているように頷く。
なのに。
離れない。
「ラビ」
『……ん』
「もう一回」
『…………』
「お願い」
『……ほんと、ずりーさ』
そう呟いて。
ラビは再び唇を重ねた。
今度は、さっきより長く。
主人公の腕がラビの首へ回る。
抱きしめる腕にも力が入る。
二人の間に残っていたわずかな距離まで消えていく。
唇が離れる。
主人公が熱のこもった息を吐いた。
「……ラビ」
『……主人公』
互いの名前を呼ぶ。
ラビは主人公の額へ自分の額をつけたまま、目を閉じた。
──止まれ。
今ならまだ止まれる。
頭の中で、何度も自分に言い聞かせる。
それなのに。
主人公が胸元へ顔を寄せた。
「……好き」
聞き間違いかと思った。
ラビが目を開く。
『……今、なんて?』
けれど主人公は答えない。
薬と疲労で朦朧としているのか、自分が何を口にしたのかすら分かっていないようだった。
だから。
信じちゃいけない。
今の言葉を、自分に都合よく受け取ってはいけない。
分かっている。
分かっているのに。
『……それは、反則さ』
ラビは主人公を抱きしめた。
強く。
大切なものを手放せなくなったように。
小柄な身体を抱き寄せる。
主人公は待っていたようにラビの胸へ身体を預けた。
近い。
あまりにも近い。
服越しでも互いの体温が分かる。
それ以上に、主人公の鼓動が伝わってきた。
自分と同じくらい速い。
『……主人公』
「ん……」
『ここじゃダメさ』
ラビは周囲を気にしながら、主人公の身体を支え直した。
『とりあえず、俺の部屋行こう……』
「……うん」
返事は素直だった。
けれど歩き出した主人公の足元がふらつく。
『っと……!』
倒れそうになった身体を、ラビが咄嗟に抱き留める。
『危ないさ』
「ごめん……」
『歩ける?』
「……たぶん」
一歩。
二歩。
やっぱり危なっかしい。
ラビは小さく息を吐くと、主人公の身体を抱き上げた。
「わっ……!」
『これじゃいつ部屋に着くか分かんねーさ』
「ラビ……」
主人公は驚いたように目を丸くしたあと、抵抗することなくラビの首へ腕を回した。
そして胸元へ頬を寄せる。
『…………』
「……ラビの音、すごい」
『え?』
「心臓」
『……誰のせいだと思ってるんさ』
困ったように笑ってみせる。
けれど。
本当は笑えるような余裕なんてなかった。
ラビの自室へ着く。
扉を閉めた途端、外の気配が遠くなった。
二人きり。
その事実が急に重くなる。
ラビは主人公をベッドへ降ろした。
すると主人公は、そのまま倒れ込むように布団へ顔を埋めた。
「ん……」
『主人公?』
「……ラビの匂いする」
『…………!』
ラビの顔が一気に熱くなる。
『そりゃ俺のベッドなんだから、するに決まってるさ……』
主人公は聞いているのかいないのか。
枕を抱き寄せると、そのまま頬を擦り寄せる。
「落ち着く……」
『……っ』
それは反則だ。
ラビは顔を背けた。
『主人公、俺はこっちさ』
「ん……?」
主人公が顔を上げる。
ぼんやりと潤んだ緑の瞳がラビを捉えた。
その瞬間。
主人公は枕を手放した。
代わりにラビへ手を伸ばす。
「……こっち来て」
『…………』
動けなかった。
「ラビ?」
『主人公』
「なに?」
ラビはベッドの端へ腰掛ける。
けれど、わざと少しだけ距離を空けた。
『……今、自分が何してるか分かってる?』
主人公が瞬きをする。
「分かってるよ」
『本当に?』
「……うん」
『なら』
ラビはそこで言葉を切った。
昼間のことが、また頭をよぎる。
科学班で浴びたという、正体の分からない試作品。
そして今の主人公。
どう考えても無関係とは思えない。
『……これ、昼間の薬のせいなんじゃねーの?』
「…………」
『身体が変になって……誰かに触ってほしくなってるだけなんじゃねーの?』
言葉にしてしまうと、胸が痛んだ。
もしそうなら。
今、自分に向けられているものは──。
『だったら俺じゃなくたって──』
「やだ」
即答だった。
『…………え』
主人公は迷わなかった。
「ラビじゃなきゃ、やだ」
胸が跳ねた。
嬉しい。
そう思ってしまった。
そして、その直後。
そんな自分が嫌になった。
『……そういうこと、今言うのずりーさ』
「どうして?」
『どうしてって……』
ラビは視線を逸らす。
言えるわけがない。
ずっと好きだったから。
そんなことを言われたら、期待してしまうから。
薬のせいだと分かっているのに。
「……ラビ」
服の裾を掴まれた。
「こっち向いて」
『…………』
「お願い」
結局。
ラビは振り返ってしまった。
目が合う。
主人公は少しだけ身体を起こした。
そして、ラビの頬へ手を伸ばす。
指先が触れる。
「……熱い」
『主人公の方が熱いさ』
「そう……?」
『そうさ』
その手を取る。
本当なら、そのまま下ろさせるつもりだった。
なのに。
離せない。
ラビの手の中に、主人公の手がある。
それだけで胸が苦しくなる。
「ラビも……触って」
『…………』
「私ばっかり、ずるい」
『主人公……』
ラビは迷った末、主人公の頬へ手を添えた。
それだけ。
それ以上はしない。
そう決めた。
主人公が嬉しそうに目を細める。
「……あったかい」
その顔を見た瞬間。
胸の奥に押し込めていた感情が、また一つ揺らいだ。
主人公の親指が、ラビの頬をゆっくり撫でる。
それから眼帯の端へ触れそうになって──止まった。
「……触っていい?」
『…………』
ラビは驚いて主人公を見る。
「そこじゃなくて……」
主人公の指が少し下がる。
頬。
そして唇の近く。
「……ここ」
『主人公』
「キス、したい」
ラビの喉が鳴った。
『ダメ』
ようやく出た言葉だった。
「……どうして?」
『どうしても』
「嫌?」
『違う』
「じゃあ、なんで?」
『違うから困ってるんさ……!』
思わず強い声が出た。
主人公が目を丸くする。
「……ごめん」
『いや……』
ラビは頭を抱える。
『謝るのは俺の方さ』
深く息を吐いた。
『主人公が嫌だから止めてるんじゃねーよ』
「…………」
『むしろ逆だから……止めなきゃダメなんさ』
主人公はしばらく黙っていた。
やがて。
「……分かんない」
小さく呟いた。
「今、頭ぼーっとして……身体も変で……」
『うん』
「でも……」
主人公の手が再びラビの服を掴む。
「ラビにいてほしいって思うのは分かる」
『…………っ』
「だから……行かないで」
その一言で。
ラビの理性が、また少し削られた。
『……行かねーよ』
「ほんと?」
『こんな状態の主人公置いて、どこ行くんさ』
安心したように、主人公が笑う。
そしてラビの胸へ額を預けた。
ラビも恐る恐る背中へ腕を回す。
抱きしめるだけ。
それだけなら。
そう思っていた。
「……ラビ」
『ん?』
「顔、見たい」
主人公が顔を上げる。
近い。
吐息が触れるほど。
視線が絡む。
主人公の瞳が一度だけ、ラビの目から唇へ落ちた。
ラビにも分かった。
次に何が起こるのか。
逃げようと思えば逃げられた。
顔を背ければよかった。
けれど──
できなかった。
「……ん」
唇が触れた。
ほんの一瞬。
主人公の方から触れただけだった。
すぐに離れる。
『…………』
「…………」
二人とも動かなかった。
「ラビ……?」
その声で。
今度はラビから顔を近づけた。
もう一度。
軽く唇を重ねる。
離れる。
また重なる。
確かめるような短いキスを何度も繰り返した。
そのたびに。
もっと欲しいという気持ちが膨らんでいく。
『……クレア』
額を合わせる。
『これ以上は……』
言葉とは裏腹に、ラビの腕は主人公を抱きしめていた。
「……うん」
主人公も分かっているように頷く。
なのに。
離れない。
「ラビ」
『……ん』
「もう一回」
『…………』
「お願い」
『……ほんと、ずりーさ』
そう呟いて。
ラビは再び唇を重ねた。
今度は、さっきより長く。
主人公の腕がラビの首へ回る。
抱きしめる腕にも力が入る。
二人の間に残っていたわずかな距離まで消えていく。
唇が離れる。
主人公が熱のこもった息を吐いた。
「……ラビ」
『……主人公』
互いの名前を呼ぶ。
ラビは主人公の額へ自分の額をつけたまま、目を閉じた。
──止まれ。
今ならまだ止まれる。
頭の中で、何度も自分に言い聞かせる。
それなのに。
主人公が胸元へ顔を寄せた。
「……好き」
聞き間違いかと思った。
ラビが目を開く。
『……今、なんて?』
けれど主人公は答えない。
薬と疲労で朦朧としているのか、自分が何を口にしたのかすら分かっていないようだった。
だから。
信じちゃいけない。
今の言葉を、自分に都合よく受け取ってはいけない。
分かっている。
分かっているのに。
『……それは、反則さ』
ラビは主人公を抱きしめた。
強く。
大切なものを手放せなくなったように。
