Ⅲ 新しい名前
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右手首と左手首。
そこには、さっきまで存在しなかった透き通った水晶のバングルがある。
「……これ、何なの……?」
触れてみる。
冷たい。
けれど、ただの水晶ではない。
首元のチョーカーと同じだった。
触れるたびに、身体の奥で何かが呼応する。
まるで──私の一部になったみたいに。
「…………」
私は両手を見つめた。
さっき。
落ちたとき。
死ぬと思って叫んだ瞬間、チョーカーが私の声に反応した。
なら。
これも。
「……何か、できるの……?」
水晶は答えない。
右手を握る。
開く。
振ってみる。
何も起きない。
「……こう?」
腕を前へ突き出す。
何も起きない。
「えいっ」
…………。
「…………」
少し恥ずかしくなって腕を下ろした。
「こんなことしてる場合じゃないのに……」
そうだ。
上にはみんながいる。
壁に取り込まれていた青年たち。
一緒に来た村の人たち。
そして。
あの化け物。
助けに行かなきゃ。
私は来た道を引き返そうとした。
けれど──。
「……ない」
道がない。
さっき通ってきたはずの場所が、巨大な石壁で塞がれている。
「嘘……」
押してみる。
びくともしない。
「お願い……」
拳で叩く。
「開いて……!」
何度叩いても変わらない。
「みんなのところに戻らなきゃいけないの……!」
焦りが募る。
こんなところで閉じ込められている場合じゃない。
私は壁に両手をついた。
その瞬間。
──キィン。
「……え?」
両手首の水晶が光った。
掌から。
何かが壁へ流れ込んでいく。
「なに……?」
壁の表面が波打った。
硬い石のはずなのに。
水みたいに。
ぐにゃり、と形を崩す。
私は驚いて手を離した。
同時に、変化も止まった。
「…………」
もう一度。
恐る恐る触れる。
水晶が光る。
壁が揺らぐ。
「もしかして……」
私は目を閉じた。
開いて。
そう念じる。
──道を作って。
次の瞬間。
石壁が動いた。
「……!」
中央がゆっくり窪み。
石が左右へ流れるように変形していく。
やがて。
人一人が通れる穴ができた。
「……できた……」
私は呆然と、自分の手を見る。
さっきまでただの壁だったものが。
私が思った通りの形になった。
そこで。
思い出した。
遺跡の上層。
椅子と石像。
樹木と壁。
武器と別の物質。
あり得ないもの同士が溶け合い、別の形へ変えられていた。
そして。
壁に取り込まれていた青年たち。
「……変える……力……?」
もし。
このブレスレットが。
触れたものを、自分が思った形へ変えられるのだとしたら。
「だったら……!」
助けられる。
みんなを。
壁に取り込まれた人たちを。
私は走り出した。
───
触れる。
念じる。
変える。
最初は上手くいかなかった。
階段を作ろうとしたのに、歪んだ突起になった。
壁を開こうとして、天井まで変形しかけた。
「わっ……!」
慌てて手を離す。
まだ分からない。
どこまで変えられるのか。
何を変えられるのか。
どれくらい細かく思い描けばいいのか。
それでも。
何度も試した。
壁へ触れる。
──階段。
石が変形する。
登る。
行き止まり。
──通路。
壁が開く。
進む。
「待ってて……」
息を切らしながら走る。
「今、行くから……!」
助けたい。
その気持ちだけで。
私は力の使い方を覚えていった。
そこには、さっきまで存在しなかった透き通った水晶のバングルがある。
「……これ、何なの……?」
触れてみる。
冷たい。
けれど、ただの水晶ではない。
首元のチョーカーと同じだった。
触れるたびに、身体の奥で何かが呼応する。
まるで──私の一部になったみたいに。
「…………」
私は両手を見つめた。
さっき。
落ちたとき。
死ぬと思って叫んだ瞬間、チョーカーが私の声に反応した。
なら。
これも。
「……何か、できるの……?」
水晶は答えない。
右手を握る。
開く。
振ってみる。
何も起きない。
「……こう?」
腕を前へ突き出す。
何も起きない。
「えいっ」
…………。
「…………」
少し恥ずかしくなって腕を下ろした。
「こんなことしてる場合じゃないのに……」
そうだ。
上にはみんながいる。
壁に取り込まれていた青年たち。
一緒に来た村の人たち。
そして。
あの化け物。
助けに行かなきゃ。
私は来た道を引き返そうとした。
けれど──。
「……ない」
道がない。
さっき通ってきたはずの場所が、巨大な石壁で塞がれている。
「嘘……」
押してみる。
びくともしない。
「お願い……」
拳で叩く。
「開いて……!」
何度叩いても変わらない。
「みんなのところに戻らなきゃいけないの……!」
焦りが募る。
こんなところで閉じ込められている場合じゃない。
私は壁に両手をついた。
その瞬間。
──キィン。
「……え?」
両手首の水晶が光った。
掌から。
何かが壁へ流れ込んでいく。
「なに……?」
壁の表面が波打った。
硬い石のはずなのに。
水みたいに。
ぐにゃり、と形を崩す。
私は驚いて手を離した。
同時に、変化も止まった。
「…………」
もう一度。
恐る恐る触れる。
水晶が光る。
壁が揺らぐ。
「もしかして……」
私は目を閉じた。
開いて。
そう念じる。
──道を作って。
次の瞬間。
石壁が動いた。
「……!」
中央がゆっくり窪み。
石が左右へ流れるように変形していく。
やがて。
人一人が通れる穴ができた。
「……できた……」
私は呆然と、自分の手を見る。
さっきまでただの壁だったものが。
私が思った通りの形になった。
そこで。
思い出した。
遺跡の上層。
椅子と石像。
樹木と壁。
武器と別の物質。
あり得ないもの同士が溶け合い、別の形へ変えられていた。
そして。
壁に取り込まれていた青年たち。
「……変える……力……?」
もし。
このブレスレットが。
触れたものを、自分が思った形へ変えられるのだとしたら。
「だったら……!」
助けられる。
みんなを。
壁に取り込まれた人たちを。
私は走り出した。
───
触れる。
念じる。
変える。
最初は上手くいかなかった。
階段を作ろうとしたのに、歪んだ突起になった。
壁を開こうとして、天井まで変形しかけた。
「わっ……!」
慌てて手を離す。
まだ分からない。
どこまで変えられるのか。
何を変えられるのか。
どれくらい細かく思い描けばいいのか。
それでも。
何度も試した。
壁へ触れる。
──階段。
石が変形する。
登る。
行き止まり。
──通路。
壁が開く。
進む。
「待ってて……」
息を切らしながら走る。
「今、行くから……!」
助けたい。
その気持ちだけで。
私は力の使い方を覚えていった。
