Ⅲ 新しい名前
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翌朝。
村の広場には、いつもより多くの人が集まっていた。
誰もが遺跡の方角を気にしている。
帰ってこない青年たちの家族もいた。
『もう一晩経ってるんだぞ』
『何かあったに決まってる』
『だからって、俺たちまで入ってどうする。あそこが何なのかすら分からないんだぞ』
『じゃあ、このまま待ってろっていうのか!』
声が荒くなる。
普段なら穏やかに話す人たちまで、今日は余裕がなかった。
村長が杖をつきながら、集まった村人たちを見回す。
『……待っていて帰ってくるなら、それが一番いい』
低い声だった。
『だが、昨日の朝に出ていった者たちが、誰一人として戻っておらん』
広場が静まり返る。
『怪我をして動けなくなっているのかもしれん。遺跡の中で道に迷っているだけかもしれん』
『だったら、なおさら早く探しに行かないと』
一人の男が言った。
その隣で、別の村人が顔をしかめる。
『だが、全員で行くわけにはいかんぞ。何があるか分からない』
『分かってる。中へ入るのは数人だけだ』
話し合いの末。
村に残る者と、遺跡へ向かう者に分かれることになった。
体力のある大人たちを中心に捜索隊を作り、縄や松明、怪我人を運ぶための布を用意する。
もし昼を過ぎても戻らなければ、残った者たちが近隣の町へ助けを求めに行く。
そう決まった。
『よし。準備ができ次第、出るぞ』
その言葉を聞いて。
私は、ほんの少し迷ってから口を開いた。
「……私も行く」
小さな声だった。
それでも、近くにいた人たちは振り返った。
『駄目だ、主人公』
「……どうして」
『何があるか分からないんだぞ。昨日までなかった遺跡だ。中がどうなってるかも分からない』
「…………」
『お前はここで待ってろ』
私は俯いた。
怖くないわけじゃない。
むしろ、怖かった。
あの遺跡を見ているだけで、胸の奥がざわつく。
何か嫌なものがあるような気がする。
それでも。
──もう家族なんだから。
いつか言われた言葉が、頭の中に浮かんだ。
『毎日一緒に飯食って、働いて、くだらないことで笑って。具合悪けりゃ心配するし、帰ってこなきゃ探しに行く』
『十分、家族だろ』
私は服の裾を、きゅっと握った。
「……家族なんでしょ」
ぽつりと呟く。
『え?』
「帰ってこなかったら……探しに行くって」
顔を上げる。
「そう言ってたから」
声は震えていた。
それでも。
今度は目を逸らさなかった。
「私にとっても……みんな、家族だから」
うまく気持ちを伝えることなんて、まだできない。
何を言えばいいのかも分からない。
ただ。
置いて待っていることだけは、できなかった。
「……私も、行きたい」
村長は何も言わず、しばらく私を見つめていた。
やがて、小さく息を吐く。
『……皆から離れるんじゃないぞ』
「……うん」
私は小さく頷いた。
こうして私は、捜索へ向かう村人たちと一緒に、突然現れた遺跡へ足を踏み入れることになった。
村の広場には、いつもより多くの人が集まっていた。
誰もが遺跡の方角を気にしている。
帰ってこない青年たちの家族もいた。
『もう一晩経ってるんだぞ』
『何かあったに決まってる』
『だからって、俺たちまで入ってどうする。あそこが何なのかすら分からないんだぞ』
『じゃあ、このまま待ってろっていうのか!』
声が荒くなる。
普段なら穏やかに話す人たちまで、今日は余裕がなかった。
村長が杖をつきながら、集まった村人たちを見回す。
『……待っていて帰ってくるなら、それが一番いい』
低い声だった。
『だが、昨日の朝に出ていった者たちが、誰一人として戻っておらん』
広場が静まり返る。
『怪我をして動けなくなっているのかもしれん。遺跡の中で道に迷っているだけかもしれん』
『だったら、なおさら早く探しに行かないと』
一人の男が言った。
その隣で、別の村人が顔をしかめる。
『だが、全員で行くわけにはいかんぞ。何があるか分からない』
『分かってる。中へ入るのは数人だけだ』
話し合いの末。
村に残る者と、遺跡へ向かう者に分かれることになった。
体力のある大人たちを中心に捜索隊を作り、縄や松明、怪我人を運ぶための布を用意する。
もし昼を過ぎても戻らなければ、残った者たちが近隣の町へ助けを求めに行く。
そう決まった。
『よし。準備ができ次第、出るぞ』
その言葉を聞いて。
私は、ほんの少し迷ってから口を開いた。
「……私も行く」
小さな声だった。
それでも、近くにいた人たちは振り返った。
『駄目だ、主人公』
「……どうして」
『何があるか分からないんだぞ。昨日までなかった遺跡だ。中がどうなってるかも分からない』
「…………」
『お前はここで待ってろ』
私は俯いた。
怖くないわけじゃない。
むしろ、怖かった。
あの遺跡を見ているだけで、胸の奥がざわつく。
何か嫌なものがあるような気がする。
それでも。
──もう家族なんだから。
いつか言われた言葉が、頭の中に浮かんだ。
『毎日一緒に飯食って、働いて、くだらないことで笑って。具合悪けりゃ心配するし、帰ってこなきゃ探しに行く』
『十分、家族だろ』
私は服の裾を、きゅっと握った。
「……家族なんでしょ」
ぽつりと呟く。
『え?』
「帰ってこなかったら……探しに行くって」
顔を上げる。
「そう言ってたから」
声は震えていた。
それでも。
今度は目を逸らさなかった。
「私にとっても……みんな、家族だから」
うまく気持ちを伝えることなんて、まだできない。
何を言えばいいのかも分からない。
ただ。
置いて待っていることだけは、できなかった。
「……私も、行きたい」
村長は何も言わず、しばらく私を見つめていた。
やがて、小さく息を吐く。
『……皆から離れるんじゃないぞ』
「……うん」
私は小さく頷いた。
こうして私は、捜索へ向かう村人たちと一緒に、突然現れた遺跡へ足を踏み入れることになった。
