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第1部 再会と出会いの章

1
次の日、ユウナは街の図書館へと来ていた。
本を選びながら、リリアとの朝のやりとりを思い出す。
『ごめん』
ユウナと顔を合わせた瞬間、リリアはそう言い、頭を下げた。
『今日からこの世界のことを教えてあげるつもりだったんだけど、どうしても外せない仕事が出来ちゃって……。明日には何とか都合つけるから』
本当に済まなそうにしてくるリリアを見て、ユウナは気にしなくていいと首を横に振る。
『気にしないでください。その代わり ……』
その時、教えてもらったのが図書館だった。
リアフィースの歴史や地理等、この世界のことが分かる本を集めてきて読みあさる。
本を読むことは嫌いではない。
寧ろ、元いた世界とリアフィースの違いが分かるところは面白く感じて、夢中になったりもした。
ただ読むだけでなく、気になるところ等は、後でリリアに聞く為に書き出しておく。
そんなことをしている内に、気付くと図書館の閉館時間になっていた。
2
「昨日、一日でよくそこまで調べたわね。それも一人で」
約束通り、リアフィースのことを教えると現れたリリアが少し驚いたように言う。
「本を読んだり、何かを調べたりすることって好きなんです。昨日も何だか段々楽しくなってきちゃって」
「そう……、なら、教えるというより 、質問形式にしましょうか」
その言葉に書き出しておいたメモを取り出す。
本では分からず、聞けるなら聞いておきたいことが幾つかあった。
「えっと……、それじゃあまず……」
メモを見ながら、ユウナは口を開く。
「この世界でも、異世界の研究ってしていたんですか? 」
「え、ええ。……というか、いきなりね」
ユウナも一番にする質問ではないと思っていたのだが、どうしても気になっていた為、最初に聞いてしまったと苦笑した。
「あはは、私も一番に聞くことじゃないとは思っていたんですけどね」
言いながら、複写してもらったある本のページをリリアに見せる。
「……これは、十四年前の事故ね」
それを見て、リリアはすぐにそう呟いた。
「はい。……当時、生まれたばかりの王女様が異空間の中に飛ばされたことがあったって」
「確かにそんな事故があったみたいね 。……でも、その王女様もすぐに見つかって、大事にはならなかったと聞いてるわ。ただ……」
「ただ……? 」
「その影響か分からないのだけど、現在の第一王女、シルファ様は十四歳になった今でも力が目覚めないみたいね 」
その言葉にユウナは首を傾げた。
「この世界の王族はね、十歳前後で様々な術が使えるようになるの。現王 、王妃は勿論、二人の兄王子やこの間十歳になった妹、セルフィ王女も使えるわ。……でも、シルファ様には予兆すらないらしいの。中には落ちこぼれの王女と陰口を叩く人もいるみたい。そんなこともあって、シルファ様は結構肩身の狭い思いもしているそうよ 」
「そうなんですね」
「……まぁ、王族と関わることなんてないだろうから、あまり気にすることもないわ」
リリアにはそう言われたが、何故か気になった。


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