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第2部 二つの家族の章

1
城で生活するようになってから数日、ユウナは眠っていたがふと肌寒さを感じて目を覚ました。
「ん……?」
「あら?」
近くから聞こえた声に一気に眠気が覚める。
「お目覚めかしら」
「あなたは!?」
目の前で笑う少女にユウナは目を見開く。
その少女はコウと暮らしている時にも一度襲ってきたことのある暗殺者だった。
「な、何で?」
一軒家とは違い、ここは王族のいる城なのだ。
少女が一人で入ってこれる場所とはとても思えない。
何故と疑問を口にすると、少女はふふっと笑った。
「協力者がいるのよ」
「協力者?」
「そう」
少女が小刀を首に当ててくる。
「っ……!!」
ピリッとした痛みが走り、息を飲む。
「城に来たから安心なんて考えてた? ……駄目よ、油断していたら」
「……そうだな。……その言葉、そのまま返してやるよ」
少女が力を込めて小刀を引こうとした時、声と共に少女の首に剣が当てられる。
「……退け。このまま出ていけば、今回だけは見逃してやる」
そう言ったのはレイドだった。
「……おかしいわね。今回は邪魔は入らない筈だったのに」
「お前に協力者がいるように、俺にもいるんだよ。……お前のいう協力者も調べはついてる。諦めるんだな」
「っ!!」
その言葉に少女は舌打ちしたが、ユウナから離れる気配はない。
「……もう一度言う。退け」
「くっ……」
少女の首にレイドの剣が浅く傷を付ける。
このままだとまずいと思ったのか、少女はユウナの首から小刀を離すと、降参というように両手を上げ、ユウナからも離れた。
2
「……ご無事ですか?」
少女が逃げていったのを確認し、外の様子を伺い、他に異常がないことを確認したのだろうレイドが声を掛けてくる。
「だ、大丈夫……。それより、どうして此処に?」
兵として見回りをしていたのだとしてもあんなにタイミングよく助けに来られるものなのかと疑問に思い、問い掛ける。
「……はい。サイガから怪しい動きがあると聞いたので、警戒していたんです。それでも少し出遅れてしまいましたが」
言いながらレイドの視線がユウナの首に向けられるのがわかり、ユウナは僅かに斬られていた部分を隠した。
「本当に大丈夫だから。それよりあの人の協力者って……」
「……シルファ王女です」
「!!」
その言葉にユウナは目を見開いた。
「ともかく、この件は王達に……」
「待って!」
レイドの言葉に声を上げる。
「今回は見逃して。さっきの人にはそう言って逃したでしょ」
「……さっきの奴は雇われただけでしょうから。ですが、シルファ王女はこれからも……」
「お願い、黙ってて」
レイドを遮って言うと、彼は溜息をつく。
「また別の者に狙われるかもしれませんよ。恐くないんですか?」
「……恐いよ。でも……、それより居場所がなくなるのが恐いの。きっと、シルファ王女も……」
そう答えるとレイドはその言葉から何を感じとったのか、複雑そうな表情をする。
それでも少ししてから頷いた。
「わかりました。ですが、襲撃のことだけは報告します。直属の護衛はつけた方がいいでしょうから」
「うん」
「それと、今回は色々と見逃しますが 、次はありませんのでご了承ください 」
「……うん」
その言葉はレイドが妥協してのものだろう。
それがわかった為、ユウナは頷いた。
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