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第6章

 1
「それにしても」
 別の人の治療があるからと言って、光鈴が出ていった後、光鳳が口を開く。
「神蘭、お前……、よく生還できたな 。もう今回は駄目かと思ったぞ」
 それを聞いて、自分が運びこまれた時の記憶はないことに気付いた。
「そういえば、私を此処に連れてきてくれたのは?」
「それは俺だ。……村人の確認に行ったお前を残してきたと聞いて、鈴麗達が助けにいくときかなくてな。あいつらと光蘭、聖波様と俺で村へ向かったんだ」
 そこまで言うと、光鳳はその時のことを思いだしてなのか、顔を顰めた。
「……正直、酷い状況だったぞ」
「えっ?」
「……村はとてもじゃないが、住むことは難しいと思う。復興するにも今の状況ではどのくらいの時間が掛かるか ……想像がつかない」
 それを聞き、神蘭は村で何があったのかを思いだした。
 あの時は逃げるので精一杯になっていたが、確かにその間に村の中を破壊されてしまったのだ。
「……それは私が逃げ回ったせいだと思います」
「だろうな」
 苦笑いを浮かべながら答えると、光鳳はそう返し、溜息をついた。
「それで、一体あそこで何があったんだ?お前が倒れていた辺りが一番酷い有様でな。とてもじゃないが、一人で生き延びられたとは思えない」
 その言葉から彼等が村に来た時にはもう封魔もいなかったのだろうと推測できた。

 2
「実は……」
 光鳳に答える為、神蘭は話し始めた。
「封魔が助けてくれたんです」
「封魔が?」
 神蘭が言うと、光鳳は僅かに目を見開いた後、何かを考えるような素振りを見せた。
「……いや……、だが今回の件は…… 。それに今の奴が……」
 神蘭にははっきりと聞こえないくらいの声で光鳳は何かを呟く。
 その内容が気になって、神蘭は今だにぶつぶつと呟いている光鳳に声をかけることにした。
「光鳳様?どうかしたんですか?」
 そう声をかけると、今まで神蘭がいたことを忘れていたというような表情をする。
「……ああ、悪い」
「……封魔がどうかしたんですか?」
 自分を助けに来る前に何かあったのかと問いかける。
 光鳳は少し迷ったようだったが、神蘭が促すように視線を向けると口を開いた。
「……実はな、今回、封魔には待機が命じられていた筈なんだ」
「えっ?」
 それを聞いて、神蘭は声を上げた。
「本来の手順だと、神蘭がいた隊が村人を避難させた後、別の隊が天華様の部隊がいる別の村に誘導することになっていた。その村では魔神族を迎え討つ準備も整えていたしな」
「でも……」
 封魔に助けてもらったのは事実だ。
 だが、今の彼は副総長以上の地位を持った者が命令しない限りは動かない筈なのだ。
 その命令が待機なのだとしたら、封魔はその命令に従わなかったってことになるのではないか。
 自分の意思で彼処に現れたのだとしたら、完全に自我を封じられた訳ではないのではないか。
 そう考えると少し明るい気持ちになれた。
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