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第1部 再会と出会いの章

1
魔物の襲撃があってから数日、ユウナは一人図書館へ来ていた。
ギルドは数日前の襲撃や、任務の後始末で誰もが忙しそうにしていた為、邪魔にならないように訪れたのだが、勉強したいこともあった。
「……ん? 」
何冊かの本を手に取り、読み出してからどの位時間が経ったのか、足下に何かが当たったような気がした。
「? 」
何が当たったのか視線を動かし、それが直径十センチ位の玉だと気付く。
それを拾い上げるのとほぼ同時に少女の声が聞こえてきた。
「すみません。落としてしまって…… 。それ、私の物なんです」
そう声をかけてきたのはユウナより三つ程年上に見える少女で、ローブのようなものを着ていた。
「はい、どうぞ」
「!! 」
拾った玉を少女に渡す際、少女が何かに驚いたような表情をし、すぐにその表情を消したのを見て、首を傾げた。
「ありがとうございます。じゃあ、私はこれで」
そう言って去っていく少女を見送り、ユウナは再び本へ視線を戻した。
2
「ちょっと遅くなっちゃった……」
閉館時間に図書館を出て、ユウナはギルドへと急ぐ。
「!? 」
もう少しでギルドが見えてくるというところで、横の道から誰かが出てくる 。
ぶつかりそうになって、ユウナは慌てて足を止めたが、僅かに接触してしまった。
「ごめんなさい!急いでて……」
謝りながら顔を見ようとして、ユウナは固まる。
今、彼女がぶつかった相手はコウと再会したばかりの頃、彼と剣を交えていた仮面の男だった。
「あ……」
男と仮面越しに目が合う。その手が大剣の柄を掴む。
ゆっくりと引き抜かれるそれに立ち竦む。
助けを呼ぶにも逃げるにもギルドは男の背後だ。
(ど、どうしよう? )
来た道を引き返してもいいが、それだと追いつかれた時にどうしたらいいかわからない。
そんなことをユウナが思っていると、不意に男がその場を飛び退いた。
その直後、彼が立っていた場所に数本の矢が突き刺さった。
「ユウナ!! 」
それを呆然と見ていたユウナの名を呼ぶ声に我に返る。
「今のうちにこっちへ! 」
名を呼んだのはリリアで、彼女は仮面の男を牽制しつつ叫んだ。
それに反応し、ユウナもリリアの方へ走り出したが、再び男も動き、そのユウナの後を追ってこようとする。
「ユウナ!リリア! 」
だが、その動きは聞こえてきたコウの声に止まり、逆に踵を返すと走り去って行ってしまった。
「大丈夫か!? 」
「う、うん」
駆け寄ってきたコウがそう声をかけてきて、ユウナが頷いたのを確認すると彼は男が去っていった方を見た。
「……まさか、こんな街中で……、しかもユウナを狙ってくるなんてな」
「……今まであなたを襲撃してきていたのもあの男なんでしょ」
リリアも知っているのだろう、そう問い掛ける言葉に頷く。
「まぁ、あなたは戦う力があるからまだいいけど、ユウナが狙われるなら少し考えた方がいいんじゃない? 」
「…………」
そのリリアの言葉に、コウは何かを考えているようだった。
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