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第24章

1
「…….っ! 」
苛つきを抑えられず、麗玲は周りにあったものを薙ぎ払うように床に落としていた。
(……何で……どうしてよ!? )
心の中で呟きながら、今度は壁に拳を叩きつける。
頭の中では牢に閉じ込めている天奏の言葉が蘇ってきていた。
『そうよ。……私は神帝の命であなた達魔神族側についていたの。ずっとあなたの言う通りにしていたのも、時には怪しまれないように非情なことをしていたのもね』
「っ!! 」
思い出すとそれが余計に頭にきて、もう一度拳を叩きつけた。
「どうしてよ……、何で天華のところにばかり……」
声に出して呟くと、段々と悲しくなってきて、麗玲は呟く。
多くの者が集まっている舞の周りとは違い、自分の周りからは去っていく者ばかりだ。
戦いの中で倒された者だけでなく、彼女のもとを去り、舞〈天華〉側へとついた者もいる。
様子を見ていたが凰呀に利用される形で、舞達の元へ向かった玲莉もいずれ自分の元を去り、向こうへつくだろうことは想像がつく。
舞や花音の態度で少し揺らいでいる彼女は、飛影や煌破に簡単に説得されてしまうだろう。
そして、舞にはまた一人仲間が増え、 自分は失うのだ。
「私と天華……、一体何が違うというの!?何であの子ばかり……、何で私ばかり……何でなのよ!? 」
悲しみと寂しさが襲ってきて、麗玲は周りのものに当たり散らす。
「麗玲様!? 」
部屋の中で暴れているのに気付いたのか、一人の魔神族が飛び込んでくる。
「おやめください! 」
入ってきて部屋を見回し、麗玲を抑えようとしてくる。
それに対抗して麗玲は暴れたが、背後に回られたと思った瞬間、謝罪の声と共に手刀を叩きこまれた。
2
麗玲が目を覚ますと、その近くには一人の人物がいた。
麗玲に気付いたのか、声を掛けてくる 。
「気がつきましたか。……ご気分は? 」
「……悪くはないわ」
「……そうですか。よかった」
そう言った後、少しの間、沈黙が訪れる。
その沈黙を破ったのは向こうだった。
「すみませんでした」
「えっ!? 」
突然の謝罪に少し驚いて視線を向けると、頭を下げているのが目に入った。
「ちょっ、ちょっと何を!? 」
「結構強く首を打ってしまいましたから」
「……顔を上げなさい、隼刀」
一向に頭を上げないのを見て、命令口調で言えば、漸く彼は頭を上げた。
「私の方こそ、見苦しいところを見せたわ」
「いえ」
麗玲の言葉に隼刀は首を横に振り、その後で真剣な表情を向けてきた。
「無礼を承知でお聞きしますが、麗玲様は寂しいのですか?そして、天華が羨ましい? 」
「……ええ」
否定は出来ず、麗玲は頷いた。
「俺が……、俺達がいるのでは駄目ですか? 」
「えっ? 」
「俺はあなたを裏切らない。あなたを一人にはしない」
「隼刀……」
「隼刀だけではありませんよ」
聞こえてきた声に麗玲は視線を向け、隼刀は背後を振り返る。
そこには二人の青年と一人の女性が立っていた。
「閻夜、世璃、翔月まで……」
三人の姿を見て呟いている間にも彼等は近付いてきて、隼刀を含めた四人が膝を着き頭を下げた。
「我等四名は決してあなた様を裏切ったりはいたしません」
「私達が主人としてお仕えするのはあなた様のみ」
「我々が忠誠を誓うのは、今までもこれからも麗玲様だけです」
「……俺達はずっとあなたをお守りしますよ」
閻夜、世璃、翔月、隼刀が順に言う。
それを聞いて、胸の内から何かがこみ上げてくる。
「……ありがとう」
気を抜くと、涙が出てきてしまいそうで、小さくそう言うのが精一杯だった 。
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