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第23章

1
舞の耳に笛の音が聞こえた瞬間、飛影達が動いた。
舞の方を見ていた為、彼等へは背を向けている風夜へ攻撃しようとする彼等へ、舞が手へ溜めた力を放とうとした時、風夜が呟くのが聞こえた。
「……そういう訳か」
「えっ? 」
どういうことかと聞き返そうとした瞬間、舞はいつの間にか近づいてきていた神蘭に拘束された。
「悪いな、舞。ちょっとだけ大人しくしていてもらう」
言いながら、彼女は舞が拾って持ったままだった水晶のペンダントを花音へ投げ渡した。
「えいっ! 」
それに向かって、花音は短剣を突き刺す。
水晶部分が砕けるのと同時に、舞の中からそれまであった負の感情がなくなっていく。
「今のは……一体……? 」
「……魔宝具の影響だ。……どうやら 、負の感情を大きくされ、その対象に対して、攻撃的にさせるものだったようだな」
「魔宝具の影響……!! 」
呟いて、慌てて風夜の方を見る。
「えっ!?ええっ!? 」
その先で見えたものに、舞は思わず声を上げた。
「な、何したの? 」
「ん? 」
風夜の背後では飛影達が全員地に伏している。
見ていない間に何が起きたのかと説明を求めるように視線を向けると、風夜は話し始めた。
「あいつらの周りに結界を張った。その中の空気圧を上げて、上から押さえるように重圧を……」
「そっちこそ、何してるの!? 」
言葉の途中だったが、舞はそう叫んでいた。
「……いや、ただ探しものをしている途中でな。それが見つかるまでは大人しくしていてもらわないとな」
「探しものって何を探しているの? 」
「魔宝具だよ」
舞の問い掛けに答えたのは、花音だった。
「魔宝具の反応が二つあったんだ。一つはさっき壊したものだと思うが、もう一つがな。……どうやら、魔神族に影響を与えるものみたいだが」
補足するように神蘭が言う。
「……正直、それがどんなものなのかわからないからな。手分けして探してはいたんだが」
「で、この近くを通りかかったら、お前達が見えたんでな。割って入ったって訳だ」
風夜に言われ、舞は苦笑しかけて、あることを思い出した。
「そういえば……」
「!!何か知っているのか!?」
「知ってるっていうか、さっきから笛の音がするんだ」
「笛の音だと? 」
聞き返してきた風夜に頷く。
「うん。……それとその音なんだけど 、……聞こえてきてから飛影達の様子がおかしくなったの」
「今はどうだ? 」
「ずっと聞こえてきてる」
答えながら舞は風夜の結界内を見る。
飛影達はどうにか身体の自由を取り戻そうとしているようだった。
2
「二つ目はそれだな。問題はそれを使っている奴が何処にいるのか……」
「舞なら探れるんじゃないのか? 」
「……やってみる」
そう答えて、気配を探るのに集中し始める。
笛の音が何処から聞こえるか、魔宝具の気配を何処から感じるのかを探す。
それを見つけたのはそれからすぐのことで、舞は集中の為、閉じていた目を開いた。
「見つけたよ」
「何処だ? 」
聞いてきた風夜に、舞は訓練場から見えた城の屋根の一部を指した。
「あの辺り。でも、こっちが気付いたことも知られたかも」
「いや、大丈夫だ」
そう言って、風夜と神蘭が何処かに連絡を取り始める。
それを見て、舞は少し不思議に思った 。
「って、行くんじゃないの!? 」
「……生憎、俺は此処から離れる訳にはいかないんでな。音が聞こえなくなったら、教えてくれ」
言われて舞は頷く。
笛の音が聞こえなくなったのは、それから数秒後のことだった。
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