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第23章

1
「それで、私達を呼んだ訳ね」
「……うん」
誰も使っていない部屋に星蓮と封魔を呼び出し、舞は頷いた。
二人には簡単にだが事情を話し、花音達と話した仮定の話までしてある。
その上で心当たりがあるかを聞いたところだった。
「……心当たりね。……ない訳ではないわ」
「本当!? 」
星蓮の言葉に舞は思わず声を上げたが 、彼女の表情は戸惑いを含んでいるように見えた。
「ない訳じゃないんだけど……」
「……今となっては、……何の意味もない情報かもな」
星蓮の言葉を引き継ぐように封魔が言う。
「どういう意味? 」
「……もし、私達の考えている人物があなた達の仮定のようなことをしていたとしても、もう終わったことになる 。……もういないのだからね」
「いないって……」
「言葉のままだ。……飛影に何を吹き込んだのかも想像はつくが、もう忘れろ」
「そうね」
言って、二人は口を噤んでしまった。
(で、結局は飛影とちゃんと話をしろだもんね)
もういない人物だというなら誰だったのかまで聞きたかったのだが、そこまで教えてくれなかった二人に舞は溜息をついた。
(……でも、あの二人がああやって隠すなら、やっぱり神界の上層部の誰かっていうのは間違いなさそう。それに ……、もし二人が考えている人物と飛影に何かした人物が同じで、その人物がもういないなら、それを手伝えば飛影に話が聞けるかも)
そう思い、飛影を探すことにする。
信じる、信じないは別として、やはり天華を裏切った時のことは知っておきたかった。
2
城の中で飛影を見つけられず話を聞くと、煌破と出掛けたと言われ、舞は待つことにしたが、何もしないでいると逆に落ち着かなかった為、訓練場に来ていた。
剣の扱いにも少し慣れておこうと素振りをしていると、ふと殺気を感じた。
咄嗟に剣で受け止める。
攻撃してきたのは、同じ年くらいの少女だった。
舞の持つ聖宝具を警戒したのか、少女が距離をとったのを見て、舞は口を開いた。
「あなたは? 」
「玲莉」
名だけを答え、キッと睨み付けてくる 。
彼女からは強い殺意を感じた。
「あなた、天華の転生者ね。……悪いけど、消えてもらうわ」
「ちょ、ちょっと待って! 」
少女ー玲莉が魔神族であり、敵なのはわかるが、何故ここまで強い殺気を向けてくるのかわからない。
「あなたがいるから……、あなたがいなければ、飛影様は裏切らなかった!飛影様が裏切らなければ、煌破様も後を追わなかった!……私を置いていったりしなかった! 」
「飛影と煌破?……あなた、一体二人とは……」
「……元部下よ。……あなたの所為で二度も信頼していた上司に奪われたね ! 」
「っ!! 」
言葉と共に一撃一撃が強くなってくる 。
何とか攻撃を凌いでいる中で、玲莉のつけているペンダントの水晶が不気味な光を放っているのに気付いた。
(あれは……まさか、魔宝具!! )
玲莉の感情が強まるにつれて、光が強まるのを見て思う。
「あなたがいなければ……、転生なんかしなければ……! 」
「あっ……! 」
剣を弾かれてしまう。
「はあああ!! 」
好機とばかりに斬りかかってくる玲莉に、舞は両手を突き出す。
加減なく放ったその力は、玲莉を大きく吹っ飛ばした。
「はあはあ……」
舞自身も少し乱れた息を整えながら様子を窺う。
その時、足元に何かが転がってきた。
「これ……」
拾い上げてみると、それは先程まで玲莉の首から下げられていたペンダントの水晶部分だった。
「おい、何があった!? 」
その時、走ってくる音がして、姿を見せたのは出掛けていた筈の飛影と煌破だった。
「これは一体……!? 」
視線をはしらせ、二人は倒れている玲莉に気付く。
「玲莉? 」
「何故、此処に? 」
言いながらも二人が玲莉の様子を見るためにか近付いていく。
それを見ていた舞の中に、ふと薄暗い感情が湧いてくるのを感じた。
(そういえば、二人の部下だったって言ってたっけ? )
玲莉の言葉を思い出す。
もやもやとしたものを感じるが、二人は気付いていないようで、その間にも様々な感情が湧いてくる。
気付いた時には弾かれた剣を拾い、背を向けている飛影と煌破へ向かって走り出していた。
「!! 」
気付いた飛影が舞の振り下ろした剣を受け止める。
「おい、どうしたんだ? 」
「…………」
問い掛けられたが、何故か言葉が出ない。
ふと何処からか笛の音が聞こえてきた気がした。
「……っ……!! 」
笛の音が続く中、飛影の力が強まり押し返される。
それだけでなく、続けて二つの斬撃が襲ってきた。
距離をとって見ると、煌破と意識が戻った玲莉が構え直していた。
それ以外にも気配を感じて、三人を警戒しながらもその気配の方を見る。
其処には封魔と白鬼、雷牙の姿があり 、彼等も戦闘態勢をとっている。
標的は、舞のようだった。
3
(やっぱり、魔神族なんか……、信用しなきゃよかった)
攻撃を避け、反撃の隙を探しつつ、そんなことを心の中で呟く。
それに気付いて少し愕然とはしたが、それもすぐに消え、魔神族に対して暗い感情が出てくる。
先程から聞こえてくる笛の音は気になるが、今は自分に対し、攻撃を仕掛けてくる飛影達に集中した方がよさそうだったが、そこへ幾つかの気配が近付いてくるのを感じる。
その直後、双方の動きを止めるかのように、舞と飛影達の間を風の刃が通り過ぎていった。
「!! 」
はっと視線を向けると、此方へ風の刃を放ったらしい風夜が向けた手をそのままに呆れたような視線を向けてきている。
その背後には、花音と神蘭の姿もあった。
「何やってんだ、お前らは。……訓練にしては、……やけに殺気立ってるな 」
舞達に視線を巡らし、そのまま風夜は歩いてくると、舞達と飛影達の間で足を止めた。
「……どいてよ」
「…………」
舞はそう言ったが、風夜は肩を竦めるだけで退こうとはしなかった。
「どいてよ!魔神族はここで消さないと!! 」
そう声を張り上げる。
それと同時に再び笛の音が聞こえた。
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