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第23章

1
目が覚めて、舞は食堂へ行くと中をさっと見回した。
煌破と話をしている飛影を見つけ、彼へと近付いていく。
「飛影」
「ん? 」
「話があるの。ちょっと来て」
食堂から出ようと視線で促すと、彼は軽く眉を顰めた。
「此処だと話せないのか? 」
「……皆に聞かれてもいいなら、私はいいけど」
「……一体、何の話だ?別に俺は…… 」
聞かれて困ることはないと言おうとしたのだろう飛影の耳に舞は口を近付いてけていった。
「いいの?あなたが天華を殺したことだけど」
「!! 」
舞がそう言ったのと同時に目を見開いた飛影は舞の腕を掴んできた。
「来いっ! 」
そう言って、強い力で引っ張ってくる 。
「おいっ!? 」
それまで飛影と話していた煌破が声を上げたが、それに構わずといった様子で食堂から連れ出される。
飛影に引っ張っられて来たのは、彼が使用している部屋だった。
「……さっきの話、誰から聞いた? 」
舞から手を離し、部屋の中から鍵を閉めた飛影が問い掛けてくる。
「誰からって……、知っているのはあなたともう一人しかいないでしょ? 」
「……記憶が……戻ったのか!? 」
「…………うん」
頷くと、飛影は苦々しい表情になった 。
「ねぇ、どうしてあんなことをしたの ? 」
理由があったのなら、今でもいいから教えてほしいと問い掛けたが、飛影は視線を逸らした。
「……すまない」
「天華だった時にも謝ってたよね?一体、何の謝罪? 」
「……すまない」
「っ! 」
謝まることしかしない飛影にかっとなる。
「謝ってるだけじゃ、何もわからないよ!私が知りたいのは! 」
「……それは、今は答えられない」
「何、それ……、そんなんじゃ、全然納得でき……」
「だが! 」
舞の言葉を遮るように、飛影が大きな声を出した。
「……前の決戦前に言った……俺はお前の味方だという言葉。あれは本当のことだ……今も昔もな。そのことは信じてもらえないか? 」
その言葉に舞は視線を逸らした。
「……そんなの……無理だよ。そんなこと言われたって……」
数百年前、天華は飛影を信頼していた 。
舞は飛影を信じたいと思い、信頼関係を築きたかった。
だが、記憶が戻り自分の最期を思い出した今、その言葉も疑ってしまう。
「……天華は……あなたを仲間だと思ってた。……それを裏切ったのは、あなただよ。……正直、私も疑ってる。……今度は私を殺すつもりじゃないかって」
「そのつもりはない。……今度はそんなことしない。……今は無理かもしれないが、俺のことをまた信じてほしい 」
「…………」
その時、部屋の扉が叩かれる。
聞こえてくる声から飛影と同室の煌破が戻ってきたようだった。
2
「…………」
煌破と入れ替わるように部屋を出た舞は、朝食を食べる気にはなれず、自室へと戻ってきていた。
「……信じてほしいって言われても… …」
飛影との話を思い出して呟く。
だが、今は彼のことをとてもではないが、信じる気持ちにはなれない。
「……やっぱり、今は無理だよ」
「何が無理なの? 」
「!! 」
声が聞こえて、慌てて振り返る。
そこにはいつのまにか部屋へと戻ってきていた花音、聖奈、綾の姿があった 。
「そっか。そんなことがあったんだ」
「……というか、私達の前世って裏切られてばかりじゃない」
「そんなのばっかりなんて、何だか全部仕組まれてたみたいだよね」
舞の話を聞いて、花音、聖奈、綾が口々に言う。
その最後の言葉が少し引っかかった。
「仕組まれてた?誰に? 」
「それは誰かわからないけど……」
そう言うと、綾は紙とペンを持ってくる。
「今までのその辺りのことを整理するとさ」
そして、何かを書き始めた。
「まず、聖奈ちゃんの前世、聖鈴を天奏が殺した。……ここの情報はまだないから保留として」
「……次に私と綾ちゃん……、光鈴と光麗が封魔さんに殺された」
「ここはもうはっきりしてる。……そして、ここにポイントが幾つかある」
言って、綾が視線で向けてくる。
「それが何かわかる? 」
「……自分の意思ではなく、操られていたってこと? 」
「それも一見魔神族が関わっているように見えるけど、神界上層部もかなり怪しい。無関係ではなさそうね」
舞と聖奈が言うと、綾は頷いた。
「そこでね、飛影の態度の急変から考えて、封魔と同じような状況をつくられていたとしたら?彼みたいに意思を封じられていなかったとしても、そうせざるを得ない何かを……、天華を裏切らなければならない状況にされていたとしたら? 」
「…………」
「……まぁ、全部仮定の話なんだけどね」
綾が言うのを聞きながら、舞は紙をじっと見つめる。
「……飛影が話さないなら、後何かを知ってる可能性があるのは天奏か、星蓮、封魔ね」
聖奈の呟きに、舞は天奏以外の二人に話を聞いてみることにした。
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