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第21章

1
少し離れた場所から感じる禍々しさを含んだ巨大な力に舞は息をのんだ。
緊張からか手に汗をかいているのに気付いて、服の裾で拭く。
(な、何だかまた緊張してきちゃったよ……)
内心でそんなことを呟いていると、肩を叩かれた。
「……えっ? 」
何かと振り返った舞の頬に指が突きつけられる。
見ると、それは花音でこんな時なのに笑みを浮かべていた。
「……大丈夫だよ」
「だ、大丈夫って……」
迫ってくる白羅の気配に、舞は恐怖を感じていたが、花音にそんな様子はない。
それを不思議に思っていると、視界の端で風夜が肩を竦めるのが見えた。
「……まぁ、肩の力は抜いとけよ」
「そうそう」
風夜と花音の言葉を聞いた舞は戸惑ったように残りの三人に視線を移したが 、その三人にも肩を竦めるだけで返されてしまった。
(もう……)
何だか一人だけ緊張しているのが馬鹿馬鹿しくなってきて、深呼吸を繰り返す。
そのうちに気持ちが落ち着いてきたところで、白羅と彼の持つ魔宝具の気配がすぐ近くまで迫ってきているのを感じた。
同じように気配を感じとったのだろう 、他の五人も身構える。
(来た……!! )
そう心の中で呟いたのと同時に姿を見せた白羅の姿は、神蘭と封魔の二人が対峙した時の姿とも変わっていた。
二人が襲撃されていた時に少し見ただけだったが、その時よりも紅い目は更に吊り上り、身体も更に巨大化していて、すでに舞達のところにスパイとして入り込んでいた時の姿とはかけ離れたものになっていた。
何より大剣として持っていた筈の魔宝具は腕と一体化していて、鍔についていた水晶の顔は白羅の腕と大剣が一体化している部分で凶悪な表情をしている。
その顔が舞達の姿を捉えて、ニタリと笑った。
「……うっ……」
それに思わず、舞が一歩後退ると、同時にその顔は口を吊り上げて声を上げた。
『はははっ、獲物だぞ、白羅』
「ああ。……魔王の前に準備運動といくかな」
そう言った白羅が地を蹴り、接近してくる。
大剣の部分を禍々しい力が包み、直前で飛び上がった白羅が勢いづけて振り下ろしてくる。
「っ……」
それは五人の前に飛び出した封魔の結界にぶつかり、激しく結界を揺らした 。
『ふん、懲りない奴だな。この間、俺達に負けたのをもう忘れたのかぁ? 』
「……忘れてなんか、ないさっ。そっちこそっ、この間とっ……、同じと思うなよっ! 」
笑っているように聞こえる大剣の声に返す封魔の声は苦しげだった。
「同じさ。何人で掛かってこようとなぁ! 」
白羅の声と共に力が強まるのがわかる 。
(破られる! )
結界に僅かなひびが入るのを見て、舞は衝撃に備えようとしたが、次の瞬間 、大剣の顔が声を上げた。
『後ろだ! 』
その声に白羅は距離をとる。
その直後、それまで白羅の首があった場所を風の刃が通り過ぎていく。
「ちっ! 」
『危ない、危ない。いつの間に後ろに回ってたんだぁ』
避けられたことに舌打ちした風夜に、大剣の顔が言う。
「……ふん。俺の攻撃を止めた方が囮だった訳か」
そう言った白羅は、風夜に狙いをつけたようだった。
2
『おらああ! 』
大剣の部分の顔の口から続けて、エネルギー弾が放たれる。
「うぇっ……!あんなことも出来るの ? 」
思わず声に出してしまった舞の見ている先で、風夜はそれを危なげなく避けていく。
それを見て、接近戦に持ち込もうとしたのか白羅が風夜に斬りかかろうとする。
だが、その前に飛影が斬りかかったことで、それを受ける前に動きを止める 。
「はあああ!! 」
飛影一人では押されかかっていたが、続いて斬りかかった封魔によって力は拮抗したようだった。
「ぬぅ……」
『ぐぬぅ……』
「「くっ……」」
聞こえてくる苦しげな声に、舞がどうしようかと思っていると、弓を引き絞る音が聞こえ、数本の光の矢が飛んでいく。
「っ……! 」
放たれた矢に僅かに怯んだ様子を見せた白羅の大剣に、鎖状のものが巻き付くと悲鳴が上がった。
『痛っ、いでででっ!……こらっ、引っ張るなぁ! 』
見れば、再び白羅の背後をとっていた風夜が魔力の鎖を巻き付けて、引っ張っているようだった。
『だから、引っ張るなぁ!! 』
後ろから引っ張られている所為か、力のバランスが変わる。
風夜が身体を反転させ、背負い投げをするような体勢になる。
それに合わせて、飛影と封魔が力を振り絞るように吼えた。
「「うおおおおおっ!! 」」
「ぐぬううう! 」
二人に押し切られ、僅かに身体を浮かせられた白羅は、その勢いを利用したらしい風夜にそのまま投げられる。
「舞!! 」
「舞ちゃん! 」
「えっ!?えっと……」
それを見ていた舞は神蘭と花音に名を呼ばれて、はっとして二人を見る。
彼女達の手にはかなりの力が溜められていて、舞も慌てて力を溜める。
二人が宙に浮いている白羅に向かって放ち、それより少し遅れて舞も力を放つ。
「『ぐあああああっ! 』」
更に追撃のように飛影、風夜、封魔の力が加わり、白羅の身体は大きく吹っ飛ばされていった。
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