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第21章

1
「結局、五日とも付き合ってもらっちゃったね」
「……まぁ、俺は構わないけどな」
声を掛けた風夜はそう返してくる。
「俺というより、大変だったのはお前の方だし」
「うっ……」
言葉に詰まった舞に、飛影が揶揄うように声を掛けてくる。
「確かに、色々な吹っ飛び方をしてたよな。受け身の取り方の練習にはなってたんじゃないか」
「ううっ……」
それに言い返すことは出来ず、舞は唸る。
(確かに二人の言う通りではあったけど……)
少し落ち込みながら、舞はこの五日間のことを思い出した。
『力が封じられてる?』
『そうよ。正確にはあなたの今の力の強さに合わせた形をとっているってところかしら』
天奏に言われて、舞は自分が持っている剣を見る。
『じゃあ、これには聖宝具としての力はないってこと? 』
『今はね。……とはいえ、普通の武器と比べたら、対抗出来るでしょうけどね』
『…………』
『とにかく、白羅が動き出すまでの間 、少しでも扱えるようにしておくことね』
そう言って、天奏は再び麗玲達の元へ戻っていき、舞は風夜に相手を頼んだのだった。
(……何か思い出してみても、この五日間投げられたり、転ばされたりしかしてない。これで大丈夫かなぁ?)
心の中でそう呟く。
その後で自分が休憩時間、他のメンバーの様子を見に行った時のことも思い出した。
飛影と神蘭は力の質が同じだったからこそ、宝具の力の強さに少し戸惑っていたがすぐに慣れたようだった。
封魔は少し魔神族の力を使うことに苦労しているようではあったが、この五日間で問題はなくなり、花音に至っては短剣をとりはしたものの、それの訓練をしているところはそんなに見なかった。
(……私が怪我してばっかりだったこともあるんだけど……)
それで治療中にそのことを聞いてもみたのだ。
『先輩は短剣を受け取ってましたよね 。それを使えるようにしなくていいんですか?』
『ああ、これね。……今回はいいかなって』
問い掛けた舞に、花音は苦笑いした。
『……今、これを使えるようにしようとしても、次の襲撃には間に合わない で、付け焼き刃になると思う。……だから、本当に基本的な扱いだけ出来るようにしておいて、後は今使える力で頑張ってみようかなって』
言いながら、花音は背負っている弓に触れる。
それが聖宝具も魔宝具も持たないといった風夜と同じように見えた。
『だからね、舞ちゃんも焦らなくていいと思う。使えるに越したことはないけど、今は今の自分が出来ることをすればいいんじゃないかな』
その花音の言葉を思い出していたところで、天奏の気配を感じて我に返った 。
2
「……白羅が動き出したわ」
現れるなりそう言った天奏に、空気が張り詰めたのを感じる。
「……あんたの予想通りか」
「……動き出すまでの期間わね」
飛影に対し、天奏が返した言葉に少し引っ掛かりを覚えて、舞は口を開く。
「何か問題でもあった? 」
「……ええ。……これを」
そう言って天奏の取り出した水晶に、ある風景が映し出される。
そこは何処かの街中だった。
「おい!此処は!! 」
映し出されたのが何処かすぐに察したのだろう風夜が声を上げる。
「もう城下街まで入られたのか!? 」
「えっ!?もうそんなところに!? 」
風夜の言葉を聞いて、舞は驚く。
「というより、直接入り込んだのよ。魔王城のある空間にね。計算外だったのは、緋皇がそれを簡単に許したことと、城下街の魔族達を逃がし、街を完全に空にしたこと。……これでは白羅はただ城を目指していくだけだわ」
その言葉通り、水晶に映る白羅はただゆっくりとその歩を進めていた。
「あなた達も戻った方がいいわ。……何処に飛ばせばいいかしら? 」
問い掛けられ、舞は風夜へ視線を送る 。
そうしていたのは舞だけではなく、水晶を見ながら考えている様子の風夜に視線は集まっていた。
「……この先、街の広場がある。其処へ」
水晶の中に見える風景から、白羅のいる場所を割り出せたのか、風夜が言う 。
「……奴がいるところからは二百メートル位、城からは五百メートル位離れている場所だ」
「……わかったわ」
天奏が頷くのを見ながら、舞は自分が緊張しているのに気付き、落ち着こうと深呼吸する。
その間にも舞達の身体を光が包み、気付いた時には風夜が指定した広場と思われる場所に立っていた。
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