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第21章

1
天奏に連れられ、彼女の力で連れてこられた場所は舞にとっても懐かしく感じる場所だった。
「此処って……」
「確か……」
花音の記憶の中にも覚えがあるのだろう、呟く声が聞こえてくる。
「この場所、知ってるのか? 」
「…………うん」
飛影に聞かれて、舞は頷く。
「此処は……よく『私達』神子が話し合いに使ってた……」
「そうよ。麗玲にも知られていない場所といったら、此処くらいしか思いあたらなかった。場所は此処を貸すわ」
そう言って、天奏が舞達の前に何本かの武器を並べた。
「これは魔宝具、それに」
「聖宝具……」
禍々しい気配を持つ武器と、それとは反対の気配を持つ武器に、舞は記憶として薄っすらとだが覚えていた単語を呟いた。
「そう。どちらも私が管理していたものよ。……魔宝具に対抗するには同じ魔宝具か、対になる聖宝具を使うのが手っ取り早いわ」
そう聞いて、舞は天奏が出した宝具へ視線を向ける。
見たところ、槍が一本に剣が二本、短剣が一本で、魔宝具も聖宝具も二つずつだった。
合計で四つ、舞達は六人。
天奏が管理しているものが四つだと言われてしまえば、仕方のないことだが 、後の二人はどうすればいいのだろうか。
そんなことを思っていると、天奏が口を開いた。
「天華……、いえ、舞はもう持っているから今更必要ないでしょう」
そう言われて舞は持ってはいたものの 、まだまともに使ったことはない剣を見る。
「これも魔宝具ってこと? 」
「そうよ。まぁ、今は力を封じているから解放しないとだけど」
「でも……」
それでも一つ足りないと言おうとしたところで、今度は風夜が口を開いた。
「俺にはこれがあるから必要ない。まだ使いようにも幅がありそうだしな」
言いながら腰に差してある今は柄だけになっている剣を抜いて、軽く放り投げる。
(私と風夜が必要ないなら、数的には合うけど……)
「……あんたの目的はよくわからないが、……言ってることは間違ってないな」
そう言って、まず手を伸ばしたのは飛影だった。
彼は迷いなく、槍状の魔宝具を取っていく。
その次に手を伸ばしたのは封魔だった 。
どうするのかと思っていた舞の前で彼は魔宝具の剣を手に取ると、ついでに聖宝具の剣も取り、神蘭へ差し出した 。
「……これはお前が使え」
「…………っ」
それに神蘭は何か言おうとしたが、結局は言葉を発さずに黙ってしまった。
何となく言いたいことはわかったが、彼女が飲んだ言葉を態々口にすることはないだろう。
最後に残っていた短剣を花音が手にとったところで、天奏が告げたのは五日という期限だった。
2
「わわっ……! 」
風夜の不規則ともいえる攻撃に、剣をとられ、手放した時にバランスを崩して倒れ込む。
「……まだやるのか? 」
声を掛けながら、風夜が手を差し出してくる。
手を借りて立ち上がりながら舞は頷いた。
「……そんなに根を詰めてやっても、あまりよくないと思うぞ」
二人を見ていた飛影もそう声を掛けてくる。
「でも……」
天奏が告げた五日というのは、恐らく白羅が再び動くまでの期間だろう。
それを考えると、あまり時間はなかった。
神蘭や封魔は、聖宝具と魔宝具は使いなれていなくても戦闘経験が十分にある。
花音は接近戦こそ慣れていないが、一年前や今までの戦いの中で、弓や能力の使い方には慣れているだろう。
魔神族の上位にいた飛影と、新たな武器を手にしないことにしたらしい風夜は問題はなさそうに見える。
そうなると、問題があるとすれば自分だけだ。
そして、経験が圧倒的に不足している舞にとって、一人で技のバリエーションがある風夜に相手になってもらうのが手っ取り早いような気がした。
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