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第20章

1
「……あ……あぁ……」
斬られたと思った瞬間、エネルギーを近距離から放たれ消し飛んだ月夜に、神蘭は崩れ落ちる。
「……嘘だ……、こんなの……」
(……やり直せると思ったのに……、月夜ともっと話が出来ると思ってたのに……)
近付いてきた足音にゆっくりと視線を上げていく。
そこには月夜を一太刀で斬り捨てた白羅が立っていた。
「まずは裏切り者を一人……、残りもといきたいがその前に……」
黒い大剣が振り上げられる。
だが、それが振り下ろされる前に、一つの声が聞こえてきた。

「待て! 」
「ん? 」
声に反応した白羅が視線を向ける。
「ほぉ、そっちから来てくれるとはな 」
「…………大丈夫か? 」
その声を無視して近付いてきた封魔が掛けてきた声に、神蘭はのろのろと視線を向ける。
「月夜はどうした? 」
「…………」
聞かれたものの答える気にはなれず、視線を逸らすと、封魔の溜息が聞こえてきた。
答えなくても何があったのか、察しはついたのだろう。
だが、今はそれが有難かった。
今、口を開いたら封魔を責めるようなことを言ってしまうかもしれない。
その為、口を噤んでいたのだが、白羅は得意そうに話し始めた。
「奴なら今度こそ逝った。俺が奴を殺し、消し飛ばしてやったからな」
封魔が視線を向けてくるのがわかったが、それにも反応を返さないでいると 、彼もすぐに白羅へと視線を戻したようだった。
「それで二人目を……と思った時に、お前が現れたって訳だ」
「……月夜の次は俺ってか? 」
「そうだ。そっちから来たことで探しに行く手間は省けた」
「…………なら、やってみろよ。俺は奴みたいに甘くはないぞ」
封魔の声が低くなる。
「そうだろうな。……だが、あまりに簡単に始末出来てもつまらない。その点、お前とは力が拮抗しているからな 。奴よりは楽しめそうだ! 」
その言葉の後、地を蹴る音がする。
視線を向けると封魔へと接近した白羅が上段から勢いをつけて、大剣を振り下ろした。
2
ギイィンッ
激しい音を立てて、封魔の剣が受け止めていた大剣を弾く。
それと同時に封魔が剣を握る手と逆の手で光弾を放つが、白羅の大剣に薙ぎ払われる。
その時出来た隙を見て、今度は封魔が斬りかかる。
先程とは逆に白羅が受け止め、そのまま斬り合いになる。
それを見ている限り、やはり二人の実力は拮抗しているのだろう。
(……封魔がもっと早く来ていれば、月夜は死なずに済んだのかもしれないのに)
そう思っていると、突然ぐっと肩を掴まれ、後ろへと引き倒された。
「……っ! 」
身構えてもいなかった為、尻餅をついてしまいそのまま見上げていくと、封魔と白羅の姿はすぐ近くにあった。
封魔が受けに回っていることから、神蘭が狙われたのを助けてくれたのだろう。
そう思ったが、今は礼を言う気分になれない。
(私って、こんな嫌な性格だったっけ ? )
そんなことを思っていると、カランッと何かが落ちる音がして、封魔の力が跳ね上がったのを感じた。
「はあああっ! 」
「ぐっ……」
大剣ごと振り払われた白羅が封魔の追撃で吹き飛ばされていく。
どの位の力を放ったのかまでははっきりとわからなかったが、白羅が起き上がってくる様子はない。
もう大丈夫と判断したのか、落ちていた腕輪を拾い上げると封魔はそれを付け直しながら振り返ってきた。
3
「……俺が怖いか?それとも、……憎いか? 」
そう声を掛けられ、神蘭は少し驚きながら視線を向ける。
「最近、俺のことを避けていただろ」
「……やっぱり、気付いてたんだ? 」
「……ああ。……お前を斬ろうとした俺が怖いのか?それとも、お前自身が俺を殺しかけたことか? 」
「…………」
返せないでいると、封魔はそのまま続けた。
「……憎いとするなら、過去に月夜を斬ったことか?今、間に合わなかったことか? 」
「……わ、私は……」
自分でも何を言おうとしているのか、よくわからないままで口を開く。
だが、次の言葉は続かなかった。
「!! 」
そんなに離れていない位置から異常な程の力を感じる。
それと同時に、禍々しさを感じて神蘭は視線を向けた。
同じように異変を感じ取ったのだろう封魔も振り返る。
その先には先程、封魔に吹っ飛ばされた白羅の姿があった。
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