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第19章

1
意識が戻ったという封魔のいる部屋へと来ると、中から一人の男性が出てきて、風夜に軽く頭を下げて去っていく 。
入れ違いで入ると、封魔は既に身を起こしていた。
「……具合はどうだ?もう起きて大丈夫なのか? 」
「……ああ」
近付きながら問い掛けた蒼魔に、封魔は頷く。
「花音にはまた大きな借りを作ったけどな」
(……あれ? )
溜息をつく封魔を見ながら、部屋に入ってから感じる違和感に舞は内心首を傾げた。
「それより、封魔、お前……」
実際に顔を合わせて改めてほっとしていた様子の蒼魔が表情を引き締める。
「力の質が変わってないか? 」
「……ああ。……元々、俺には実験のせいで要素があったからな。……花音が魔矢の命を俺に注いだ際、力ごと取り込んでしまったみたいだ」
「えっと、それってつまり……」
「……純粋な神族ではなくなったってことだ。一番立場として近いのは、白鬼か」
「……まあ、そうだろうな。だが、前の彼奴の話だと魔神族になった以上、神界には戻れないと言ってなかったか ? 」
風夜のその言葉に、舞ははっとして封魔と蒼魔を見た。
「……そうだな。……神界が魔神族を受け入れることはないだろう。まして 、今回の戦いは昔に比べても被害が大きいからな」
「……覚悟の上だ。魔神族の元へ行く時に全て片付けてある。引き継ぐものも、俺の部屋に纏めてある」
「……最初から戻るつもりはなかったんだ? 」
「……戻れる保証がなかったからな」
舞と封魔の言葉の違いに気付いたのか風夜が溜息をついた。
「言っておくが、折角花音が助けたんだ。命を無駄にするようなことはするなよ」
「……ああ」
封魔が頷いた時、部屋の外から人の気配を感じた舞は扉を開ける。
視線の先には、足早に去っていく神蘭の姿があった。
2
「封魔の様子を見に来たんじゃなかったの? 」
花音の様子を見に行くと言って封魔の部屋を出た舞は、神蘭を見付けて声を掛けた。
「……ああ。そのつもりで謝ろうとも思ってたんだが」
そこまで言って、神蘭は顔を伏せる。
「あそこまで行ったら、怖くなってしまった。どんな顔をして会えばいいかわからなくなった」
それを聞いて、舞は失敗したなと思った。
先程封魔と会話していた時、彼は神蘭について何も言ってはいなかったが、此方から確かめておくべきだった。
(私が見た限りだと、別に気にしていないようだったけど……)
それでも封魔から直接聞いた訳ではないので下手なことは言えない。
何より気休めの言葉は神蘭自身が必要とはしていない様子だった。
「……やっぱり、無理だな」
「えっ!? 」
ポツリと呟く声がして、舞は神蘭を見る。
「……無理って」
「……今は封魔に会えない。……会いたくない」
そう言って神蘭は立ち去ろうとする。
「……逃げるんですか? 」
そう口にした舞に神蘭が振り返る。
「……何? 」
「……そうやって、逃げるのかって聞いてるの? 」
もう一度そう言うと、神蘭は不快そうに眉を顰めた。
「……私は、逃げてなんかいない」
「逃げてるよ。封魔とは会いたくないって言ってたじゃない。逃げていないというなら、ちゃんと話をした方がいいよ」
そう言えば神蘭は目を逸らした。
「……いいからほっておいてくれ」
「あっ、ちょっと!? 」
そう声を掛けたが、神蘭は今はその話もしていたくないというように立ち去っていってしまった。
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