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1章

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「…………」
魔界から神界へやって来た舞と麗玲はまずは情報を集めようと街中にいた。
街中で聞こえてきたのは、亡くなったとされていた神帝が無事だったということや、魔神族に支配されていたことから解放された安堵などで、神帝が裏でやろうとしていることや研究に関する情報は得られなかった。
「うーん、街の人から情報を得るのは無理みたいだね」
「……上層部でも知ってる人は一部みたいだったから、一般の者が知ってるとは思えなかったけど……」
麗玲が言うのを聞きながらも、舞は天華として何か覚えていないかと考えこんだ。
それでも、研究に関してのことは何も出てこない。
舞が何かを思い出そうとしているのに気付いたのか、麗玲が視線を向けてきてはいたが、やはり無理だったと首を横に振る。
「私は確かに実験が行われ、それに封魔が使われたこと、その後、彼がどんな状態になってたかまでは知ってる。……でも、そこまで……そもそも私の ……、天華の記憶の中では最後まで封魔が正気に戻った記憶はないから」
「……前の実験施設が壊滅したのは… …私達がいなくなった後……」
「……そうなるね。……ごめん」
謝ると、麗玲は首を横に振った。
「謝らないで。仕方ないわ」
「……うん」
「「…………」」
そのまま二人して無言でいたが、不意に麗玲が上空を見上げた。
同じように見上げた舞は、上空を飛ぶ幾つかの影に気付いた。
「……あれは……!! 」
「……実験で作られた神帝の私兵〈神の使徒〉と言ってたわね」
そう数は多くはないが、上空を飛んでいく。
見ていると、舞達が見つけたグループとは別のグループと擦れ違う。
それがまるで任務の交代のようにも見えて、舞は麗玲へ視線を戻す。
すると、彼女も舞のことを見つめていた。
「……舞、一つ思い付いたことがあるの。危険かもしれないけど、付き合ってくれる? 」
それに頷いて返し、舞は擦れ違ったグループの片方が向かっていった方向を見る。
「……中央塔から来たグループは向こうに飛んでいったね。……向こうは本来なら何もなかった筈」
「ええ。私も知ってるわ。……向こうにあるのは、あまり人の立ち入らない森と険しい山々だけ」
呟くように言い、お互いの顔を見る。
「……行ってみる価値はありそうだね 」
「……そうね」
頷き合い、二人は飛んでいくグループを見失わないよう走り出した。
見失わないよう後を追っていくと、やはり森の方へ飛んでいく。
周囲は薄暗く、視界が悪くなる中、注意しながらも進んでいく。
「……あ……」
その内に空を飛んでいた神の使徒達が降下し始め、それに気付いて舞は声を上げた。
森の中央辺りだが、彼等が全員降りたのなら、あの場所に何かがあるのは間違いない。
そう思って、その場所へ急ぐ。
〈神の使徒〉が降りた辺りは少しだけ開けていて、小さな小屋が一軒建っていた。



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