第一章
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『すみません、すっかり寝てしまって』
軽く目を閉じたつもりが気がつけばすっかり暗くなるまで熟睡してしまったようだ
月はすっかり高く昇り外を歩く者はあまりいなかった
「薬の効果もあったのだろう、日々の疲れが少しでも取れたなら良かったです」
隣を歩くFはナマエに静かに微笑み自分達の前で揺れる二人の影へと目を向けた
並んで歩く影は本体よりも少し大きく、歩く度に揺れ影同士が身を寄せるようにくっつく
まるで身を寄せ合うような影の姿にFは内心照れつつ喜んでもいたが、ナマエにはそんな余裕はなく…
『(はぁぁFさんのベッドで寝ちゃうなんて…イビキとか大丈夫だったのかな?変な顔してたりして…)』
しょんぼりと肩を落とし歩いていると、ふとFが顔だけを振り向かせ後ろを気にしだした
ライトグレーの瞳は、着ていた上着のファー越しに建物の影を鋭い目で睨み足が止まる
まるでそこに敵でも見つけたように顔を影を落とし、彼の手は腰に下げていたボールへと伸びようとしていた
「…………」
『Fさん?どうかしましたか?』
彼の様子の異常に気が付き声をかけると鋭かった瞳はすぐに元通りとなりボールに触れそうだった手はピクリと揺れ静かに離れていった
「いえ、そろそろホテルですね…私のような者が一緒では何を言われるか分からないですし…ここまでにしましょう」
角を曲がればホテルZの正面が見えてくる
彼との二人っきりの時間も終わりを迎えたのだ
『あ…送ってくれてありがとうございます』
「いえ、それでは」
すぐにその場を離れようとするFの後ろ姿
次はいつ会えるだろうか?
夜の闇に消えそうになる彼を見つめているとナマエの足は自然と走り、Fの服の裾を咄嗟に掴んだ
『っ、Fさん!』
「ん?どうしました?」
服を引っ張られた事によりふりむいたFは不思議そうに彼女を見下ろした
なんと言えばいいだろうか?
後先考えず服を掴んでしまったせいでナマエはすぐには答えられず
『その……なんていうか…』
言葉を探しながら気持ちを落ち着かせようとしている彼女に気がつくとFは催促する事もせず静かに待っていてくれた
何度目かの深呼吸をしナマエは喉奥に詰まっていた言葉を必死に口にする
『………また…、あ……会えますか?』
緊張しつつ出した短い言葉
月明かりに照らされた彼女の頬は赤く染まっておりFは無性にその熱を持っているであろう頬に触れたくなった
下ろしていた手がピクリと揺れるが、我慢するように拳を作り彼は困ったように眉を下げた
「………ええ、必ず」
『っ、は……へへ!それなら良かった!じゃあお休みなさい!』
たった一言で嬉しそうに顔をふにゃりと崩した彼女が愛しい
Fは喉が酷く渇いたような錯覚を感じつつホテルへと帰っていくナマエを見つめ小さくお休みの言葉を返す
「……bonne nuit」
夜の闇に消えそうな低く響く彼の声は届いただろうか?
無事にホテルへと帰った彼女に満足すると彼は来た道を戻り始めた
そんな二人が別れを交わしていた姿を物陰から見ていた者がいる
その男は何やらメモをとり懐にそれをしまい込むと一仕事終えたように背伸びをし
「さて…俺も戻るか…………ゔっ!!」
のんびりと歩き出した瞬間だ
気配もなく男は何者かにより後ろから襲いかかられ地面へとうつ伏せに倒れた
「なっ、なんだテメェっ!」
地面にねじ伏せられた男は暴れようともがくが背中には相手の体重がかけられ、強い力で顔と腕を抑えつけられてしまいびくともしない
冷たい地面に頬を押し付ける誰かの手
その指の隙間から犯人を覗き見ると…そこにいたのは自分がさっきまで尾行していたFだった
「……貴様こそなんだ?何故彼女の周りを彷徨いている」
「はあ?なんの事だよ?さっぱり分からっぐっ!!」
知らぬふりを決め込もうとすると掴まれていた腕が後ろへと折り曲げられ肩に痛みが走った
「私に嘘は通用しない」
暗闇の中美しく光るライトグレーの片目
その目は申し訳なさも遠慮の色もなく、ただ目の前の邪魔な石でも見ているかのようだった
「おいっ、まじでっ、やめっ!いてててて!」
「目的は?」
「〜〜っ!」
ギチギチと鳴る腕の関節
だが彼はあと一歩のところで口を閉ざしだんまりを決め込もうとした
「………腕の一本でも奪わないと駄目か?」
ため息と共に、途端にFは彼の肩甲骨に体重を乗せ腕の関節に狙いを定める
掴んでいた腕は先程よりも強く引っ張り出し腕から酷い痛みと嫌な音が聞こえだした
「ひっ!(ヤバいヤバいヤバい!なんだよっこのオッサン!!)」
ミシッ…
「お、俺はただ仕事で!依頼されたからあの女を尾行してただけだ!」
恐怖心が勝ってしまい口を開いてしまった
男は無意識に出た言葉にハッと我に返るがもう遅い…
「誰に頼まれた」
地面に顔を押し付ける手により力が込められる、指の隙間から見えたFの顔は先程とは違い怒りが溢れ出し顔に影が落ちていた
普段は閉じているもう片方の瞳
その目はいつの間にか開かれており男を殺す勢いで鋭くなっていた
「………っ、さ…サビ組のボスだ!」
「サビ組?……ああ……なるほど」
Fは何かを納得すると呆気なく男から体を離し、慌てて片腕を気にしながら起き上がる姿を静かに見つめた
「戻って伝えなさい、これ以上彼女に関わるなと」
「は、はいっ!!」
そそくさと逃げる男に興味をなくしたFは自分の額に拳を作った手の甲をそえた
何かを考え込む時の一つの癖でもある
「(サビ組……昔の私が世話したらしいが…何故今更ナマエさんを見張っている?)」
無意識に開いた光が見えない目元にそっと手を当てるといつもより熱を持っているようだった
「(彼女を守りたいと思う気持ちは一緒か)」
過去の自分と今の自分
直接言葉を交わさずとも考える事はやはり同じなのだ
「……彼女を守らねば」
そんなFの心配をよそにホテルでは賑やかな言い合いが始まっていた
「無断外泊」
エレベーター前に陣取り腕を胸の前で組み合わせたガイ、彼は今回の事で随分不満ができたようだ
『別にいいでしょ?』
「どこに行ってたんだよ!皆に心配させて!連絡くらいできただろ?」
『ちょっと具合悪くなったの、そしたら助けてもらって…その人の家でお世話になってたの』
Fの事を思い出したのだろう
喋っている間に照れてしまいもじもじと指で遊び出す
ガイはじっとりとそんな彼女を見つめると
「………そいつ男だろ?」
『へ?な、なんで?』
不意にガイはナマエへと近づくと顔を彼女に寄せ眉間に深いシワを作った
「男物の香水の匂いがするぜ!」
『えー?する?』
何故か嬉しそうだ
彼女は自分の腕や服に鼻を寄せ彼の残り香を嬉しそうに探しだしガイの事はほったらかしだ
それが余計に苛立たせガイは大きな声で吠え出す
「誰だよっそいつ!オレの知ってるやつか!」
『ちょ、なんなの?ガイったら変だよ?ね?ピュール?』
同じフロアで読書を楽しんでいたピュールに助けを求めるが…
「知りません、興味ありません、巻き込まないでください」
ツンと冷たくするピュール
ならばと同じくピュールの側でお茶を楽しんでいたデウロへと助けを求めるが
『もーっ!助けてよデウロっ!!』
「んふふっ!面白いからもう少し見させてよ」
デウロも助けにはなってくれないようだ
「ナマエ!」
『あ〜もうっ!』
賑やかな光に包まれ呑気に笑うナマエ
夜の闇に包まれながら彼女の為に動くF
そんな二人の知らぬところで何かが動き始めていた
「……随分とお喋りな口やな…お前」
サビ組のアジト
重い空気が張り詰める事務所内では顔に青痣を無数につけた男がカタカタと震えながら床に正座させられていた
その向かい側のデスクから鷹のような目で見下ろすのはサビ組のボスである…カラスバだ
「仕事はきっちりとこなす言うから大金出してやったのに…ゲロっちまったと?やってくれるやん」
やれやれと席から立ち上がったカラスバはゆったりとした動きで男の前に近寄り、衣擦れをさせながらしゃがみ込み目線を合わせた
「あ、あれは、あのオッサンがヤバすぎてっアイツが来るまではちゃんと仕事してたんだ!」
男の言葉にピクリと片眉を揺らしたカラスバは床についた震える彼の手にそっと手を重ね震えている肩を軽く叩いてくれた
「そうか、そうか…なるほどなぁ」
Fが現れるまでは仕事は順調だったのは確かだ
今回の事はアクシデントだと分かってもらえたのかと期待し男の体から震えが消えた瞬間
「……言葉に気ぃつけや」
どすの利いた低い声が耳元に響き
男の中指を強い力で掴み上げ、枯れ木をへし折ったよう鈍い音と共に向いてはいけない方向へとそれは曲げられた
「ーーっっ!!!」
あまりの事に悲鳴をあげる暇もなく、痛みで体を拗じらせる男はカラスバの冷めた瞳と視線がぶつかった
その瞳の奥には殺意が混ざっており、恐ろしいと言うのに目を離す事もできなかった
「次俺の前であの御方をオッサン呼びしよったら…指一本じゃすまさへんで?」
折れた指から手を離し立ち上がったカラスバはニンマリと目元を細め妖しく口角を吊り上げていた
体中から冷や汗を噴き出し顔を真っ青にさせた男は折れた手を守るように胸に抱きしめ体を小さく丸めるしかできない
本能的に自身を守ろうとしているのだろう
見開いた目は床だけを見つめ、ドクドクと音を鳴らす心臓は耳元で脈打っている気がした
「ん?ああ〜次なんてお前にはなかったわ、ハハッ堪忍な?」
「……え?……待っ…それって…」
嫌な予感がし顔を勢いよくあげる
「ジプソ」
「はいボス」
呼ばれたのはカラスバの右腕であるジプソという体格のいい男だった
「用済みや…俺の目に二度と入らんように捨ててきてや」
命令を受けたジプソは理由を聞くこともなく淡々と返事をし男の腕を掴む
「ひっ!待ってくれ!次こそちゃんと仕事する!頼むからっ!」
「耳障りなゴミやな…はよ捨ててや」
喚き散らす男は虚しくもジプソに引き摺られ部屋を後にし、室内は漸く静けさを取り戻した
カラスバは少しズレた眼鏡を直しつつ仕事用のデスクに戻ると一枚の紙を手に取り瞳を細めた
「………フラダリさんが動く程の女…か」
手元の紙は先程の男が集めたナマエについての調査書だった
その中には写真も顔写真も載っており呑気に笑う少女を見つめカラスバは笑みを浮かべる
「ほな…そろそろ遊んで貰おうか?お嬢さん」
軽く目を閉じたつもりが気がつけばすっかり暗くなるまで熟睡してしまったようだ
月はすっかり高く昇り外を歩く者はあまりいなかった
「薬の効果もあったのだろう、日々の疲れが少しでも取れたなら良かったです」
隣を歩くFはナマエに静かに微笑み自分達の前で揺れる二人の影へと目を向けた
並んで歩く影は本体よりも少し大きく、歩く度に揺れ影同士が身を寄せるようにくっつく
まるで身を寄せ合うような影の姿にFは内心照れつつ喜んでもいたが、ナマエにはそんな余裕はなく…
『(はぁぁFさんのベッドで寝ちゃうなんて…イビキとか大丈夫だったのかな?変な顔してたりして…)』
しょんぼりと肩を落とし歩いていると、ふとFが顔だけを振り向かせ後ろを気にしだした
ライトグレーの瞳は、着ていた上着のファー越しに建物の影を鋭い目で睨み足が止まる
まるでそこに敵でも見つけたように顔を影を落とし、彼の手は腰に下げていたボールへと伸びようとしていた
「…………」
『Fさん?どうかしましたか?』
彼の様子の異常に気が付き声をかけると鋭かった瞳はすぐに元通りとなりボールに触れそうだった手はピクリと揺れ静かに離れていった
「いえ、そろそろホテルですね…私のような者が一緒では何を言われるか分からないですし…ここまでにしましょう」
角を曲がればホテルZの正面が見えてくる
彼との二人っきりの時間も終わりを迎えたのだ
『あ…送ってくれてありがとうございます』
「いえ、それでは」
すぐにその場を離れようとするFの後ろ姿
次はいつ会えるだろうか?
夜の闇に消えそうになる彼を見つめているとナマエの足は自然と走り、Fの服の裾を咄嗟に掴んだ
『っ、Fさん!』
「ん?どうしました?」
服を引っ張られた事によりふりむいたFは不思議そうに彼女を見下ろした
なんと言えばいいだろうか?
後先考えず服を掴んでしまったせいでナマエはすぐには答えられず
『その……なんていうか…』
言葉を探しながら気持ちを落ち着かせようとしている彼女に気がつくとFは催促する事もせず静かに待っていてくれた
何度目かの深呼吸をしナマエは喉奥に詰まっていた言葉を必死に口にする
『………また…、あ……会えますか?』
緊張しつつ出した短い言葉
月明かりに照らされた彼女の頬は赤く染まっておりFは無性にその熱を持っているであろう頬に触れたくなった
下ろしていた手がピクリと揺れるが、我慢するように拳を作り彼は困ったように眉を下げた
「………ええ、必ず」
『っ、は……へへ!それなら良かった!じゃあお休みなさい!』
たった一言で嬉しそうに顔をふにゃりと崩した彼女が愛しい
Fは喉が酷く渇いたような錯覚を感じつつホテルへと帰っていくナマエを見つめ小さくお休みの言葉を返す
「……bonne nuit」
夜の闇に消えそうな低く響く彼の声は届いただろうか?
無事にホテルへと帰った彼女に満足すると彼は来た道を戻り始めた
そんな二人が別れを交わしていた姿を物陰から見ていた者がいる
その男は何やらメモをとり懐にそれをしまい込むと一仕事終えたように背伸びをし
「さて…俺も戻るか…………ゔっ!!」
のんびりと歩き出した瞬間だ
気配もなく男は何者かにより後ろから襲いかかられ地面へとうつ伏せに倒れた
「なっ、なんだテメェっ!」
地面にねじ伏せられた男は暴れようともがくが背中には相手の体重がかけられ、強い力で顔と腕を抑えつけられてしまいびくともしない
冷たい地面に頬を押し付ける誰かの手
その指の隙間から犯人を覗き見ると…そこにいたのは自分がさっきまで尾行していたFだった
「……貴様こそなんだ?何故彼女の周りを彷徨いている」
「はあ?なんの事だよ?さっぱり分からっぐっ!!」
知らぬふりを決め込もうとすると掴まれていた腕が後ろへと折り曲げられ肩に痛みが走った
「私に嘘は通用しない」
暗闇の中美しく光るライトグレーの片目
その目は申し訳なさも遠慮の色もなく、ただ目の前の邪魔な石でも見ているかのようだった
「おいっ、まじでっ、やめっ!いてててて!」
「目的は?」
「〜〜っ!」
ギチギチと鳴る腕の関節
だが彼はあと一歩のところで口を閉ざしだんまりを決め込もうとした
「………腕の一本でも奪わないと駄目か?」
ため息と共に、途端にFは彼の肩甲骨に体重を乗せ腕の関節に狙いを定める
掴んでいた腕は先程よりも強く引っ張り出し腕から酷い痛みと嫌な音が聞こえだした
「ひっ!(ヤバいヤバいヤバい!なんだよっこのオッサン!!)」
ミシッ…
「お、俺はただ仕事で!依頼されたからあの女を尾行してただけだ!」
恐怖心が勝ってしまい口を開いてしまった
男は無意識に出た言葉にハッと我に返るがもう遅い…
「誰に頼まれた」
地面に顔を押し付ける手により力が込められる、指の隙間から見えたFの顔は先程とは違い怒りが溢れ出し顔に影が落ちていた
普段は閉じているもう片方の瞳
その目はいつの間にか開かれており男を殺す勢いで鋭くなっていた
「………っ、さ…サビ組のボスだ!」
「サビ組?……ああ……なるほど」
Fは何かを納得すると呆気なく男から体を離し、慌てて片腕を気にしながら起き上がる姿を静かに見つめた
「戻って伝えなさい、これ以上彼女に関わるなと」
「は、はいっ!!」
そそくさと逃げる男に興味をなくしたFは自分の額に拳を作った手の甲をそえた
何かを考え込む時の一つの癖でもある
「(サビ組……昔の私が世話したらしいが…何故今更ナマエさんを見張っている?)」
無意識に開いた光が見えない目元にそっと手を当てるといつもより熱を持っているようだった
「(彼女を守りたいと思う気持ちは一緒か)」
過去の自分と今の自分
直接言葉を交わさずとも考える事はやはり同じなのだ
「……彼女を守らねば」
そんなFの心配をよそにホテルでは賑やかな言い合いが始まっていた
「無断外泊」
エレベーター前に陣取り腕を胸の前で組み合わせたガイ、彼は今回の事で随分不満ができたようだ
『別にいいでしょ?』
「どこに行ってたんだよ!皆に心配させて!連絡くらいできただろ?」
『ちょっと具合悪くなったの、そしたら助けてもらって…その人の家でお世話になってたの』
Fの事を思い出したのだろう
喋っている間に照れてしまいもじもじと指で遊び出す
ガイはじっとりとそんな彼女を見つめると
「………そいつ男だろ?」
『へ?な、なんで?』
不意にガイはナマエへと近づくと顔を彼女に寄せ眉間に深いシワを作った
「男物の香水の匂いがするぜ!」
『えー?する?』
何故か嬉しそうだ
彼女は自分の腕や服に鼻を寄せ彼の残り香を嬉しそうに探しだしガイの事はほったらかしだ
それが余計に苛立たせガイは大きな声で吠え出す
「誰だよっそいつ!オレの知ってるやつか!」
『ちょ、なんなの?ガイったら変だよ?ね?ピュール?』
同じフロアで読書を楽しんでいたピュールに助けを求めるが…
「知りません、興味ありません、巻き込まないでください」
ツンと冷たくするピュール
ならばと同じくピュールの側でお茶を楽しんでいたデウロへと助けを求めるが
『もーっ!助けてよデウロっ!!』
「んふふっ!面白いからもう少し見させてよ」
デウロも助けにはなってくれないようだ
「ナマエ!」
『あ〜もうっ!』
賑やかな光に包まれ呑気に笑うナマエ
夜の闇に包まれながら彼女の為に動くF
そんな二人の知らぬところで何かが動き始めていた
「……随分とお喋りな口やな…お前」
サビ組のアジト
重い空気が張り詰める事務所内では顔に青痣を無数につけた男がカタカタと震えながら床に正座させられていた
その向かい側のデスクから鷹のような目で見下ろすのはサビ組のボスである…カラスバだ
「仕事はきっちりとこなす言うから大金出してやったのに…ゲロっちまったと?やってくれるやん」
やれやれと席から立ち上がったカラスバはゆったりとした動きで男の前に近寄り、衣擦れをさせながらしゃがみ込み目線を合わせた
「あ、あれは、あのオッサンがヤバすぎてっアイツが来るまではちゃんと仕事してたんだ!」
男の言葉にピクリと片眉を揺らしたカラスバは床についた震える彼の手にそっと手を重ね震えている肩を軽く叩いてくれた
「そうか、そうか…なるほどなぁ」
Fが現れるまでは仕事は順調だったのは確かだ
今回の事はアクシデントだと分かってもらえたのかと期待し男の体から震えが消えた瞬間
「……言葉に気ぃつけや」
どすの利いた低い声が耳元に響き
男の中指を強い力で掴み上げ、枯れ木をへし折ったよう鈍い音と共に向いてはいけない方向へとそれは曲げられた
「ーーっっ!!!」
あまりの事に悲鳴をあげる暇もなく、痛みで体を拗じらせる男はカラスバの冷めた瞳と視線がぶつかった
その瞳の奥には殺意が混ざっており、恐ろしいと言うのに目を離す事もできなかった
「次俺の前であの御方をオッサン呼びしよったら…指一本じゃすまさへんで?」
折れた指から手を離し立ち上がったカラスバはニンマリと目元を細め妖しく口角を吊り上げていた
体中から冷や汗を噴き出し顔を真っ青にさせた男は折れた手を守るように胸に抱きしめ体を小さく丸めるしかできない
本能的に自身を守ろうとしているのだろう
見開いた目は床だけを見つめ、ドクドクと音を鳴らす心臓は耳元で脈打っている気がした
「ん?ああ〜次なんてお前にはなかったわ、ハハッ堪忍な?」
「……え?……待っ…それって…」
嫌な予感がし顔を勢いよくあげる
「ジプソ」
「はいボス」
呼ばれたのはカラスバの右腕であるジプソという体格のいい男だった
「用済みや…俺の目に二度と入らんように捨ててきてや」
命令を受けたジプソは理由を聞くこともなく淡々と返事をし男の腕を掴む
「ひっ!待ってくれ!次こそちゃんと仕事する!頼むからっ!」
「耳障りなゴミやな…はよ捨ててや」
喚き散らす男は虚しくもジプソに引き摺られ部屋を後にし、室内は漸く静けさを取り戻した
カラスバは少しズレた眼鏡を直しつつ仕事用のデスクに戻ると一枚の紙を手に取り瞳を細めた
「………フラダリさんが動く程の女…か」
手元の紙は先程の男が集めたナマエについての調査書だった
その中には写真も顔写真も載っており呑気に笑う少女を見つめカラスバは笑みを浮かべる
「ほな…そろそろ遊んで貰おうか?お嬢さん」
