五条悟
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あの人の愛は猛毒だった。口にすれば窒息し、触れれば爛れる。少しずつ侵蝕していく悟の愛は重く、私を弱らせていった。
「夢子、どこに行っても僕の手のひらの上だ。逃げても迎えに行くからね」
夏空のような爽やかさを纏う瞳の色に見え隠れする、少し衝撃を与えれば飛び散る火花のような激しさ、狂おしさ、底知れない闇。
「僕だけを見てて、夢子。君が先に死んでも、綺麗に処理してドレスを着せて、僕が死ぬまで飾っておいてあげるから安心してね」
夏油傑という親友を失ったあの時から、あの人は少しずつ、確実に見えない何かに浸食されていた。大人になったんだと、周りはそう解釈していた。親しい人には子供のように振るまい、敵対するものにはどす黒い本性と強さを見せつけた。だんだんと変わりゆくあなたを、変われない私はじっとただただ見つめているしかなかった。
そして、私は夏油傑が好きだった。傑と悟と、硝子と、灰原くんと七海くんと、その他みんなで過ごす時間が何にも変え難く、一番好きな時間だった。
もう私の恋は永遠に叶わない。全部どうでも良い、と、半ば自棄で自ら悟の腕の中へ足を踏み入れた。あの手を取ればもう戻れないと、この手を伸ばせば枷をはめられると知っていたのに。
私が寂しさから悟を求めた時、
「夢子だけは、ずっと傍にいてくれ」
失いたくないんだ、と貴男の涙を初めて見た。
親友を失った悟の心の痛みは私の比ではないだろうが、長年の付き合いもあって絆されてしまい、プロポーズを受け入れた。
「ごめんなさい」
これは私の夫となる人への謝罪ではない。
年下ながら私を思いやってくれた今は亡き人への言葉。
傑、とあの人には聞こえないようにその人の名前を呼んだ。
「ん、なんか言った?」
振り返った五条家の当主、悟が怪訝な顔で私を見た。私たちの結婚式がある晴れの日になんてことを考えていたのだろう。
「裾を踏んで転んだらごめんね、って」
ウェディングドレスの裾を手でゆらゆらさせながら誤魔化すと、サングラス越しに彼の瞳が少し細まる。その顔からは感情が読み取れない。流れるような動作で腰に手を回して抱き寄せられ、彼が私の耳元で囁く。
「2人分、受け止めてみせるから安心してよ」
2人分、と聞いただけで胃がせり上がってきそうだった。他の男を想いながらも、命が宿り日に日にふくらむ腹。そして、後ろめたさに心が軋んだ。思考の片隅からじわじわと仄暗い部分が広がっていく。
「悟、愛してる」
今、うまく笑えているだろうか。
自分に言い聞かせるように愛を囁き、夫となる人の頬に触れた。
この選択に間違いはないはずだ。
ずっと想ってくれていた、この人の愛を受け入れれば私は不幸になることはない。大抵のことは許してくれるし、何不自由ない生活が約束されている。
そして、私の言葉に満足気に微笑む悟の口づけを受け入れた。
私は五条悟の妻になる。
END.
「夢子、どこに行っても僕の手のひらの上だ。逃げても迎えに行くからね」
夏空のような爽やかさを纏う瞳の色に見え隠れする、少し衝撃を与えれば飛び散る火花のような激しさ、狂おしさ、底知れない闇。
「僕だけを見てて、夢子。君が先に死んでも、綺麗に処理してドレスを着せて、僕が死ぬまで飾っておいてあげるから安心してね」
夏油傑という親友を失ったあの時から、あの人は少しずつ、確実に見えない何かに浸食されていた。大人になったんだと、周りはそう解釈していた。親しい人には子供のように振るまい、敵対するものにはどす黒い本性と強さを見せつけた。だんだんと変わりゆくあなたを、変われない私はじっとただただ見つめているしかなかった。
そして、私は夏油傑が好きだった。傑と悟と、硝子と、灰原くんと七海くんと、その他みんなで過ごす時間が何にも変え難く、一番好きな時間だった。
もう私の恋は永遠に叶わない。全部どうでも良い、と、半ば自棄で自ら悟の腕の中へ足を踏み入れた。あの手を取ればもう戻れないと、この手を伸ばせば枷をはめられると知っていたのに。
私が寂しさから悟を求めた時、
「夢子だけは、ずっと傍にいてくれ」
失いたくないんだ、と貴男の涙を初めて見た。
親友を失った悟の心の痛みは私の比ではないだろうが、長年の付き合いもあって絆されてしまい、プロポーズを受け入れた。
「ごめんなさい」
これは私の夫となる人への謝罪ではない。
年下ながら私を思いやってくれた今は亡き人への言葉。
傑、とあの人には聞こえないようにその人の名前を呼んだ。
「ん、なんか言った?」
振り返った五条家の当主、悟が怪訝な顔で私を見た。私たちの結婚式がある晴れの日になんてことを考えていたのだろう。
「裾を踏んで転んだらごめんね、って」
ウェディングドレスの裾を手でゆらゆらさせながら誤魔化すと、サングラス越しに彼の瞳が少し細まる。その顔からは感情が読み取れない。流れるような動作で腰に手を回して抱き寄せられ、彼が私の耳元で囁く。
「2人分、受け止めてみせるから安心してよ」
2人分、と聞いただけで胃がせり上がってきそうだった。他の男を想いながらも、命が宿り日に日にふくらむ腹。そして、後ろめたさに心が軋んだ。思考の片隅からじわじわと仄暗い部分が広がっていく。
「悟、愛してる」
今、うまく笑えているだろうか。
自分に言い聞かせるように愛を囁き、夫となる人の頬に触れた。
この選択に間違いはないはずだ。
ずっと想ってくれていた、この人の愛を受け入れれば私は不幸になることはない。大抵のことは許してくれるし、何不自由ない生活が約束されている。
そして、私の言葉に満足気に微笑む悟の口づけを受け入れた。
私は五条悟の妻になる。
END.