夢短編集SS
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春のかぶき町。
川沿いの土手は、花見客で賑わっていた。
桜がはらはらと風に舞う。
「……いい天気だな」
「そうだね」
二人並んで、ぼんやりと桜を見上げる。
神楽と新八は屋台に行ったきり戻ってこない。
束の間の静かな時間だった。
ひらりと、一枚の花びらが銀時の肩に落ちる。
ナマエはふと、横顔を見る。
風に揺れる銀髪。
淡い桜の花びらが、そこに絡んでいる。
なんだかこのまま桜の中にふっと紛れて、どこかへ行ってしまいそうな気がして。
気づけば、手が伸びていた。
きゅ、と銀時の着物の袖を軽く引く。
銀時が振り向く。
「……あ……ごめん」
「いや、別にいいけど。どうした?」
ナマエは一瞬迷ってから、小さく言う。
「なんか……桜に攫われそうだったから」
銀時は一瞬ぽかんとして、それから、ふっと笑う。
「なんだそりゃ」
ナマエは桜を見上げる。
「だって春ってさ、なんか、いなくなっちゃいそうな感じしない?」
少しの沈黙。
それから銀時は、ナマエの手を見た。
まだ、自分の袖をつまんでいる。
「そんな心配すんな」
銀時は少しだけ肩をすくめる。
「桜なんかに攫われねぇよ」
「ほんと?」
「当たり前だろ」
銀時はそのまま、ナマエの手を軽く握る。
「攫われるなら、お前の方だろ」
「それどういう意味?」
「そのまんまだよ」
桜がまた、風に舞う。
ナマエは少しだけ照れた顔で、でも手は離さなかった。
