パステルの中で、父は戦う
ピンクの中の侍たち──メルティメロウ三つ巴
午後2時。かぶき町の商業エリア。とあるテナントビルのうちの一店舗。
ファンシーショップ『メルティメロウ♥』店内。
ハート リボン、うさぎ、星、レース、フリル、パステルの嵐。
BGMは『ふわもこキャンディのうた♪』ループ再生中。
店内の奥、シールコーナーの前。
なぜか、三人の男が立っていた。
・坂田銀時(ダサいサングラス&変装帽)
・土方十四郎(隊服+冷や汗)
・高杉晋助(和装+完全なる場違い)
──三者、同時に目が合う。
「………………」
「……………(……やっべェ……)」
「…………(……誰よりも見られたくねェ相手だ……)」
沈黙。ピンクの中で、三人の空気だけがドス黒い。
先に口を開いたのは銀時。
銀時「おいおいおいおい……副長さん? その格好でその棚にいんの、通報されっぞ?」
土方「てめーが言うな、何だよその変装。『不審者入店しました』って館内放送レベルだぞ」
高杉「……俺から見たら、お前ら二人が不審者ペアにしか見えねェがな」
銀時「へぇ〜……高杉さん? 和服でここ入るの勇気あんな〜。『おつかいに来た田舎の殿様』かと思ったわ〜」
高杉「黙れ。こっそり娘のシール選びに来た40代父親のくせに」
土方「いや、40はまだ行ってねェし。てかお前ら、まさかボンドロ狙いか?」
銀時「は? 別に? 娘に神のシール買ってきてって言われただけだし?」
高杉「……こっちはゆめかわ結界の維持に必要って言われたから仕方なく来てるだけだ」
土方「……うちは、しょだい様の服に必要な装飾だ。これを買わないと祭壇が未完成で……あ、いや、違う。買ってやるだけだ」
銀時「全員ガチで理由あるの草」
高杉「なんだかんだで、お前らも愛されてんだな」
土方「……あ?」
銀時「んだよ、鼻で笑ったろ今ァ!!?」
高杉「笑ってねぇよ。心の底から、俺たち、終わってんなって思っただけだ」
「………………」
「………………」
「………………っく……」
ぷっ……と吹き出し、三人とも一瞬笑ってしまう。
銀時「……なんかもういいよ、俺たち……」
土方「ああ……認めよう。ここにいる男全員、娘のしもべだ」
高杉「ぬいぐるみにシール貼られる人生とは思わなかったな……」
その後、三人は黙々と棚の前へ。
銀時「さくらんぼエンジェるん・ぷっくりver.、っと……」
土方「ティアらりん・泣き顔ver.……どれがレアなんだよこれ……」
高杉「ローズマカロンねこたん・結界強化版。ふざけた名だ……」
会計も無言。
袋を握りしめてレジを離れたあと、店の外で再び顔を合わせる。
銀時「……じゃ、また」
土方「見なかったことにする」
高杉「ここで会ったことは、墓まで持ってけ」
三人、無言で散る。
その背中には、それぞれパステルピンクの小袋が一つずつ揺れていた。
ファンシーショップ『メルティメロウ♥』、今日も平和。
だが、スタッフ間では語り継がれることになる。
あの日、一度に侍系ガチ顔のおじさんが3人来て、全員ぬいぐるみのシール買っていった事件。
『ファンシー・サムライ三銃士』呼ばれてるとか、いないとか。
