パパとたまごっちと、取り返しのつかない成長
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おかえり、そしてありがとう──娘たちのおにぎりまる
■坂田家編
「ただいま〜〜〜……」
どこか気まずげに玄関を開ける銀時。
紙袋を持つ手がわずかに震えているのは、きっと気のせいじゃない。
「……おにぎりちゃんが……いない世界で、生きていけない……」
リビングの隅っこ、ティッシュの山に埋もれていた娘・燈(7)は、ひとりで悲劇のヒロイン中だった。
「おーい、あかり〜。お土産あるぞ〜?」
「いらない……この世に希望なんてない……」
「……っしゃ、出番だ。行ってこい、スーパーぬいぐるみちゃん」
銀時は袋からおにぎりまるぬいぐるみ(Mサイズ)をそっと取り出し、ティッシュ山の前にそっと置いた。
「……えっ」
目がまんまるになる。
「おにぎりちゃんが……転生してる……っ!?」
「転生とか言うな、切なくなるだろ……」
「パパっ!! だいすきっ!! これ、お嫁さんにする!!!」
「それ俺の立場どこ行ったァァァァ!?」
■土方家編
玄関を開ける音と同時に、ドドドドッと足音。
「パパーーーっ!! もしかして、買ってきてくれたの!? え!? 買った!? え!? 買ってない!? わからない!? パパ、顔が罪人みたい!!」
「うるせェ、落ち着け。ほら、これだよ……」
静かに差し出される紙袋。
その中から現れた、おにぎりまるぬいぐるみ(限定イオン版・おむすび模様のほっぺつき)。
「…………」
「…………」
「……うっ……うああああああん!!!!」
「うお、泣くのかよ!!」
「パパ……パパが……買ってきてくれたぁぁぁ!! しんだおにぎりまるが、かえってきたのぉぉぉ!!」
「買ったのは新品だ、別人だろそれは」
「でも! でもっ! この子はきっと、前世の記憶を持ってるの……!」
「たまごっちに転生理論やめろォォ!!」
■高杉家編
静かな帰宅。扉を閉める音ひとつ、足音すらほとんど響かない。
リビングには、折り紙を折りながら小さく歌う紫苑(7)の姿。
「……ぱぱ、おかえり」
「ん」
「どうだった? たまごっちいた……?」
高杉は、何も言わず紙袋をテーブルに置く。
そこからそっと顔を出すおにぎりまるぬいぐるみ(和柄バージョン)。
「……っ!」
ぱぁぁっと笑顔になる娘。
「いた……!! ほんとにいたんだぁ……!」
「たまごっちは……袖の中では生きられねェ。自由にしてやれ」
「袖の中……? ……ふふっ、へんなの」
ぬいぐるみを抱きしめて、紫苑は一言。
「ぱぱ、だいすき。おにぎりまるも、ぱぱも、ぜったい死なせない」
「……俺が死ぬフラグ立てんな」
エピローグ:三人の父たち in 居酒屋
銀時「買ったぬいぐるみにプロポーズされたんだけど、どうすんのこれ」
土方「『転生』とか『前世の記憶ある』とか言い出して、育児より重ェ」
高杉「……袖の中の命、軽く見てた……反省してる」
三人、酒が進む夜。
三つの電子音が重なる。
「お世話は控えめに……」
「死んじまう前にお世話を……」
「どれだけしたら気が済むんだ……」
無骨な手が、小さい命をお世話する。
その手はぎこちない。
しかしその胸ポケットには、それぞれの娘が描いたおにぎりまるのイラストがきちんと大事にしまわれていた。
ピルピルピルピルピルピル!!!!!
銀時のたまごっちが突然爆音。
「誰だ音量MAXにしたのォォォ!!」
「てめェだ」
「……静かに育てろ」
「んなこと言われても、育児は戦争だろーが…………あ」
「あ」
「あ」
三人、無言。
銀時、冷や汗ダラダラ。
銀時の肩をぽんと叩く二人。
「……まァ、頑張れや」
「土下座確定だな」
「なんで俺のだけこんな……!! マジでたまごっち、わけわかんねー……!!」
