父性、ログインしました
致命傷
かぶき町・公園。
燈・小春・紫苑がブランコと砂場で遊んでいる。
少し離れたベンチには隊服で腕を組む土方十四郎、隣でだらっと座る坂田銀時がいる。
土方がぽつりと言う。
「……お前、暇人か」
銀時、即反応。
「暇人じゃありませんー! ちゃんとガキどもの面倒みているだろーが!」
「昼間から公園でだらけてる男の台詞じゃねェな」
「保護者だよ保護者!」
燈が二人の元に走ってくる。
「なに話してるの?」
「パパは暇人じゃないよな!?」
燈は迷いなく言う。
「うん!」
銀時、勝ち誇る。
「ほら見ろ!」
「パパは暇人じゃないよ!」
「だろ?」
燈、にこっと続ける。
「お仕事ないだけだもん!」
沈黙。
風が悲しく吹く。
銀時、固まる。
「…………」
「…………」
土方、口元が震える。
「…………くっ」
耐える。が、無理。
「ははっ……!」
失笑して肩が揺れる。
銀時「違う!! ないんじゃなくて、今はないだけ!!」
燈「? それ、ないってこと?」
銀時「言い方ァ!!」
小春が近づく。
「……パパは忙しいよ?」
土方「当然だ」
紫苑も来る。
「……パパも、忙しい」
銀時、必死で言い訳をする。
「万事屋はな! 依頼が来たら超忙しいんだよ!」
土方「来てねェだろ」
銀時「うるせェ!!」
燈は首を傾げる。
「でもパパ、いまはヒマでしょ?」
銀時、胸を押さえる。
「ぐはっ」
土方「致命傷だな」
燈が銀時の手を引く。
「でもね、ヒマでもいいよ」
銀時「……え?」
「パパと遊べるから」
土方の笑いが、ぴたりと止まる。
銀時、ゆっくり顔を上げる。
燈、笑顔。
「ヒマでよかった」
銀時、少しだけ鼻をすする。
「……暇じゃねェ。今は、優先順位が違うだけだ」
土方「急にカッコつけるな」
燈はもう一度言う。
「パパはヒマじゃないよ。わたしといるんだもん」
銀時、土方に向かってドヤ顔をする。
「聞いたか、副長殿?」
土方「…………」
小さく息を吐く。
「……まあ、悪くねェな」
副長の失笑は少しだけ優しかった。
さっきまでの会話で、一度は立ち直りかけた坂田銀時。
燈が無邪気に続ける。
「でもね」
銀時「ん?」
「ママは忙しそうだったねー」
沈黙。
風が止まる。
銀時「…………は?」
燈は砂をいじりながら。
「お店もあるし、おうちのこともあるし、ママいそがしそう」
土方の肩がぴくりと反応し、口元が上がる。
「ほう」
銀時「いや待て。ママが忙しいのはだな、役割分担というか」
燈「パパは公園いたよ?」
銀時「ぐはっ」
小春、真顔で補足。
「……今日、パパは仕事」
土方「当然だ」
紫苑も静かに。
「……パパは、会議」
燈、きょとん。
「パパは?」
銀時「…………」
土方、わざとらしく。
「暇人じゃねェか」
銀時「うるせェ!!」
燈は少し考える。
「でも」
銀時、わずかな希望。
「でも?」
「パパは、いっしょにいてくれた」
銀時「……!」
「だから、いい」
土方、鼻で笑う。
「最初からそれ言え」
銀時「お前が煽るからだろ!!」
燈は銀時の手を握る。
「ママは忙しい。パパはいっしょ。どっちも、だいじ」
銀時、完全に黙る。
土方、小さく息を吐く。
「……まあ、役割ってやつだな」
銀時は、少しだけ空を見上げる。
(……そうだな。俺は今、ここにいる)
仕事がなくても、忙しくなくても、娘と一緒にいる。
それは負けじゃない。
だが、燈が最後に言う。
「でもパパ」
銀時「まだあるの!?」
「お仕事も、ちょっとはがんばってね?」
銀時、完全に沈む。
土方、声を出して笑う。
「ははっ」
その日、銀時は学んだ。
子どもの言葉は無邪気で鋭い。
そして二段目は、だいたい致命傷。
