父性、ログインしました



ショー開始前、すでに負けている


イオン。
特設ステージ前。

きらきらした装飾。
子どもたちの歓声。
流れるプリキュアのテーマ。

燈にねだられ家族で来ることになった銀時は、なぜか一人で座っていた。

理由は単純。

「トイレ行こっか」
という妻の一言で、燈は連れて行かれた。

そして今。

銀時の両腕には、
・プリキュアのバッグ
・プリキュアのぬいぐるみ
・光るスティック
が、フル装備。


銀時(……俺、今どの層に見えてんだ)

周囲は、母+子ども or 父+子ども。

父+プリキュアグッズだけという孤立状態。

銀時「…………」
(やべェ。一人でショー見にきているオタクに見えてんじゃねェの、これ)

そのとき。

視界の端に、見覚えのある地獄。

少し離れた場所。

・土方 → プリキュアのリュックを両手で保持
・高杉 → ハート型ペンライトを無言で握る

完全に取り残された男たち。

銀時「………………」
(あ、仲間いた)

銀時、即近寄る。

「おいおいおい。なんだよその絵面」

土方「……言うな」

高杉「……見るな」

銀時、にやっとする。

「副長さんよォ。そのリュック、背負わないの?」

土方「殺すぞ」

銀時「総督様は? そのペンライト、振る練習してんの?」

高杉「……必要とあらばな」

土方、すぐ反撃。

「てめェも、ぬいぐるみ持ちはどう考えてもガチ勢の父親だろ」

銀時「違ェよ! これは一時預かりだ!!」

高杉、淡々と追撃。

「……どいつもこいつも、娘のトイレ待ちでこの有様か」

銀時「お前が言うな」

土方「お前もだ」

三人、一瞬だけ黙る。

──気づいてしまった。

……全部、自分に刺さっていることに。

銀時(……俺、嬉々として来たな)

土方(……グッズ選ぶの、割と真剣だった)

高杉(……ペンライト、光るか確認した)

銀時「……なあ」

土方「……なんだ」

銀時「俺たちさ、もう戻れねェな」

土方「……ああ」

高杉「……今さらだ」

その瞬間。

戻ってくる母たち+娘たち。

燈「パパー!」

小春「待たせてごめん」

紫苑「……ありがとう」

三人の娘が当然のように、グッズを受け取る。

その仕草が、あまりにも自然で。

銀時妻が銀時を見る。

「……楽しそうね」

銀時「楽しくねェよ!!」

土方の妻「副長、似合ってたわよ」

土方「聞いてねェ」

高杉の妻「……ちゃんと持ってたのね」

高杉「……ああ」

ショー開始のアナウンス。

三人の父親は、娘の隣に座る。

プリキュアが登場すると娘たち、目を輝かせる。

燈「パパ! あれ!」

銀時「おう!」

小春「すごいね」

土方「……ああ」

紫苑「……きれい」

高杉「……そうだな」

数分後。

銀時、ぽつり。

「……なあ」

土方「……?」

「さっきのダメージ、何だったんだろうな」

土方「……自爆だ」

高杉「……父親補正だ」

三人、静かに前を見る。

ステージの光。

娘の笑顔。

心のダメージ?
確かにある。

だが、回復量の方が圧倒的にデカい。

そして三人は思う。

(……次は、どこまで連れて行かれるんだ)

プリキュアショーは、始まったばかりだった。
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