安心して失敗できる人
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どうして、パパなのか
午後。
一息ついた頃。
三人の母が、湯のみやコーヒーを手にして集まっていた。
最初に口を開いたのは、銀時妻。
「……ねえ。最近さ。なんであの子たち、パパの髪の毛ばっかりアレンジしたがるのかしら」
土方の妻、即うなずく。
「それ、思ってた。ママの方が髪長いし、やりやすいのに」
高杉の妻も、少し考えてから言う。
「……しかも、断らないのよね」
三人、顔を見合わせる。
銀時妻が、指先で湯のみを回しながら言う。
「ママにやるとね、おしゃれになるの。失敗したら直しちゃうし」
土方の妻「分かる。完成形が、ちゃんときれいになる」
高杉の妻「……ゴールがある」
「そうそう」
銀時妻は少し笑って続ける。
「でもパパだと、どうやっても正解がない」
土方の妻、はっとする。
「……ああ。多少ぐちゃっとしても、左右違っても、笑ってくれる。怒らない。外さない」
銀時妻「そう」
高杉の妻は、静かに付け足す。
「……失敗しても、楽しかったで終わる」
三人、納得の沈黙。
銀時の妻が、ぽつりと言う。
「つまりさ。練習台じゃなくて、安心台なのよね」
土方の妻「……ああ」
高杉の妻「……それだわ」
少し間を置いて。
土方の妻が、苦笑いで言う。
「しかもあの人たち『今日はパパにやりたい気分』って言われたら、全部飲み込む」
銀時の妻「誇らしげにね」
高杉の妻「……光栄だと思ってる」
三人、思わず笑う。
銀時の妻が、少しだけ優しい声になる。
「……あの子たち、一番失敗していい相手をちゃんと分かってるのよ」
土方の妻「それって……信頼、よね」
高杉の妻は、小さく頷いた。
「……一番、甘えてる」
その結論に、誰も異論はなかった。
かわいいヘアゴムも、歪なヘアピンも、
全部──
「ここなら大丈夫」
の証。
そして今日もまた。
父親たちは何も知らない顔で、髪をいじられている。
だが母たちは知っている。
それが、一番の信頼表現だということを。
