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ジャンルが違う
万事屋の居間。
銀時は、ちゃぶ台の前に正座させられていた。
──理由。
燈の手にはカラフルなヘアゴムと、ハートや星のついたヘアピン。
「パパ、じっとして」
「……はい」
すでに頭の左右には、明らかにかわいい色のピン。
前髪(と言っていいのか分からない毛束)が、きっちり留められている。
銀時「……なあ、あかりさん」
燈「なあに?」
銀時はできるだけ優しく、しかし必死に言った。
「こういうのさ、パパよりママの方が似合うと思うんだけど」
燈の手が止まる。
(来た)
「ママの方が髪の毛長いしさ。ほら、いろいろアレンジできるし」
「…………」
「だから、そっちに──」
燈、即答。
「ママは、ジャンルが違うから」
銀時「………………」
ジャンル、と頭の中で繰り返す。
銀時「……ジャンル?」
燈は真剣な顔で説明する。
「ママはね」
一本、指を立てる。
「きれい」
二本目。
「おとな」
三本目。
「しゅっとしてる」
「…………」
「パパはね」
銀時、嫌な予感。
「かわいい担当」
銀時「誰がだよ!!」
燈は首を傾げる。
「だって」
ヘアゴムを、銀時の頭にきゅっと留めながら。
「ママにこれつけたらおしゃれだけど、パパにつけると」
一拍。
「たのしい」
銀時「褒めてねェだろそれ!!」
燈は満足そうに鏡を差し出す。
「ほら」
鏡の中には──
・左右非対称のヘアピン
・謎のちょんまげ風アレンジ
・完全に遊ばれている銀時
「…………」
銀時、しばらく無言。
「……あかりさん」
「なあに?」
「パパ、そのジャンルで生きてくの?」
燈、にこっと笑う。
「うん!」
即答。
その瞬間、背後から声。
「……楽しそうね」
銀時妻が湯のみを持って立っていた。
燈が振り向く。
「ママはダメだよ!」
「え?」
「ママは、ジャンルちがうから!」
餡子は一瞬きょとんとしてから、くすっと笑う。
「……そっか」
銀時「納得すんな!!」
銀時妻は、鏡の中の銀時を見て言う。
「でも」
「……?」
「似合ってるわよ」
銀時「どの方向で!?」
燈は銀時の頭をぎゅっと抱く。
「パパはね、わたしの、いちばんかわいいの」
銀時「…………」
反論、不能。
その日。
銀時はしばらくヘアピンを外せなかった。
理由?
燈が言ったからだ。
「おうちの中なら、いいでしょ?」
────そう。
かわいい担当は、家の中限定で成立する。
そして銀時は、今日もその役目を全力で引き受けている。
