キラキラはまだ早い、でもダメじゃない
おしゃれごっこ(被害者:父)
夜。坂田家の居間。
ちゃぶ台の上には、
・子ども用ネイルシール
・キラキラのシール台紙
・ぬいぐるみ(おにぎりまる)
・なぜかヘアゴム
完全に女子の戦場が展開されていた。
銀時はその端っこで胡坐をかきながら「巻き込まれないようにしよう」と思っていた。
────思っていた。
「パパ」
「ん?」
嫌な予感しかしない呼び方。
燈が満面の笑みで近づいてくる。
手にはネイルシール。
「おしゃれごっこ、しよ!」
「…………」
銀時、ゆっくりと視線を逸らす。
「いや、あのな、パパはもう十分おしゃれだから」
「だめ!」
即却下。
「パパ、さっき『大人になったらキラキラしていい』って言ったでしょ!」
「言ったけど! それはあかりが、だ!! パパは今も未来もキラキラ予定ねェ!!」
燈は腕を組み、じっと銀時を見つめる。
燈「……一回だけ」
「…………」
燈「一回だけ、見るだけ」
(見るだけで済んだ試しがあるか……?)
銀時、敗北を悟る。
「……一本だけな? 小指一本。それ以上は国家反逆罪だ」
「やったー!」
即座に捕獲。
処刑開始
燈は銀時の左手を取り、
真剣な顔でシールを選び始める。
「これはダメ……これはかわいすぎ……これはパパに似合わない……」
「おい、選別基準が辛辣すぎんだろ」
最終的に選ばれたのは、控えめだけどちゃんとキラキラしてるハートのシール。
「これにする」
「……なんか……一番逃げ道のないやつじゃね?」
燈は慎重に、銀時の小指の爪にシールを貼る。
ぺた。
完成。
「…………」
「…………」
銀時、手を掲げる。
「……なァ」
「なに?」
「これ、どう見てもパパが夜職やってる人じゃね?」
「かっこいいよ!」
「フォローになってねェ!!」
燈は満足そうにうなずく。
「これでパパもプリンセス」
「どんな世界線だよ」
そこへ、ひょいと顔を出す銀時妻。
「なにしてるの?」
銀時「聞くな!! 見れば分かるけど!!」
銀時妻は銀時の指先を見て、一瞬だけ目を瞬かせ──
「……あら」
(終わった)
「かわいいじゃない」
「!?!?」
銀時「お前まで裏切るの!?」
銀時妻はくすっと笑う。
「ちゃんと控えめだし。燈、上手に選んだわね」
「でしょ!」
銀時「ちょっと待て!! この家、俺をどうしたいの!?」
銀時妻は銀時の手を取って、静かに言った。
「外には出ないでね」
「そこは最低限の慈悲かよ!!」
その夜。
銀時は風呂に入る前、ネイルシールを剥がそうとして少しだけ手を止めた。
燈が言った言葉を思い出す。
『パパ、キラキラしてもいいんだよ』
「…………」
結局、その日は剥がさなかった。
翌朝。
「パパ、そのままなの?」
「……一晩だけな」
「やった!」
銀時は、ちょっとだけ照れくさそうに言った。
「……おしゃれってのも、悪くねぇな」
