パパとたまごっちと、取り返しのつかない成長
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さらば、たまごっち──副長、失態の巻
土方家。午前八時。
「パパ、お願い! 今日はおにぎりまるの面倒みてて!」
娘・小春(こはる・7歳)は、ランドセルを背負いながら、キラキラシールで装飾されたたまごっちを土方に差し出した。
「……またか。今日も忙しいんだぞ」
「だって、パパが一番信頼できるもんっ」
「……チッ。しょうがねぇな。昼の巡回終わったら確認してやる」
小春は満面の笑みで「いってきます!」と手を振り、颯爽と玄関を出て行った。
その背中を見送りながら、土方は深くタバコをふかした。
(……たかがゲーム。たまごっちの一匹ぐらい、死なせるわけねェだろ)
彼はそう思っていた。
──その時までは。
──そして、夕方。
「ただいま〜〜〜っ!」
明るい声とともに、小春が元気に帰宅。靴を脱ぎ捨て、ダッシュでリビングに駆け込み、たまごっちを手に取った。
そして──その瞬間。
「た゛ま゛ご゛っ゛ち゛、し゛ん゛じ゛ゃ゛っ゛た゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
リビングに響き渡る絶叫。
土方は、廊下にいた足を止めて顔をしかめた。
「……嘘だろ……?」
部屋に入ると、泣きじゃくる娘と、黒いドクロマークを浮かべた画面のたまごっちが迎えてきた。
画面には「さようなら おにぎりまるちゃん」と虚しいメッセージが。
(……昼からずっと、会議と隊士の始末書の確認に追われて……すっかり……)
土方の額に脂汗がにじむ。手が自然と頭の後ろに回る。
「……悪ィ、小春……パパ、今日ちょっとだけ忙しくて……ほんの少しだけ、目ェ離してたら……」
「や゛ーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
「うわ、ちょ、待っ──っ! 泣くな、パパが悪かった! でも、な? パパ、ほんとに反省してっから! もう一回、一緒に育てよう! な?」
「パパなんか、しんだおにぎりまるのきもち、わかってない!! ばかぁああああああ!!!!」
「いや、ばか言うな! おにぎりまるの気持ちは俺だって! ちょっとは!!」
「パパに世話させたのがまちがいだったのぉぉぉぉ!!!!」
「ぐっ……!」
──副長、沈黙。
たまごっちひとつで、7歳児からの信頼が大暴落中である。
「今から! おにぎりまるのおはか、つくる!!!」
「……わかった。作ろう。パパ、スコップ持ってくる」
「いらない!!!!」
「パパ、ついにこの家で土にも触れさせてもらえねぇ……」
娘の涙と、たまごっちの死に黙祷を捧げながら、土方はタバコに火をつけた。
(たまごっち……お前……ちょっとだけ、俺の中の家族だったのに……)
──その夜、机の上には新品のたまごっちと、
「マジで反省してます(パパより)」と書かれたメモとオムライス(ケチャップで「こはるだいすき」)が置かれていた。
返事は──まだ、ない。
