キラキラはまだ早い、でもダメじゃない
それは大人用だと何度言えば
イオン・ファンシーショップ。
パステルの洪水の中、銀時はすでに半分魂を置いてきていた。
もうシールも買った。
ぬいぐるみも見た。
あとは帰るだけ──の、はずだった。
「パパ、これ欲しい✨」
その一言で、すべてが崩れた。
燈が差し出してきたのは、明らかに大人の爪サイズのネイルチップ。
ストーン盛り盛り、ラメぎらっぎら、爪先鋭利。
(……いや……これは……)
銀時、固まる。
「え、え〜っと……あかりさん?」
「なに?」
「それ……でかくね?」
「キラキラしてる!」
「キラキラしてるけども!! それ、爪が凶器になるタイプのやつだから!!」
燈は首を傾げる。
「かわいいでしょ?」
「かわいいけど!! それ付けたら、日常生活に攻撃判定つくから!!」
銀時、必死の方向転換を図る。
「ほら、こっちどう? マイメロちゃんいるよ? ピンクだよ? あかりちゃん専用って書いてあるよ?」
「や!」
即答。
「キラキラしたやつがいいの!」
「いやでもな、これ……見て? 対象年齢15歳以上って書いてある」
「15さいになったら使う!」
「今は7歳だよ!? 未来予約すな!!」
燈はネイルチップを胸に抱きしめ、動かない。
「これがいいの。だって、プリンセスみたい」
銀時、ぐっと言葉に詰まる。
(……くっ……プリンセスとか言われると弱ェんだよ俺……)
「……でもなぁ……これ付けたら、鉛筆持てねェし、トイレ行くたびに人生賭けることになるし……」
「じゃあ、つけないで見るだけにする!」
「それはそれで地獄だろ!!」
しばらくの沈黙。
周囲の店員と親子が、ちらちらと様子をうかがっている。
銀時、最終手段に出る。
「……あのな、あかり」
「なに?」
「それ、大人の爪用だから……パパが付けるやつなんだよ」
燈「…………」
燈、すんっと無表情になる。
燈「……………………」
燈、銀時の手を見る。
「…………パパが?」
「……そうだな」
「…………」
数秒の沈黙のあと。
燈は、すっとネイルチップを棚に戻した。
「……やっぱ、やめる」
「え!? あ、あっさり!?」
「パパがキラキラになるの、ちょっとやだから」
「それはそれで複雑!!」
そして燈は、子ども用の控えめにキラキラしたネイルシールを手に取った。
「これでいい」
「……最初からそれにして?」
「でも、あれはあこがれだったの」
銀時は、苦笑して頭をぽんと撫でた。
「……大人になったらな。そのときは、パパがまた一緒に来てやるよ」
「ほんと?」
「ほんと」
レジに向かう途中、銀時は心の中でつぶやく。
(……しかし、これ……将来、化粧品売り場で戦う未来が見える……)
イオンは今日も平和だった。
ただし父親の覚悟は一段階、更新された。
