甘ったるい地獄



バレンタイン後遺症



夜。
かぶき町の、いつもの居酒屋。

カウンターに並ぶ三人。

・坂田銀時
・土方十四郎
・高杉晋助


全員、どこか顔色が悪い。


銀時「……まず言わせろ」

土方「…………」

高杉「…………」

銀時「平成女児チョコは、武器だ」

土方、静かに頷く。

「……甘さの概念が違う」

高杉「……量の概念もな」

銀時「お前、全部食ったんだろ」

高杉「……ワンホール」

土方「……正気か」

高杉「……父親だ」

銀時「それ言われると何も言えねェ」


【それぞれの戦果報告】

土方「……うちは、コーヒー常備でどうにかした」

銀時「理解ある奥さん最高だな」

土方「……翌日、胃が重かった」

銀時「だろうな」

高杉「……俺は、静かに胃薬を飲んだ」

銀時「無言で?」

高杉「……無言で」

土方「……それが一番怖ェ」


銀時は、酒を一口飲んで言う。

「……でもよ。正直、食わなきゃよかったとは思ってねェ」

土方「……ああ」

高杉「……同意する」

銀時「甘さが限界突破してても、口ん中がジャリジャリしてても……娘が作ったってだけで、別枠になるんだよな」

土方「……胃と心は、別の臓器だ」

高杉「……名言だな」


【父親としての敗北点】

土方「……俺、甘いの苦手って一瞬思い出した」

銀時「思い出すな」

高杉「……思い出した時点で負けだ」

銀時「そう。父娘のバレンタインはな、味覚を捨てる行事だ」

土方「……来年も来るぞ」

銀時「……ああ」

高杉「……覚悟はしている」


【結論】

しばらく沈黙。

銀時が、ぽつり。

「……あいつら、来年も作る気満々だったぞ」

土方「……うちもだ」

高杉「……サイズは考えさせる」

銀時「それでも増える気がする」

土方「……成長してるからな」

三人、同時にため息。

だが、誰も後悔していない。

銀時「……なァ。胃はつらいし、正直もう若くねェけどよ……こういうの、一生続いてほしいって思っちまった」

土方「……ああ」

高杉「……同意する」

土方がグラスを上げる。

「……娘に」

高杉も静かに上げる。

「……成長に」

銀時は少し照れたように。

「……と、次の胃薬に」

カチン、と音がする。


その夜、三人は知った。

父親という生き物は愛を理由に、平気で身体を張る。

そして──
それを、やめる気は一切ない。

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