パステルの中で、父は戦う
かつて、彼女たちも戦場にいた
【坂田家】
銀時 × 銀時妻 × 燈
夕方、リビング。
燈はシール帳を開いて「見て見て!」「これは交渉成功の戦利品!」「これが神(ぷっくりver.)」とドヤっている。
それを見守りつつ、台所から妻がくすりと笑った。
「ふふ……懐かしいわね。私も昔、やってたのよ。シール交換」
「へぇ、お前も?」
銀時がソファーにもたれてお茶をすする。
「キラキラのリボンシールとか、サン○オ系が人気で……『これは3枚分の価値がある』とか言いながら、友達同士でまるで市場みたいにね」
「……お前もやってたんだ、そういう交渉ごと」
「ええ。わりと容赦なくね。詐欺スレスレだったって後から思うわ」
「怖ッ」
妻は微笑みながら、燈の横に腰を下ろす。
「でも、こうして子どもが同じようなことしてるのを見ると、なんだかあの頃の気持ち、思い出しちゃうのよね」
「……俺は今、あの頃の女子たちがどんな修羅場を生きてたか、ようやく実感してるとこだわ……」
「大丈夫よ。パパの選んだエンジェるん、ちゃんと神だったらしいから」
「……うおぉ、なんか誇らしい気持ちになってきた……!」
「あのね、パパはね、エンジェるんの奇跡を起こしたの!」
「ふふふ。さすが、うちの娘のパパね」
【土方家】
土方 × 土方妻 × 小春
食後、ソファでくつろぐ土方。
膝の上には『しょだい』と、貼られたばかりのティアらりんシール。
小春は得意気にしょだい装飾マップを描いている。
妻が、コーヒー片手にふっと笑う。
「……ふふ。そういえば私も小学生のときシール帳、すっごい大事にしてたなぁ」
「え、マジか。お前が?」
「そうよ。『コリスのふうせん日記シリーズ』とか、貼れなくてずっと未使用のまま保存してたの」
「……なんか……お前にもそういう時代があったんだな……」
「え、何? 私ずっと戦国時代から生きてたとでも?」
「いや、なんつーか……母親になると、そういうイメージ薄れてくんだよ」
妻は笑いながら、しょだいをツンと突いた。
「しょだいの装飾、次はシールよりも刺繍ってどう? パパにやらせてみるとか」
「おいおいおいおい!?」
「いいねぇ〜〜〜!! しょだい、刺繍似合いそう〜〜〜!!」
「ちょ、やめろ! 無言でお裁縫始める副長とか、誰得だよッ!!」
「……でもね、小春。パパが買ってきてくれたシール、ママもちょっと羨ましかったよ」
「えへへ、じゃあ今度、交渉してあげる!」
「……パパが手に入れたのに、家族内で交渉生まれんのかよ……」
【高杉家】
高杉 × 高杉妻 × 紫苑
夜、紫苑はおにぎりまるとねこたんの間に挟まれて就寝中。
静かなリビングで、お茶を注いだ妻がふと微笑む。
「紫苑、すごく嬉しそうだったわね。ねこたん、ずっと抱きしめてた」
「……ああ」
「……私もね、昔は『キャンディうさぎ』っていうキャラのシール、大事にしてたの。交換するとき、緊張して3分くらい喋れなかった」
「……へぇ。想像つかねェな、お前が黙るなんて」
「ふふ。今も言葉少なめだけど、娘が嬉しいなら私も嬉しいって気持ちは……子どものころと、変わらないかも」
「……そっか」
彼女はそっと、紫苑の眠る布団を見やった。
「でも……まさか、あの高杉晋助がファンシーショップでねこたんを選ぶ日がくるとはね」
「言うな。心折れかけた」
「ううん。あなたが勇者って呼ばれてるの、私はちょっと好きよ」
「……マジでやめろ、照れるだろうが」
「ふふ。……勇者パパ、またよろしくね」
夜の静けさのなか、ほんの少しだけ、
高杉の口元が、ほころんだ。
