カメラ2/6



借り物競走の疲れが残っていたのか、体育館に着く頃にはゼェゼェ息が切れていた。

俺の体力の無さ！

情け無さを嘆きつつカメラを設置しているらしき場所に向かう。
当然というか。
生徒はおろか、先生の姿さえも周囲に見当たらなかった。

遠くに聞こえる放送部の声をBGMに体育館に入り、舞台裏の扉に耳を当てて音が聞こえない事を確認。鍵はかかっていないらしく、ノブを捻ると素直に開き、音を立てない様にゆっくりそのまま扉を押した。

突然誰かが飛び出してくる、なんてこともなく一息付く。

覗き込むと、バスケ部やバレー部などの道具が所狭しと置かれており、人影ひとつ見当たらなかった。

やっぱり、ここはハズレだったか。

誰も居なかったことに息を吐いたが、正直なところその6割は安心からだった。
そのまま中に入り、念の為に奥まで行って見回した。
とりあえず、カメラだ。
上をゆっくり見ていく。

あった。
場所は、入った扉の真上にあった。
四角く小型なそれは、何かでぶつけられたのか無惨にも首が折れ曲がってカメラの部分がぶら下がっていた。

あ〜あ〜備品が…。
何円するのは知らないが合掌。
ただ、あのやり方からして壊すのはすぐに済むことが分かった。ボールを投げるでも、棒でも届く高さだ。
袖を口元に持っていく。

「えっと、柴です。体育館のカメラ発見。壊れてた。設置場所的にもすぐに壊せたと思う。それと、予想通りここは誰もいなかった」

簡単に報告をしたものの、誰からの返事も無く内心首を捻る。
聞こえてないとかか？

ひとまず、もうここに用は無いのが分かったので扉を捻り体育館の舞台に戻る。
息も整ったため、校舎に向かうかと駆け出すとイヤホンから音が聞こえた。

『オッケー。うーたんありがと、とりあえず新校舎に向かって欲しいナ。それから、念の為に風紀に連絡するのは校舎についてからネ』

小声に聞こえるそれに「分かった」と返事を返した。
体育館から出ると同時に通信を終え、走りながら考える。

加賀屋先輩はまだカメラの場所についてないらしい。
惶からは返事が無かったし、連絡も無い。
まだ着いてないのか？
それとも、問題があった…？

過ぎる時間に不安が募ったが、いや、と思い直す。
惶なら大丈夫だ。
それより早く2人を見つけねえと。

校舎を向かう途中プールの前を通る。
まだ授業は無いが、水泳部が使っているため綺麗に見える。
そのまま走り抜け、校舎に入ろうとしたところで校舎の3階から吊り下げられている、部活動での優勝が記載された数枚の垂れ幕が目に入った。
そのうちの１つが丸めて止められていたことに不思議に思う。

記録に問題でもあったのか？
って、今は関係無かった。

校舎に着き風紀に連絡するために携帯を操作して耳に当てる。
コール音が１つ鳴り、繋がった。

『柴さん？大丈夫ですか』
「はい。大丈夫です。体育館は何もありませんでした」
『そうですか…。』

カメラが壊れていたことを告げると、舌打ちと共に小さな声で『高ェのに…』と聞こえた。
うわ…やっぱ高えんだ…。

『ありがとうございます。分かりました。……そうですね。そのまま次は加賀屋さんの方に向かっていただければ助かります。まだ連絡が無いので、加賀屋さんと合流できたら連絡の程お願いします』
「はい。分かりました」
電話を切り、上を見る。



階段の途中で立ち止まっていたところからまた上を目指した。