土器土器体育祭

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誰かが何かをまだ企んでいることを知っているらしい加賀屋先輩。そこで、と両手を合わせて乾いた音を鳴らした。

「学園の平和を守る風紀委員長に頼みがありまして!人員を1人…いや2人は貸してほしくてサ!」
それを聞いて口元に手を添える塩島委員長。
「…話によります。人員にも。」
「詳しい話は言えないよ〜、何がどう漏れるか分からないから。ただ、体育祭でその計画は動く」

態度を変えることをしない加賀屋先輩。
「それと、人員に関しては、」そう区切って、何故か俺の方を見た。

「うーたんと、狼谷くん」
俺?
戸惑って加賀屋先輩と塩島委員長を交互に見た。

「柴さんはまだ風紀委員ではありませんよ」アドバイザーという形ではありますが。そう言った塩島委員長。
あれ有効なのか…。

「それに彼は生徒会で忙しいでしょうから難しいと思いますが」
その言葉に内心ギクッとする。
加賀屋先輩が人差し指を立てて左右に大袈裟に振る。

「それがねぇ〜」
あっやめろ。
「実は最近生徒会活動をサボってたメンバーが生徒会に帰ってきて、うーたんはつい最近免除になったのである!」
「……へぇ…。そうだったんですか…。」
切れ目な瞳に鋭さを込めてこちらを流し見てくるブリザード先輩から目を逸らす。

いや、その、言うタイミング無いっていうか、自然解消待ちしてたというか…。言えるわけがないのでそのまま目を泳がしていた。今25mプール往復してる。

「まぁ良いでしょう。問題があるまで彼にはまだ出番は無いかと思いますので。ただ、……今更か。狼谷を貸すのにそう簡単に頷く訳にはいきませんよ。彼の腕っ節は風紀にとって必要な戦力なので」
出番ありませんように…。
そう願った後、惶が塩島委員長から期待を寄せられていることに少し誇らしくなった。Zクラスの時期リーダー候補なんだもんな。部屋でスウェット姿のままだらけている姿しか見てないけど、問題児をいなす実力を風紀委員長から信頼されてるのは誇らしいものがある。ただの同室者ってだけで勝手な話だが。

「モチロンわかってるよ!狼谷くんに関しては、ボクらが計画に関して大方の算段がついた時に1番に優先して参戦してほしいってコト!」
「………。ハァ。分かりました、その時の場合にはよりますが。それから、その計画とやらが判明したら私達風紀にもある程度は話してくださいね」
眼鏡のブリッジの位置を直して渋々頷いた。

話は落ち着いたようだったが、意外な人が挙手した。

「あの…柴は絶対必要なんすか?危ないことはおれ反対しますけど」
さっきまでカントリーマアムを貪っていた上野だった。真剣な顔で加賀屋先輩をじっと見ている。口の端についた食べカスが真剣な顔の邪魔をしていたが、誰も指摘しなかった。

ってか、そうだ。俺に拒否権をくれ。上野と同じように加賀屋先輩の答えを待つ。

「必要」

端的に言った加賀屋先輩。さっきまでの軽い雰囲気よりは空気が締まって感じた。

「っでも、」
「そー、ただ、危ないことは絶対させないよ。うーたんに誓って」
俺に誓って。
食い下がった上野に被せるように加賀屋先輩は安心させるように緩い笑顔を見せた。

……。いや、だから俺の拒否権。
加賀屋先輩に小さく頷いた後、不貞腐れた様にもう一度お菓子に手を伸ばす上野。
なんでだよ粘れ。
どうして俺が必要なのか分からないが、俺も小さく挙手した。

「…あの、俺も惶…狼谷と同様に計画が分かってからで良いですか?」せめての譲歩。

俺と目を合わせて数回瞬きをした加賀屋先輩。逡巡すると、眼鏡の下の縁を押し上げてから口を緩ませた。

「うーたんは…多分、自分から聞くことになると思うけどぉ…そーね。今はそれでイイヨ!」
自分から…俺から、聞くことになる…?

どういうことだ?

その後すぐ予鈴が鳴った為、俺の疑問が晴れることはなくその場は解散となった。




「残ったカントリーマアムどうする?」
「燕食べる?」
「…貰っておきます」
「トッポは俺食べるね!」
「うーたんの食べかけとか無い?!無い?!!」
「あってもやるわけねえだろ出ろ」
「(狼谷惶って風紀なのか…。)」
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