中間テストですよ

良い話と悪い話は表裏一体だった件について



良い話と悪い話は表裏一体だった件について。

ラノベのタイトルにありそうなことを考えて現実逃避。

座るように促されたソファーから貼られた写真を見ていると、丸君と久々の再会の時のもの、惶と食堂でいた時のものもあったから、あの時ゾワッとした視線はこの人だったんだろう。
日常に潜む幽霊はお前か。

委員長の「次大騒ぎしたらあなたの持っていたカメラを踏み潰しますよ」という脅…説得で、先程までの気狂いっぷりは落ち着き、口枷だけは外されたチャラい見た目のストーカーを見やる。

深呼吸してる。
俺をガン見して。

「委員長」
「はい?」
「この人の息止めて貰えませんか」
「はははっ」
笑って済まそうとしないでください。
だってジップロックが無いから…。としょんぼりするのもやめてください。何一つ同情も同意も同調も理解も出来ない。
俺は今全身鳥肌だ。今の俺は鳥と言っても過言ではない。(分かってる。過言だ。)


あ…そうだ。
でも、この人のよくわからない行動のお陰で俺は助かることになるのか。

腕を摩っていてハタ、と気付いた。お礼がまだだった。

あの。と声を掛け、チャラい人に向き直った。深呼吸を止めてきょとんとした顔に変わる。

「…手詰まりでしたが、お陰で助かりました。本当にありがとうございました」
深く頭を下げた向こうからは「ふふ。いーんだよ」と落ち着いた穏やかな声が聞こえた。
本来はこういう人…なのかもしれない。
頭を上げた俺に委員長が声を掛けてきた。

「これの株を上げるつもりはありませんが……実は私も手詰まりだったんです。ですが、柴君がピンチだと知った彼から連絡がきて初めてあの写真の存在が分かりました。」

そうだったのか。
話だけでなく、事情を包み隠さない委員長に驚く。

「柴君も様々な部活に聞き込みに行ってましたよね?」
「はい」
「私も写真部と新聞部にはよくよく話を聞いてました。しかし、これは彼だけの独断行動で他の方々も一切知らなかったそうです。なので、」

一旦区切り、柔らかい表情になる委員長。

「…あなたのしてきたことは、決して努力不足や無駄なことではありませんよ。あなたが行動を起こしていたお陰で、これが私のところに来たのですから」
「……はい」
いつもの圧を感じる笑みではない、優しいものに居心地悪さを感じて視線を逸らしてしまう。

そこまで考えていた訳じゃない。けど、今まで駆けずり回ってきた割にあっさりと見つかったそれに、少し虚しさを感じたのは紛れも無い事実だった。

よく見てる。伊達に風紀として様々な生徒に関わってるだけのことはある、って事なんだろう。


内心感心していると、ああ。そういえば。と委員長が。
「これの紹介がまだでしたね」
「いえーい」
全然知りたくない。
縛られてなければダブルピースでもしていたであろう彼と反対に、顔を歪める俺なんて委員長が気に留める筈もなかった。

「彼は3年Bクラスの加賀屋 幸歩(カガヤ シア)、写真部部長で…あなたのストーカーですね」
そうですね。
「遂に…!認知されてしまった…!!嬉しいけど複雑!!それとボクのことは是非しーちゃんって呼んでね!!!!」
謹んでお断り致します。

「しーちゃん?」
委員長がスッとカメラを地べたに置いて加賀屋さんの方を見て笑んだ。うるさいぞ。という圧。
君じゃない、と言いかけて騒いですみませんでした!と加賀屋先輩。
机の上にカメラを置き直すのをただ眺めていると、思い出したかのように「あ。」と加賀屋先輩が声をあげた。
一体何を言い出すのか。チラリと視線を向けた。

「ねぇうーたん」
「な、なんでしょうか」
指名されてしまって恐怖。
再度口を開くのを待った。
「推しのイベント今日で終わりじゃなかったっけ?ストーリー解放した?」
推し。イベント。

あ。


「アッッッッ?!!!!」
急いで携帯のロックを解除してアプリを起動する。
そうだった!!!今日の14時まで!!!!ここ3日間、走り回ってクタクタになり、寝落ちの日々を送っていたからログボすら逃していた。

ロード画面に変わったのを見ていると視線を感じ、思わず目を泳がせる。
待てよ…ここは、今、どこにいる?
ハッと顔をあげて視線の元を辿ると、塩島風紀委員長。視線が合う。
そう。にっこりしたこの人は風紀委員会の委員長。つまり風紀のボス、ドン、首領。

手元を見ずにタプタプと画面を触ってログインボーナスを受け取った後、画面を暗くしてゆっくりとポケットに。視線は逸らせてない。さながら蛇と蛙だ。

やっぱ…一応授業中ではあるし、風紀委員長の前で触るのはあんま良くないよな〜!
にへ、と誤魔化し笑い。その顔を見て、やれやれと言わんばかりに委員長が息を吐いた。

「…良いですよ。全く、しょうがないですね」
え。
「……良いんですか?」
本当に?まじで?
「ええ。何やら大事なことみたいですし。用が済んだからといって、教室に戻って頂くにしても中途半端な時間ですから。ゆっくりしていくのが良いでしょう」

時間を見ると、授業が終わるまであと30分くらい。確かに。戻っても良いけど、授業の半分くらいになってるから今から内容を追うのも出来なくもないが少し面倒な時間。あと単純に途中入室は気後れする。教室に入った時の視線の集中具合怖いんだよな、あれ。
じゃあ、有り難く…。と俺が頭を少し下げたのを見ると、委員長は自身の席に向かった。





「柴くん、何か淹れましょうか」
「えっあっすみません、お気遣い無く…!」
「ボクは?ねえボクは???」
35/47ページ