秘密の先輩

雨の日その後



くっっそ、雨とかきいてねえ。もういっそサボるか?


いやでも俺ってば皆勤賞狙ってるしーーー


........あの後輩も少し、気になるし。





とか、言っちゃって!キャーーーーー!!!!!
俺ん中のラブコメがはしゃいでおるわ。ピチピチのピッチがな。

現実俺。
んなくっっっっっっそしょうもねー事でも考えないと、教室でライターカチカチしそうで結構やべーなう。

普通に姉貴がカレピッピ(失笑)と朝帰りしてこなかったら余裕で休んだわぼけ。

いっそサボるか?じゃねー。サボらせてください土下座しますんでついでに言うとWi-Fi付きで除湿した所で、だわ。湿気を含みやがった自分の髪が鬱陶しい。しかも長靴でも履いてくれば良かったって思うくらい靴下がぐっしょぐしょ。ふぁっきゅー水溜り。トラックの運ちゃんも同罪だコノヤロー。


クラスメイトの興味もねぇユーチューバーの話を聞き流し、改めて真剣に悩む。やばいな.......まじで2限までにはどっか避難場を確保しないと。1限目はいい。睡眠学習だから。もうこの際先生達にバレず雨風さえ凌げれば、そう考えた俺は、最終手段であり、最終候補を胸に夢の国へと旅立った。

ハローねずみちゃん、今朝ぶりだね。



我キンコンカンコンと校内に響く目覚ましで、なんか、良い感じの目覚めである。
このIQ.2みたいな思考力はきっと寝起きだからなんだぜ。

いつも通りのことだが、見渡すと広がる地平線。ここが日本のサバンナである。そうナレーションしたくなるくらいに、この時間は片手に収まる程の人数の真面目さんしか起きていない。怠慢、これ最近覚えた、そう、怠慢先生万歳。ユーチューブくんもぐっすり寝ている。お陰で、もう周りの目も気にせず移動ができるってもんだ。

目的地は勿論最終候補地。
あそこは賭けに近いけど、ま、何とかなるでしょ。



****

授業の始まるチャイムはまだ鳴っていない。......といっても、もう数分で鳴るけど。
大人しそうな生徒が数人慌ただしくしているのを横目に、本棚で光が遮られ薄暗くなっている隅の方へ向かった。本棚を背に、置いてあった椅子にもたれ掛かり、通りすがりに適当にチョイスした雑誌を顔に乗せて静かになるのを待つことにした。

暫くしてチャイムが鳴り、騒めいていた廊下も静まり返った。よしよし......。雑誌を顔から退かせ、そっと貸し出しの受付をしているカウンターの方を覗き見た。
カウンターには誰一人として人影は見当たらなかった。


よし!よーーーしよしよし!!喜びのあまり、雑誌を持っている手と反対の手でガッツポーズをとってしまった。冷静キャラの俺としたことが。恥ずかしい。静かに片手を元に戻した。

雨に見放され天に愛された俺。万歳。

それはさて置き、まず賭けのマイナス要素は2つあった。

1つ目。体育の授業のクラスが室内授業に切り替えた時。これは最早来た時にクリアだと理解。

最難関2つ目。実はこの学校の図書室には司書という概念が無い。いや多分居るのは居るけど、基本的にここの見張りをしてるのは国語の先生。先生の事情は知ったこっちゃねーので分からんけど、遭遇率は半々で不規則。その為、万が一先生がいた時の予防線として雑誌を顔に乗せていたのです。必殺、あっ寝過ごしてました〜!ボクってばお茶目っ!でゴリ押し作戦。

難点はセリフが棒読みになる事。


そんなわけで、俺の必殺技が繰り出される事なく無事避難所が確保できて何より。
これはもうヌルゲー。おヌルよ。再び椅子に座りなおして暫し休憩。5分くらいして圧倒的安心感を得た俺は、鼻歌を歌いながら雑誌を直した。

その時だった。がたっ、と物音が........。


エッッッ
エッッッッッッッッッ


プチパニック。
二重の意味で今、俺は怯えている。
もう今の俺は人間でも人間でなくとも受け入れらんないから。風風風風。多分、風。アップビートの弾けた風であれ。
音が鳴った所をガン見しながら後退。気が付けば1番端の隅の本棚に背を付けていた。

そうね。これはもう、クソ簡単。
詰み。

こっちと違い、ガン見してる方は、くもり空から差す薄明かりから本の背表紙の題名が読める程度に明るい。位置が反対じゃなくてよかったなんて思ってる場合じゃねーんだよ。
あれからも何度か音がしてるしエッやだ、アッt実況するわエッッ影、ちょっ、心の準備出来てないってあっむりむりこっちくんなってばアーーーーーーーーーーーーッッッ


「..................。」
「おまえかい」



お互い察してたかのごとく、チベットスナギツネ顔で見合わせる。
みんな察してたわ。ご存知後輩クンだった。



後輩のいたとこの方が居心地良さげだったからそっちに移動。
話を聞くと、1限からここに居て、今まで寝過ごしていたうっかりさんだったらしい。からの、俺の美声による鼻歌で目を覚ました。贅沢なやつめ。なんだこの流れは、童話か?ホコリぐらいしか集まって来んけどな。


その後は、場所が変わっただけでいつも通りの時間を過ごして、チャイムが鳴ると同時に解散した。




(にしても、アイツなんで俺って分かってんのにわざわざ確認した?ま、いっか)
((.........。)鼻歌が思ったより良くて腑に落ちない)
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