中間テストですよ

取引



「困りますねぇ…私達風紀はカメラの映像を提供することによって、"もしかしたら罰則を食らう"かもしれない……。そんな危険を犯すことになるのに、あなた方から提示される物は何も無い……。

そんなこと、ないですよね?」

勝利確定演出ムードが一気に死んだ。
視線を散り散りに彷徨わせる俺達。それは〜えーと…。等と口籠る。

段々と心に迫ってくる圧に耐え切れず、宗が引き攣った笑みで口を開いた。

「そ、それは、その…僕達一般生徒を助けると思って……とか…って……」
「ははは、常時忙しい私達が慈善活動を?」
「あは、ははは…」
「ははははは!」
「はははは…………!柴"君"ん"ん"」
半泣きで最後小声で呼ばれてしがみつかれた。

わかるすげえこわい。副音声で「舐めたこと言ってんじゃねぇぞ」って聞こえるもん。
宗はよく頑張った…!!!あの雰囲気の委員長にあんな可愛いこと言えるなんて、マジでよく頑張ったよお前は…!!!
余波を受けた南部さんなんて真っ青だしな…!!!

詰んだ、と、言いたいところだが。
だが…。
風紀に対するメリット。
前回この風紀室に来た時の事を思い返す。

──「僕と契約して魔法少女になってよ(???)」
………これは違う。


───「風紀委員になりませんか」
これだ。
……………。


…………つってもなぁ…。それほど風紀に貢献できるような価値、俺には無いけど?
でも、それ以外思い浮かぶものなんて。


「では、思い当たっているでしょう柴君に聞きましょうか」
「えっはい。…えっ?」
「あなたが風紀に入る、それで手を打ちましょう」
ド直級ストレート!!!


まあ…正直助かったけど。
何を求めているのか俺にはさっぱりだったから。

「……俺なんかで良ければ」
「ふふ、よく聞く言葉ですが、謙遜と卑下は違う。という言葉を贈りましょう。さて、では早速…」
「ですが」
立ち上がり、先日のように席に向かおうとする背中に声を掛ける。
振り返って不思議そうに俺を見る委員長。
すいませんね。

「紙に記入をするのは、"俺達"の冤罪が晴れてから…です。」
当然。

目を丸くして止まった委員長。
イケメンはどんな表情でもイケメン定期。

「良いですよね?」そう笑んで最後のひと押しをした俺を見て委員長は、にやり、と目元を細めた。

「ははは…そうですね。ええ、そうでした。
………勿論ですよ。"あなた達"の冤罪を晴らさないことには柴君が風紀に入るのは難しいでしょうし」
「………だってよ」

俺と委員長の交互に視線を向けていた、完全に蚊帳の外な2人に顔を向けて言った。
申し訳無さそうな2人だったが、「さて、とは言ってもカメラにそれが映っているといいのですが」と言った委員長のお陰で、直面している問題に思考を切り替えてくれた様だ。


委員長が談話室の方に歩みを進め、俺達にも着いてくるように言った。
入ると、中には机と椅子が2つずつあるだけの部屋だった。

取調べ室か????
床には赤黒いシミ………………は、見なかったことにしような……!ガクブル。

カメラのモニターは?と思ったが、委員長は俺達を振り返ることもなくそのまま奥のもう1つの扉の方へ。

「こっちですよ」

その声に導かれるまま、もう一つの扉から一層薄暗い部屋の中に入る。委員長が明かりを付けると、中は10数台のモニターと数台のパソコンと他にも機材が、大きい長机の上にあった。

すげえ。まるで警備室だ。
ちょっと興奮する。
けどモニターは真っ黒で、画面は付いていない。

「これ…動いているんですか…?」
「ええ」
宗の言葉に返事を返した委員長がパソコンとモニターを触り始めてすぐに画面が一斉に明るくなった。
映ったモニターには録画中のマーク。

「何かあった時のためにずっと録画してあります。記録も半年分までなら残してありますよ」
得意げな笑みを浮かべて見せた委員長。

流石だ有能。

では目当ての場所で試験最終日のカメラの映像を探しましょうか。そう言って手元を触る委員長を横目に考える。


目当ての場所。
教室の中は流石にカメラは無いらしい。
だから、宗、南部さん、俺、の3クラスの付近の廊下。

あと、確か机に入っていたらしいものはそれぞれで、
"宗が教科書"
"南部さんがプリント"
"俺、柴がノート"
だったな。

つまり、それを手に持つ"目当て"が映っていれば。

さっきまでいた会議室からでてすぐの廊下にいたカラフルなチワワ達を思い浮かべる。
あの様子じゃ、どう考えても親衛隊絡みなんだろうな。

宗も対象に混ざったのは意外だったが、生徒会補佐ならしょうがないのかもしれない。生徒会と関わりを持ってしまった俺と宗。毛玉と関わりがあり、新入生歓迎会の時に制裁を遭った南部さん。

……いや、にしても順序がおかしくねえか?俺が生徒会補佐になったのは、試験後のはず…?
「出ましたよ」
「っ…どうですか?」

取り敢えず、今は手っ取り早く犯人探しだ。
冤罪の証明にはそれが1番早くて確実。




「さて、どうでしょうかねぇ」
「め、目がチカチカするね…」
「ん〜〜」
「……………。」
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