秘密の先輩

初期症状はじまりました


「なあ、そういえば先輩。」
「んー?」
「タバコの匂い誤魔化せてんの?」
「家族がヘヴィースモーカーって言えば納得してくれる。ま、実際そうだしウソ付いてないしいっかなって。」
「へぇ……。」

煙草の英才教育かよ。

「そういや後輩クンは吸ってんの?めっちゃ吸ってそう。見たことないけど。」
「吸ったことはあるけど、別に吸いたいとは思わない。」
「ほー、じゃーーーーーお酒は?」

何の興味スイッチが入ったのか、いつものような木に項垂れてる気怠さが無く、前傾姿勢でこっちを覗き込んでくる。眠そうないつもの顔もにやにや楽しそうにしていて可愛………かわいい?

やめだ、考えたら負けな気がする。

「おーい、聞いてる?やっぱ無理?飲まない?実はコーヒーも砂糖とミルクどばどばだったり〜??」

…ああ、そういう。

「酒は酔わなくてよく分かんねぇけど日本酒が好き、コーヒーはブラックしか飲まねえ。」

さっきの表情と一転、苦虫を噛み潰したような顔に。
はぁ?みたいな顔してる。

「…先輩はコーヒーゲロ甘そう。」
「そーーーーですよあれが美味しいの〜〜〜!なんだよ苦いのヤなのかと思ったじゃ〜〜ん……。」

元の位置に戻ってしまった。
要は年下扱いしたかったらしい。
何にやにやしてんだこのやろーと言いながら人差し指をぐりぐり俺の頰に突き刺してくるのをあしらう。
今日は珍しいもん見た、と思いながらどうしようもないことを考えてる俺はもう駄目かもしれない。


(もう手遅れ)
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