短編

チャラ男不良×見た目平凡不良




夜中の2時頃。

ビルの隙間から満月が見える。あー今日めっちゃ月綺麗じゃーん……酒飲みてーいい事ありそうー……って早々にコレなんだけどサ。


賑やかな商店街から離れた裏路地で怒号が飛び交っていた。

ビルにもたれ掛かり、ズボンにジャラジャラ付けているアクセサリーを弄りながら前を眺める。

狭い路地でまあ暑苦しいことしちゃってやんなっちゃう。飯食ってイイ気分だったのにサ。
地元では有名なヤンキー高校同士の小競り合い。あっちは白坂高校。俺達は黒丸高校。縮めて白高と黒高。どっちの総長も頭にすぐ血が上っちゃう脳筋だから顔を合わせるとすぐコレ。

白高が10人程、こっちは俺入れて6人。脳筋同士は置いといて、9-5で食べたばっかの俺達…………ちょっと分が悪いかもネ。
脳筋同士の殴り合いがゴング。同時に周りも後に続く。
あ、あぶね、靴のすぐ横ガム付いてんじゃん。

「テメェいっつも冷めた目でコッチ見やがって!!余所見してんじゃねェぞ!!!」「今日こそテメェのそのムカつく顔見れなくしてやる!!!」
二人掛かりなんてモテモテで困っちゃーう。

「二度とそんな気持ち起こらないくらい地面とキスさせてあげるねぇ、身の程知らず。」


横と前から来るパンチと鉄パイプを避け、前にカウンターを食らわして横のヤツの腹を蹴り上げる。ついでにガムのある所に体を押し付けて、おれが踏まないように蓋をする。よしよし。

でもしんど。さっきの899円分吐きそう。こっちも既に1人沈み、脳筋除き立ってる奴も顔色が悪い。
大きく息を吐き気合いを入れ直す。


はぁ〜〜〜〜〜〜〜……がんばるかぁ。









イッッッ………。口の中が鉄臭くて唾を吐く。何度か沈めたはずの奴が数人起き上がる。……マジでゾンビかなんかなの白高の奴らってさぁ……。ちょっぴり吐いちゃったじゃん……200円分くらい。
脳筋達は殴り合い会場を移動したみたいで、ここに今立ってんのは俺と白高の奴3人。分が悪いってレベルじゃないんだけどぉ……。


これは…………病院行き、か な


そう諦めて、壁にもたれかかったまま振り下ろされる鉄パイプを見つめる。



にゃあ。
カーーーーーーーーーンッ


「いって、いって、コナン君いっつもこんなの味わってんのかな〜あれ、違うか?あっねこーだからそっちは駄目だって!」



視界に鉄パイプと隅に猫。鉄パイプを振り下ろす白高の奴の頭に何かが飛んで来て、崩れ落ちた。"何か"が地面でバウンドするのを思わず見つめた。見たことあるパッケージ、

「……ぁ……ほ◯よい…冷やしパイン……おれ…これすき〜……」
「ね。これ初めて、今日飲んだんだけど、」


白高の奴らが声を上げる間も無くうめき声が2つ。


美味いね、と言いながら近づいて来る。


いくら途中参加とはいえ、白高の幹部を一撃で沈められるなんて誰………?助かったけど〜…総長に報告しなきゃー……。
気が緩みずるずると地べたに座り込んだ。影がかかる。


「にゃあ。」猫ちゃんだぁ…。
「どうも、大丈夫?」誰だぁ…。


頭にフードを被った黒パーカーの彼を見上げる。
じっと見ていると段々顔がはっきり見えてきた。慣れた目に映った彼は


「ねこ共々邪魔しちゃって悪いね。」
「いんや、この子君の飼い猫?助かっちゃった〜


……ところで君、武道の達人かなんか?同類には見えないんだけどぉ。」


あまりにも地味だった。

歳は近そう。おそらく学生。髪も黒く、ピアスも開けてなさそう。全身真っ黒なのはなんでか分かんない。この時間にいるのも、だけど。


俺の質問に答えない黒フード君はしゃがみ、猫を撫でながら俺をじっと見ている。猫も一鳴きするとこっちを見てきた。4つの真っ直ぐな目に見つめられると中々居心地が悪いナァ……。へら、ととりあえず笑っとく。唇切れててめっちゃ痛い。唇と言わず全身も。


「あ、」
「あ??合気道とかぁ?」
「あぁ!アンタ黒高のチャラいやつ、か!うっわまずった、殴ったのこっち側の?!うわ〜〜〜〜……。そう言えば見た事あったわ……。えぇ……。」


うーーん……。フードごと頭をかきむしり何やらブツブツ言い始めたから返事は期待できそうにないなぁ。
撫でてくれる手が無くなり暇になったのか、猫が俺のズボンのアクセサリーにじゃれ始めた。そのまま一緒にじゃらじゃら遊んでたら、急に黒フード君が立ち上がり、携帯の無事と立てるかどうか聞いてきた。なんだろ、ついでにカマかけとこ。

「どっちも大丈夫だよぉ〜、なぁに?同じ高校の奴倒したから俺とアイのトウヒコウでもする〜?」
「……………………。」




そんな冷めた目ある?
まぁでもまだバレてないでしょきっと大丈夫大丈夫、と独りでに頷くとねこーと呼び、猫ちゃんを抱き抱え喧嘩は程々になと言い残して黒フード君は明るい通りの方へ去って行った。





あーあ、質問は1つも答えてくれなかったし、名前の1文字も分かんないや……。
これじゃあ……………………


総長に報告できないなぁ〜〜〜残念だなあ〜〜〜〜〜〜〜〜と思いながらラインを開き、彼の事を除いた今の現状をグループラインに打ち込む。



えーと、至急救援求!白高と喧嘩して、5人倒れてる、と…………。
あは、お月さんが言った通りだねぇ、





いい事あった!!!






ーーー→
チャラ男君は次の日から白高に黒フード君を探しに毎日通います。

この2人、ばにく結構好きです。
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